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by nicoxz

トランプ氏ホルムズ海峡護衛連合を推進、各国の反応は

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はじめに

トランプ米大統領が、ホルムズ海峡を航行する船舶の安全確保のため、約7カ国と艦船派遣の連合結成に向けた協議を進めています。米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は、今週中にも複数国との合意が発表される見通しだと報じました。

2月28日の米国・イスラエルによるイラン攻撃以降、イラン革命防衛隊がホルムズ海峡の「閉鎖」を宣言し、世界の原油供給の約2割を担う同海峡は事実上の封鎖状態が続いています。原油価格は急騰し、国際的なエネルギー供給網に深刻な混乱をもたらしています。

本記事では、トランプ大統領が推進する護衛連合の概要、名指しされた各国の反応、そして日本が直面する安全保障上の判断について詳しく解説します。

トランプ大統領の護衛連合構想

約7カ国との協議の経緯

トランプ大統領は3月14日、SNS上で日本、中国、韓国、英国、フランスなどの国名を挙げ、ホルムズ海峡に艦船を派遣するよう呼びかけました。「海峡を通じて石油を輸入する国々は、航路の安全を確保しなければならない」と訴え、産油国として自給体制を確立しつつある米国にはその責任がないとの認識を示しました。

翌15日には記者団に対し、7カ国程度と協議していることを明らかにしました。具体的な国名への言及は避けたものの、「昨晩と今日、連絡を取り合った」と述べ、連合が結成され次第「作戦は直ちに開始する」と表明しています。

WSJ報道と今週中の発表見通し

WSJは米政府高官の話として、トランプ政権が複数国と合意に達し、今週中にも護衛連合の発表を行う計画だと報じました。ただし、イランとの戦闘が終結する前に護衛作戦を開始するかどうかについては、なお協議が続いているとされています。

トランプ大統領は3月初旬にも米海軍によるタンカー護衛を表明しており、保険の提供にも言及していました。今回の多国間連合構想は、こうした一連の動きをさらに拡大するものです。

各国の反応と課題

慎重姿勢を示す主要国

トランプ大統領の呼びかけに対し、各国の反応は総じて慎重です。2026年3月16日時点で、公式に艦船派遣を表明した国はありません。

英国は、スターマー首相がトランプ大統領とホルムズ海峡の再開について協議し、「集中的に検討している」と表明しました。しかし、具体的な派遣の約束には至っていません。

フランスは、国際的な船舶護衛ミッションの可能性について検討中であるとしつつも、「状況が許す時、つまり戦闘が収束した時に実施する」と条件を付けています。

ドイツのヴァデフル外相は、この計画に「懐疑的だ」と明言しました。NATO同盟国の中にも温度差が見られる状況です。

中国の微妙な立場

トランプ大統領が名指しした国の中で、中国は特に複雑な立場に置かれています。中国はイランの最大の原油輸入国であり、ホルムズ海峡の封鎖はエネルギー供給に直接的な打撃を与えます。一方で、米国主導の軍事的連合に参加することは、イランとの関係を損なうリスクがあります。

中国はこれまで、中東情勢に対して独自の外交ルートを模索してきました。今回も米国との連合に加わるよりも、独自にイランとの交渉を進める可能性が指摘されています。

日本が直面する判断

高市首相の慎重な対応

高市早苗首相は3月16日、ホルムズ海峡での民間船舶護衛について、自衛隊法に基づく海上警備行動による艦船派遣は「法的に困難」との認識を示しました。また、3月12日にはイランが敷設したとされる機雷の除去準備のための派遣についても「想定できない」と述べています。

ただし、自衛隊による機雷除去自体は「可能だ」との認識も示しており、遺棄された機雷など特定条件下での対応に含みを持たせています。官邸筋からは「首相は可能な限り協力したい考え」との声も漏れていますが、法的な制約から対応は限定的にならざるを得ない状況です。

3月19日の日米首脳会談が焦点

高市首相は3月18日から就任後初の訪米を予定しており、19日にワシントンでトランプ大統領との首脳会談に臨みます。トランプ大統領が直接自衛隊派遣を要求する可能性が高まっており、日本政府は法的検討を本格化させています。

日本にとっての難題は、原油輸入の約95%を中東に依存し、その約70%がホルムズ海峡を通過しているという現実です。エネルギー安全保障の観点から護衛連合への参加は理にかなう一方、現行法制の下では自衛隊の活動範囲に制約があります。海上警備行動の発令には「海上における人命・財産の保護」という要件が必要であり、戦闘状態が続く海域での護衛活動には慎重な法的整理が求められます。

注意点・展望

エネルギー市場への影響が長期化する恐れ

ホルムズ海峡の封鎖が始まって2週間以上が経過し、原油タンカーの通航はほぼ停止しています。ブレント原油は1バレル100ドルを突破し、日本国内ではガソリン価格や電気・ガス料金への波及が懸念されています。日本は消費254日分の石油備蓄を保有していますが、価格高騰の影響は備蓄では吸収できません。

イランの新最高指導者モジタバ・ハメネイ師は3月12日、「ホルムズ海峡の封鎖は敵に対する圧力の手段として継続する」と表明しており、事態の早期収束は見通せない状況です。

護衛連合の実効性に疑問も

仮に多国間連合が成立したとしても、イランとの軍事的対立が続く中での護衛作戦には大きなリスクが伴います。フランスが「戦闘が収束した後」という条件を付けていることが象徴するように、停戦なき護衛活動は参加国を紛争に巻き込む可能性があります。

また、過去の類似事例として1987〜88年のタンカー戦争時の「アーネスト・ウィル作戦」がありますが、当時と比べてイランの軍事能力は大幅に向上しており、ミサイルや無人機などの脅威も増しています。

まとめ

トランプ大統領が推進するホルムズ海峡の護衛連合構想は、世界のエネルギー安全保障に直結する重要な動きです。しかし、各国の反応は慎重であり、公式に参加を表明した国はまだありません。

日本は3月19日の日米首脳会談で、エネルギー安全保障と法的制約のバランスをどう取るかという難しい判断を迫られます。ホルムズ海峡の封鎖が長期化すれば、日本経済への影響は避けられません。護衛連合への関与の形、停戦交渉の行方、そしてエネルギー調達の多角化に向けた動きを注視する必要があります。

参考資料:

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