INPEX株が反発、サウジのイラン態度硬化で原油高
はじめに
2026年3月24日の東京株式市場で、石油・天然ガス開発最大手のINPEX(1605)が注目を集めました。朝方は売りが先行して下落したものの、中東情勢に関する新たな報道を受けて買いが優勢となり、前日比117円(2.60%)高の4,600円まで上昇しました。
背景には、サウジアラビアなどの湾岸諸国がイランへの態度を硬化させているとの報道があります。2月末から続くイラン紛争の長期化が原油価格を高止まりさせる中、INPEXの収益拡大期待がさらに高まっています。この記事では、中東情勢の最新動向とINPEXへの影響を詳しく解説します。
中東情勢の緊迫化と原油市場
イラン紛争とホルムズ海峡の封鎖
2026年2月28日に米国とイスラエルがイランへの軍事作戦を開始して以降、中東情勢は急速に緊迫化しています。3月4日にはイラン革命防衛隊がホルムズ海峡の封鎖を宣言し、同海峡を通過しようとする船舶への攻撃を実施しました。
ホルムズ海峡は世界の原油海上輸送量の約20%にあたる日量約2,000万バレルが通過する戦略的要衝です。この封鎖により、サウジアラビア、UAE、イラク、クウェートなどの主要産油国からの原油供給が大幅に制約される事態となっています。
サウジアラビアの態度硬化
サウジアラビアは当初、紛争に対して慎重な姿勢をとっていました。しかし、3月2日にサウジアラムコの東部ラスタヌラ製油所がイランのドローン攻撃を受けたとされる事件を機に、態度が大きく変化しました。
サウジアラビアは自国の石油インフラへの攻撃に強く反発し、米国との軍事協力を強化する方向に動いています。この態度硬化は、紛争の早期解決を困難にする一方、原油市場では供給不安をさらに増幅させる要因となっています。
原油価格の急騰
一連の中東情勢の悪化により、原油価格は大幅に上昇しています。ブレント原油は3月5日時点で前月比15%高の1バレル83ドルに達し、ホルムズ海峡の封鎖後には120ドルを突破する場面もありました。WTI原油も3月6日に2023年10月以来となる1バレル90ドル台を記録しています。
産油国全体では3月中旬までに日量1,000万バレル以上の生産減少が報告されており、供給不足の長期化が懸念されています。
INPEXへの業績インパクト
原油高が直接恩恵に
INPEXは原油・天然ガスの探鉱・開発・生産を手がける「上流」企業です。原油価格の上昇は、生産した原油の販売価格に直接反映されるため、業績へのプラス影響が極めて大きい構造になっています。
2026年12月期の会社計画では、最終利益3,300億円と前期比で減益の見通しを出しています。しかし、この計画は原油価格を保守的に前提としたものです。原油価格が80〜90ドル台で推移すれば、利益の上振れ余地は大きいとアナリストは分析しています。
上場来高値の更新が続く
INPEXの株価は3月に入ってから急上昇しています。3月2日には上場来高値を更新し、終値で4,031円を記録。その後も3月17日には一時4,575円まで上昇するなど、原油高を背景に投資家からの買いが継続しています。
24日の取引では朝方こそ利益確定売りで下落しましたが、サウジアラビアのイランへの態度硬化が報じられると、原油供給の長期的な逼迫を見越した買いが入り、反発に転じました。
代替輸送ルートの限界
サウジアラビアは東西原油パイプラインを通じて紅海側のヤンブー港へ原油を迂回させ、UAEもアブダビ原油パイプラインでフジャイラ港への輸出を増やしています。しかし、これらのパイプラインの輸送能力は日量350万〜550万バレル程度にとどまり、ホルムズ海峡経由の日量2,000万バレルを代替するには到底足りません。
この供給制約が原油価格の高止まりを支えており、INPEXをはじめとするエネルギー上流企業にとっては追い風が続く構図です。
注意点・展望
INPEXの株価上昇は中東情勢の緊迫化という地政学リスクに支えられているため、停戦合意や紛争の沈静化が実現すれば、原油価格の急落とともに株価も大きく調整する可能性があります。過去にもイスラエルとイランの停戦合意報道で、INPEXが1日で6%以上下落した実績があります。
また、原油価格の高騰は日本経済全体にはマイナス要因です。輸入コストの増大は企業収益を圧迫し、消費者の生活負担も増加します。INPEXへの投資はエネルギー価格上昇に対するヘッジとなりますが、ポートフォリオ全体のバランスを考慮する必要があります。
今後の注目点としては、ホルムズ海峡の通航再開の見通し、OPEC+の増産対応、そして米国の戦略石油備蓄(SPR)の放出動向が挙げられます。これらの要因が原油価格の方向性を左右し、INPEXの業績にも直結します。
まとめ
INPEXの株価反発は、サウジアラビアをはじめとする湾岸諸国のイランへの態度硬化が、原油市場の供給不安を一段と強めたことが背景にあります。ホルムズ海峡の実質的な封鎖により原油価格は高水準を維持しており、上流事業を手がけるINPEXにとっては業績拡大の好機となっています。
投資家としては、地政学リスクの動向を注視しつつ、紛争の沈静化による急激な原油価格の変動リスクも念頭に置くことが重要です。中東情勢の先行きは依然として不透明であり、INPEXの株価は原油市場と連動した高いボラティリティが続くと見られます。
参考資料:
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