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by nicoxz

中東情勢で株価急落、専門家が語る紛争と市場の行方

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はじめに

2026年2月末に始まった米国・イスラエルによるイランへの軍事作戦は、金融市場に大きな衝撃を与えています。原油価格は急騰して一時1バレル100ドルを突破し、世界の株式市場は軒並み急落しました。ホルムズ海峡の事実上の封鎖という最悪のシナリオも現実味を帯びています。

紛争が長期化するのか、それとも早期に収束に向かうのか。株式市場は「売られすぎ」なのか、まだ下落余地があるのか。本記事では、複数の専門家の見解をもとに、中東情勢と金融市場の見通しを整理します。

原油価格の急騰とホルムズ海峡封鎖の衝撃

原油100ドル突破、最悪シナリオなら130ドルも

米国がイランへの攻撃を開始した2月28日以降、原油価格は急激に上昇しています。WTI原油先物は一時1バレル113ドル台まで急騰し、ブレント原油も114ドル台を記録しました。攻撃前の70ドル前後から、わずか数日で6割近い上昇です。

この急騰の最大の要因は、ホルムズ海峡の実質的な封鎖です。世界の石油供給の約20%がこの海峡を通過しており、イランによるミサイルやドローン攻撃でタンカーの航行がほぼ停止状態に陥りました。サウジアラビア最大の製油所や世界最大級のLNG施設も閉鎖に追い込まれています。

日本総研の分析では、標準シナリオで原油価格80ドル、リスクシナリオで120ドルと予想されています。一部の専門家からは、封鎖が長期化すれば過去最高水準の130ドルに達する可能性も指摘されています。

日本経済への直接的な影響

日本は原油輸入の約9割を中東に依存しており、その多くがホルムズ海峡を通過します。この地政学的リスクは日本にとって特に深刻です。

毎日新聞が報じた3つのシナリオでは、メインシナリオ(原油87ドル)で実質GDPが年0.18%押し下げられ、物価は0.31%上昇すると試算されています。悲観シナリオ(原油140ドル、ホルムズ海峡の年単位の完全閉鎖)では、実質GDPが0.65%低下し、物価が1.14%上昇する景気後退リスクが指摘されています。

ガソリン価格については、補助金による抑制が追いつかなければ、全国平均で1リットル200円を突破する可能性があるとの警告も出ています。

世界の株式市場に広がる動揺

アジア株が総崩れ、韓国ではサーキットブレーカー発動

中東情勢の緊迫化は、世界の株式市場に大きな打撃を与えています。特にアジア市場の動揺が激しく、韓国のKOSPI指数は2008年のリーマンショック以来最大の下落幅を記録し、一時12%の急落でサーキットブレーカー(売買停止措置)が発動されました。

米国市場でもダウ工業株30種平均が800ポイント近く下落する場面があり、S&P500やナスダック総合指数も大幅に値を下げています。日本の株式市場も原油高懸念と英国のノンバンク破綻のニュースが重なり、大きく反落しました。

エネルギー輸入依存度が高い国の市場ほど影響が大きく、日本・韓国・インドなどアジアの主要市場が特に脆弱な状況にあります。

防衛・エネルギー関連株は逆行高

市場全体が下落するなかでも、防衛関連株やエネルギー関連株は逆行高の動きを見せています。Euronewsの報道によれば、紛争の恩恵を受ける銘柄として、防衛企業やセキュリティ関連企業、石油・ガス大手の株価が上昇しています。

また、「有事の金」として知られる金価格も上昇基調にあり、安全資産への資金シフトが進んでいます。

専門家の見方:「紛争長期化」と「売られすぎ」の交錯

紛争長期化リスクを指摘する声

トランプ米大統領は当初、軍事作戦を4〜5週間で完了させる見通しを示していましたが、その後「はるかに長い時間」攻撃を続ける可能性を示唆しています。この発言を受けて、紛争の長期化リスクが市場で強く意識されるようになりました。

大和アセットマネジメントは、過去の中東紛争(湾岸戦争など)との比較から、トランプ大統領が最終的にはTACO(Tariff, Attention, Chaos, Opportunity)戦略の一環として事態を収束させる可能性を示しつつも、深刻な事態に発展するリスクにも言及しています。

JPモルガン・チェースは、湾岸協力会議(GCC)諸国の2026年非石油成長見通しを引き下げ、「長期化する可能性のあるビジネスの混乱と企業・消費者信頼感の低下」を理由に挙げています。

「売られすぎ」で反発の余地ありとの見方

一方で、株式市場は過度に売られているとの指摘も出ています。CNBCの報道によれば、歴史的に見ると地政学的ショック後のS&P500は、最初の1カ月で平均0.9%下落するものの、6カ月後には平均3.4%上昇する傾向があります。

モルガン・スタンレーは、楽観シナリオではリスク選好が早期に回復し、最も打撃を受けた市場が急速に反発すると予測しています。チャールズ・シュワブも、「地政学的ショックや危機が世界経済の成長や金融市場に持続的な大きな影響を与えることはまれ」と投資家に冷静な対応を促しています。

三井住友DSアセットマネジメントは、ホルムズ海峡の封鎖が長期化する可能性に懸念を示しつつも、過去の湾岸戦争やイラク戦争では開戦3〜6カ月後に株価が2桁の上昇を記録した実績を指摘しています。

注意点・展望

投資家にとって重要なのは、今回の中東情勢を過度に悲観的にも楽観的にも捉えないことです。

まず注意すべきは、今回の紛争が過去の中東紛争と異なる点です。ホルムズ海峡が実際に封鎖された前例はほとんどなく、過去のパターンがそのまま当てはまるとは限りません。封鎖が長期化すれば、インフレ再燃や世界的な景気後退のリスクが高まります。

また、原油価格の高騰は日本銀行の金融政策にも影響を与える可能性があります。輸入物価の上昇がインフレを加速させれば、利上げ観測が強まる一方で、景気悪化リスクとの板挟みに陥る可能性もあります。

今後の注目点は、ホルムズ海峡の航行再開の時期と、米イラン間の停戦交渉の進展です。これらの動向が原油価格と株式市場の方向性を決定づけることになります。

まとめ

米イラン軍事衝突により、原油価格は100ドルを超え、世界の株式市場は大きく動揺しています。紛争の長期化リスクが意識される一方で、歴史的に見れば地政学的ショック後の株価は中長期的に回復する傾向があり、現在の水準が「売られすぎ」であるとの見方も有力です。

日本は中東への原油依存度が高く、ホルムズ海峡封鎖の影響を特に受けやすい立場にあります。投資家は短期的な値動きに振り回されず、紛争の推移と原油供給の回復状況を冷静に見極めることが求められます。

参考資料:

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