世界の半導体企業が最高益、メモリー3社の躍進に注目
はじめに
世界の半導体業界が、AI(人工知能)ブームの恩恵を受けて空前の好業績を記録しています。主要半導体企業11社の2025年第4四半期決算では、純利益の合計が前年同期比で約8割増加し、四半期として過去最高を更新しました。
とりわけ注目すべきは、メモリー半導体を手がけるSamsung、SK hynix、Micronの3社の急成長です。3社合算の売上高営業利益率は47%に達し、NVIDIAの60%に急接近しています。一方で、スマートフォン向けを主力とする企業は損益が悪化しており、AI需要の取り込み能力によって業績の明暗が鮮明に分かれました。
メモリー3社の利益率がNVIDIAに迫る
Samsung:過去最高の営業利益を更新
Samsungの2025年第4四半期の業績は圧倒的でした。営業利益は約20兆ウォン(約2兆円)に達し、2018年第3四半期に記録した17.6兆ウォンという長年の記録を大幅に上回りました。連結売上高は約93兆ウォンと見積もられています。
AI向けの高帯域幅メモリー(HBM)やデータセンター向けDRAMの需要が急増し、メモリー価格が高騰したことが最大の要因です。DRAM部門の営業利益率は50%を超えたとみられ、2026年第1四半期にはさらに改善する可能性があります。
SK hynix:営業利益率58%の新記録
SK hynixは第4四半期に58%という記録的な営業利益率を達成しました。HBM市場でのリーダーシップが収益を押し上げています。NVIDIAのAI用GPU「H100」「H200」シリーズに採用されるHBM3Eの供給で先行し、メモリーメーカーの中でも際立った収益性を示しました。
メモリー3社の粗利益率がTSMCを上回る
特筆すべきは、Samsung・SK hynixの両社のメモリー事業の粗利益率が63%〜67%に達し、ファウンドリー(受託製造)最大手のTSMCが示した60%のガイダンスを上回ったことです。メモリーの収益性がファウンドリーを超えるのは2018年第4四半期以来、約7年ぶりの出来事です。
NVIDIAは依然として圧倒的な存在
売上高393億ドル、データセンターが牽引
NVIDIAの2025年会計年度第4四半期(2024年11月〜2025年1月)の売上高は393億ドルで、前年同期比78%増、前四半期比12%増と過去最高を更新しました。純利益は221億ドルで、前年同期比80%増です。
成長を牽引したのはデータセンター向け事業で、売上高は356億ドルと前年同期比93%増を記録しています。通期の売上高は1,305億ドル(前年度比114%増)、純利益は729億ドル(同145%増)と、いずれも過去最高を大幅に塗り替えました。
2026年度も成長は続く見通し
NVIDIAは2026年会計年度第1四半期(2025年2〜4月)の売上高を約430億ドル(前年同期比65%増)と予想しています。次世代GPU「Blackwell」シリーズへの需要が引き続き旺盛で、データセンター向けAIインフラの拡大が成長を支えます。
営業利益率は約60%を維持しており、メモリー3社が接近してきたとはいえ、依然として半導体業界で最も収益性の高い企業の一つです。
スマートフォン向け半導体は明暗が分かれる
MediaTek:成長継続も逆風あり
スマートフォン向けSoC(システム・オン・チップ)を主力とするMediaTekの2025年第4四半期は、売上高が前年同期比13%増と堅調でした。Dimensity 9500やDimensity 8500の採用が進み、スマートフォン向けチップセットの売上高は100億ドルを突破しています。
しかし、スマートフォン向けが売上高の59%を占める構造はリスクでもあります。DRAMやNANDフラッシュの価格高騰がスマートフォンメーカーの製造コストを押し上げ、2026年のチップセット出荷量は減少が見込まれています。2026年第1四半期のガイダンスは45億〜48億ドルと、前四半期比6%減を見込んでいます。
AI需要の取り込みが業績を左右
業界全体を見ると、AIインフラ向けの半導体を供給できる企業とそうでない企業の間で、収益性の格差が拡大しています。NVIDIAのGPU、メモリー3社のHBM・高性能DRAMといったAI直結の製品を持つ企業が圧倒的な利益を享受する一方、従来型のスマートフォンやPC向けが中心の企業は成長鈍化に直面しています。
Qualcommは自動車向け事業が前年度比36%増と好調ですが、AI分野ではNVIDIAとの差が大きく、ポジショニングの転換が課題です。MediaTekはNVIDIAとの提携でPC向けAIチップ「N1」を2026年後半に投入予定で、新たな収益源の確保を急いでいます。
注意点・展望
メモリー半導体の好況がいつまで続くかは不透明です。AIブームに支えられたHBMやDRAMの価格高騰は、供給増加や需要の一巡で反転する可能性があります。過去にもメモリー業界は急激な価格変動(シリコンサイクル)を繰り返してきた歴史があり、現在の高収益率が永続するとは限りません。
一方で、AIの普及は始まったばかりであり、データセンターの建設ラッシュは2026年以降も続く見通しです。エッジAIやオンデバイスAIといった新しい市場も拡大しており、半導体全体の需要は中長期的に拡大基調にあります。
投資家や業界関係者にとっては、AI需要の持続性と、各社のAI関連製品のポートフォリオをどう評価するかが重要な判断材料になります。
まとめ
2025年第4四半期の半導体業界は、AI需要の爆発的な拡大により過去最高益を記録しました。メモリー3社の営業利益率がNVIDIAに接近し、ファウンドリー大手TSMCの粗利益率すら上回るという歴史的な局面が生まれています。
一方、AI関連の製品ラインを持たない企業は成長の波に乗れず、業界内の「二極化」が鮮明になっています。今後の焦点は、AIブームの持続性と、各社がどれだけ早くAI関連のポートフォリオを拡充できるかです。
参考資料:
- NVIDIA、2025年会計年度第4四半期および通年の業績を発表
- Samsung’s Profit Triples After AI Supercharges Memory Market - Yahoo Finance
- Q4 2025: Samsung Reclaims Top Memory Spot - Counterpoint Research
- Memory Price Surge to Push Samsung, SK hynix Gross Margins Above TSMC - TrendForce
- Samsung’s Q4 operating profit hits all-time high - KED Global
- DRAM price surge lifts profits for Samsung, SK hynix and Micron - eeNews Europe
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