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by nicoxz

米イラン軍事衝突が激化、中東と世界経済への影響

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はじめに

2026年2月28日、米国とイスラエルはイランに対する大規模な軍事攻撃を開始しました。「エピック・フューリー(壮絶な怒り)作戦」と名付けられたこの軍事行動は、開始から10日を超えてなお収束の兆しが見えません。

かつてイランは、欧州からインドを陸路で結ぶ「ヒッピートレイル」の通過地として、多くの旅行者に親しまれていました。しかし今、その地は激しい軍事衝突の舞台となっています。本記事では、衝突の経緯と最新状況、そして世界経済や日本への影響について解説します。

軍事衝突の経緯と現状

攻撃開始から10日間の推移

2月28日に始まった米国・イスラエルの攻撃は急速に拡大しました。トランプ大統領は3月1日に作戦の実行を発表し、攻撃は「必要な限り継続する」と宣言しています。掲げられた4つの目標には、イランの核開発能力の無力化が含まれるとされています。

米軍は3月9日、最初の10日間で5000を超える目標を攻撃したと発表しました。攻撃対象には50隻以上のイラン海軍艦艇、防空システム、弾道ミサイル基地、ミサイル・ドローン製造施設が含まれています。サイバー攻撃や宇宙空間での作戦も大きな効果を上げたとされています。

イランの報復と戦火の拡大

イランも報復攻撃に踏み切り、戦闘は中東全域に拡大しています。3月5日にはUAE、バーレーン、カタール、クウェートの湾岸各国に新たなミサイル・ドローン攻撃が行われました。バーレーンの製油所への攻撃やアブダビ国際空港付近での爆発も報告されています。

さらに3月8日にはバーレーンの海水淡水化施設が攻撃対象となるなど、民間インフラへの被害も拡大しています。イスラエルによるテヘランの燃料貯蔵施設への空爆も継続されています。

人道的危機と国際社会の反応

2月28日、ホルモズガーン州ミナブ市の学校が攻撃を受け、約165人が犠牲となりました。そのうち約150人が学童だったとされ、国際社会から強い非難の声が上がっています。

アムネスティ・インターナショナルは、米国・イスラエルとイランの双方に対し、民間人の保護と国際人道法の尊重を求める声明を発表しました。3月7日にはイランの専門家会議が新たな最高指導者を選出し、ハメネイ師の後継者問題も注目を集めています。

原油価格への影響

一時100ドル突破の衝撃

軍事衝突はエネルギー市場に即座に影響を与えました。攻撃開始直後の3月1日、米国の原油先物価格は10%以上高騰し、一時1バレル75ドルに達しました。

その後も上昇は続き、3月8日にはホルムズ海峡を航行するタンカーの通行が事実上困難となったことを受け、原油価格は1バレル100ドルを突破しました。その後90ドル台に戻していますが、攻撃前と比べて30〜35%高い水準で推移しています。

ホルムズ海峡リスクの現実化

世界の原油輸送の約2割が通過するホルムズ海峡は、長らく地政学的リスクの象徴とされてきました。今回の衝突では、そのリスクが現実のものとなっています。イランによるタンカーへの報復攻撃が発生し、海峡の安全な航行が困難な状況が続いています。

日本経済への深刻な影響

中東依存度94%の脆弱性

日本は原油輸入の94%を中東地域に依存しており、そのうち約80%のタンカーがホルムズ海峡を通過しています。今回の軍事衝突は、日本のエネルギー安全保障の脆弱性を改めて浮き彫りにしました。

日本政府は2月28日に国家安全保障会議(NSC)を緊急開催し、情報収集の強化と在留邦人の安全確保を指示しています。防衛大臣は3月1日未明に臨時記者会見を開き、自衛隊の情報収集態勢について説明しました。

株安・物価高の二重苦

3月9日の東京株式市場では、原油高騰による景気悪化懸念から株価が大幅に下落しました。消費関連株を中心に売りが広がり、日経平均株価は約1カ月ぶりの安値水準に沈んでいます。

野村証券の分析によれば、原油価格が10%上昇(ブレント原油で70ドルから77ドル)して1年間持続した場合、TOPIX構成企業の経常利益は1〜1.25%の減少にとどまるとされています。しかし、現在の30%超の上昇が長期化すれば影響は格段に大きくなります。

第一生命経済研究所の試算では、資源価格の高騰が深刻化した場合、日本の実質GDPを最大1.0%程度押し下げる可能性があります。ホルムズ海峡が長期・完全に封鎖されるシナリオでは、原油価格が1バレル140ドルに達し、物価高と景気悪化が同時に進む「スタグフレーション」のリスクも指摘されています。

注意点・今後の展望

軍事衝突の行方は依然として不透明です。トランプ大統領は攻撃の継続を明言しており、イラン側も新指導者のもとで対抗姿勢を崩していません。短期的な停戦は見通しにくい状況です。

日本にとっての最大のリスクは、ホルムズ海峡の長期的な通行障害です。現時点では完全封鎖には至っていませんが、状況が悪化すれば、ガソリン価格や電気料金の大幅な上昇を通じて家計を直撃します。政府の物価高対策も、原油高騰によって効果が相殺される恐れがあります。

エネルギーの中東依存を低減する多角化戦略や、戦略的石油備蓄の活用方針など、中長期的な対応策の議論が一層重要になっています。

まとめ

米国・イスラエルによるイラン攻撃は開始から10日以上が経過し、収束の見通しは立っていません。原油価格は一時100ドルを突破し、日本経済にも株安や物価高といった形で影響が及んでいます。

中東への原油依存度が極めて高い日本にとって、今回の事態はエネルギー安全保障の根本的な見直しを迫るものです。今後の情勢の推移を注視しつつ、短期的なリスク管理と中長期的なエネルギー戦略の両面で対応を進める必要があります。

参考資料:

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