IR誘致レース再開へ、残り2枠の行方と各地の課題
はじめに
カジノを含む統合型リゾート(IR)の誘致をめぐり、自治体間の競争が再び動き出しています。政府は2027年に追加公募を実施する方針を固め、2026年3月10日に関連する政令の改正を閣議決定しました。
IR整備法では全国で最大3カ所の設置が認められていますが、現在認定されているのは大阪の1カ所のみです。残り2枠をめぐり、愛知県や北海道が申請の可否を検討しています。
本記事では、追加公募の概要、各自治体の動向、大阪IRの現状、そして依存症対策を含む課題について詳しく解説します。
追加公募の概要と政府方針
2027年の申請受付スケジュール
観光庁は、IR整備地域の追加選定に向け、自治体からの区域整備計画の申請を2027年5月6日から同年11月5日まで受け付ける方針を明らかにしました。これに先立ち、政府は2026年3月10日に追加公募に必要な政令改正を閣議決定しています。
IR整備法が2018年に成立して以来、政府は段階的にIR設置を進めてきました。2023年には大阪府・大阪市の計画が認定され、国内初のIR整備地域が正式に決定しています。残る2枠の選定は当初の想定より遅れていましたが、ようやく追加公募の具体的なスケジュールが示された形です。
選定プロセスの流れ
IR整備の流れは、まず都道府県・政令指定都市が民間事業者を選定し、区域整備計画を策定します。その後、国に計画を申請し、国土交通大臣が審査・認定するという仕組みです。認定後も、カジノ管理委員会によるカジノ事業免許の審査が別途必要となります。
各自治体の動向と検討状況
愛知県:セントレア周辺を候補地に検討
愛知県は、中部国際空港(セントレア)の所在する空港島周辺を候補地として、IR誘致の再検討を進めています。中部圏は製造業を中心とした産業基盤が強固で、ビジネス需要と観光需要の両面からIRの集客が見込めるとの見方があります。
ただし、愛知県では地元住民の間でカジノ設置への賛否が分かれており、合意形成が大きな課題です。2027年の申請期間に間に合わせるためには、候補地の絞り込みや事業者の選定を迅速に進める必要があります。
北海道:過去の経緯を踏まえた再挑戦
北海道は2019年の初回公募の際、申請を見送った経緯があります。しかし、政府が2025年に非公式に実施した意向調査では「関心あり」と回答したことが明らかになっています。
北海道は豊富な観光資源を有し、インバウンド需要も高い地域です。IRとの相乗効果で観光産業をさらに拡大できる可能性があります。一方で、広大な土地を活用できるメリットがある反面、冬季の集客や交通アクセスの確保といった課題も指摘されています。
その他の候補地域
2023年に計画が不認定となった長崎県も、再申請を検討する可能性があります。長崎県はハウステンボス周辺を候補地としていましたが、資金計画の実現性などが課題とされました。また、東京都も関心を示しているとの報道があり、残り2枠をめぐる競争は複数の自治体間で展開される見通しです。
大阪IRの現状と建設費膨張問題
投資額は1兆5,130億円に拡大
先行する大阪IRは、大阪湾の人工島・夢洲(ゆめしま)に建設が進んでいます。2025年4月に着工し、2030年秋の開業を目指しています。しかし、初期投資額は当初の約1兆2,700億円から約1兆5,130億円へと約2,400億円も膨らんでいます。
増額の主な要因は、物価高に伴う建設資材費や労務費の上昇です。建築物整備費だけで約3,200億円の増加が確認されており、インフレ環境下での大規模プロジェクトの難しさを浮き彫りにしています。
資金調達の構造
大阪IRの資金調達は、出資金約9,830億円(約65%)とプロジェクトファイナンスによる借入金約5,300億円(約35%)で構成されています。出資比率はMGMリゾーツ・インターナショナルとオリックスがそれぞれ約44%、少数株主22社が約13%を負担する形です。
大阪IRの建設費膨張は、他の自治体にとっても重要な先例となります。追加公募に名乗りを上げる自治体は、同様のコスト増リスクを織り込んだ資金計画が求められるでしょう。
注意点・展望
ギャンブル依存症対策の重要性
IR整備における最大の懸念事項の一つが、ギャンブル依存症への対策です。2018年には「ギャンブル等依存症対策基本法」が成立し、法的な枠組みは整備されています。
具体的な対策としては、日本人の入場回数制限(7日間で3回、28日間で10回まで)、入場料の徴収(1回6,000円)、マイナンバーカードによる本人確認、カジノ内でのATM設置禁止などが定められています。シンガポールでは同様の規制によりカジノ導入後に依存症比率が低下した実績があり、日本でも実効性のある対策が期待されています。
資金確保と地元合意がカギ
追加公募に向けて各自治体が直面する共通の課題は、巨額の資金確保と地元住民の理解です。大阪IRの事例が示すように、建設費は当初計画から大幅に膨らむ可能性があります。また、カジノに対する住民感情は地域によって異なり、丁寧な説明と合意形成が不可欠です。
2027年の申請期間までに残された時間は約1年です。各自治体がどのような事業計画を策定し、パートナーとなる民間事業者をどこまで確保できるかが、残り2枠の行方を左右することになるでしょう。
まとめ
IR誘致レースが再開し、2027年5月から11月にかけて追加公募が実施されます。愛知県や北海道を中心に複数の自治体が申請を検討しており、残り2枠をめぐる競争が本格化する見通しです。
大阪IRの建設費膨張が示すように、IRの実現には巨額の資金調達、地元住民の合意形成、ギャンブル依存症対策という三つの大きな壁があります。これらの課題をクリアできる自治体が名乗りを上げることで、日本のIR整備は次の段階に進むことになります。今後の各自治体の動向に注目が集まります。
参考資料:
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