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by nicoxz

ユニツリーが科創板IPO申請、960億円調達へ

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はじめに

中国のロボットメーカー、宇樹科技(ユニツリー・ロボティクス)が上海証券取引所の科創板(STAR Market)へのIPO申請を行い、受理されたことが明らかになりました。調達予定額は42億元(約960億円、約6.1億ドル)で、ヒト型ロボットの頭脳となるAIモデルの研究開発などに充てる計画です。

ユニツリーは2025年に世界最多のヒューマノイドロボット出荷を達成し、急成長を遂げています。IPOが実現すれば「ヒト型ロボット第一号銘柄」として、注目を集めることになります。本記事では、同社のIPO計画の詳細と、過熱するヒューマノイドロボット市場の現状を解説します。

ユニツリーのIPO計画と財務状況

科創板への上場を目指す背景

上海証券取引所は2026年3月20日、ユニツリーのIPO申請を正式に受理しました。科創板はハイテク新興企業向けの市場で、中国版ナスダックとも呼ばれます。ユニツリーは近く審査に入る見通しです。

開示資料によると、調達する42億元のうち半分にあたる約21億元はヒト型ロボットの制御に用いるAIモデルの研究開発に投じる計画です。残りの資金は新製品の開発や製造設備の拡充に充てられます。IPO時の企業価値は約70億ドル(約500億元)を目指しているとされ、直近のシリーズC資金調達時の評価額(約17億ドル)から大幅な上昇を見込んでいます。

急成長する売上と利益

ユニツリーの2025年の営業収入は前年比335%増の17億800万元に達しました。調整後の純利益は約6億元と、前年比で約8倍に急拡大しています。この急成長の背景には、ヒト型ロボットの商用出荷が本格化したことがあります。

2025年の出荷台数は5,500台を超え、世界のヒューマノイドロボット市場で32.4%のシェアを獲得しました。これは米国の競合であるFigure AIやテスラの「オプティマス」を大きく引き離す数字です。

注目企業ユニツリーの全貌

創業者・王興興と企業の歩み

ユニツリーは2016年に王興興(ワン・シンシン)氏が杭州で創業しました。王氏は現在36歳で、浙江大学でロボット工学を専攻した技術者出身の経営者です。当初は四足歩行ロボット(ロボット犬)の開発からスタートし、その後ヒト型ロボットの分野に参入しました。

同社は習近平国家主席が主催する起業家座談会にも招かれるなど、中国政府からも注目される存在となっています。2025年と2026年の春節聯歓晩会(春晩)では、同社のヒト型ロボットがステージ上で人間のダンサーと共にパフォーマンスを披露し、大きな話題を呼びました。この露出をきっかけに投資家からの関心が急激に高まったとされています。

主力製品ラインナップ

ユニツリーの製品は大きく2つのラインに分かれます。

**G1(エントリーモデル)**は身長127cm、重量約35kgのコンパクトな設計です。23の自由度を持ち、歩行速度は毎秒2メートル。価格は約1万3,500ドル(約200万円)と、ヒューマノイドロボットとしては破格の低価格を実現しています。深度カメラや3D LiDARによる環境認識機能を備え、模倣学習と強化学習による動作習得が可能です。AmazonやスタンフォードIT、MITなどの研究機関でも採用されています。

**H1(フラッグシップモデル)**は身長180cm、重量47kgの成人サイズです。44の自由度を持ち、歩行速度は毎秒3.3メートルとヒューマノイドロボットの世界記録を保持しています。価格は約10万〜13万ドル(約1,500万〜1,900万円)です。

豪華な投資家陣

ユニツリーには中国テック業界の主要プレイヤーが出資しています。2025年6月のシリーズCラウンドでは、テンセント、アリババグループおよび傘下のアントグループ、バイトダンス系のジンチウ・キャピタル、チャイナモバイル、吉利(ジーリー)グループなどが参加しました。この時点での評価額は約17億ドルでしたが、春晩でのパフォーマンスなどを経て企業価値は急上昇しています。

過熱するヒューマノイドロボット市場

中国勢が量産で先行

ヒューマノイドロボット市場では、中国メーカーが量産体制の構築で世界をリードしています。ユニツリーに加え、智元機器人(Agibot)も約5,000台規模の出荷を達成。楽聚智能(Leju Robotics)や加速進化(Booster Robotics)も1,000台規模を記録しています。

一方、米国勢は試験運用段階にとどまっています。Figure AIやApptronikの出荷台数は数十台程度です。テスラのオプティマスも本格量産は2026年以降の見通しで、現時点では中国勢が圧倒的に先行しています。

市場規模の拡大予測

ヒューマノイドロボットの世界出荷台数は2026年に数万台規模に達すると予測されています。ユニツリーは2026年の出荷目標を1万〜2万台に設定しています。テスラも2026年までに10万台への拡大を計画しており、今後は米中両国のメーカーによる激しい競争が予想されます。

中国メーカーの強みは、サプライチェーンの整備やコスト競争力にあります。ユニツリーのG1が約200万円で販売できるのは、中国の部品産業の集積を活かしたコスト削減の成果です。

注意点・展望

ユニツリーのIPOにはいくつかの注意点があります。まず、ヒューマノイドロボット市場はまだ黎明期にあり、商用化の本格的な成功事例は限られています。売上の急成長は目覚ましいものの、市場全体が持続的に拡大するかは不透明な部分もあります。

また、IPO時に目指す評価額70億ドルは、直近のシリーズCの約4倍にあたります。投資家の期待が過熱している可能性も指摘されており、「ヒューマノイドバブル」を懸念する声もあります。

テスラやFigure AIなど米国勢の本格参入が始まれば、競争環境は大きく変わる可能性があります。特にテスラは自動車産業で培った大規模製造のノウハウを持っており、量産が始まればコスト面での優位性が逆転する可能性もあります。

一方で、中国政府はロボティクス産業を戦略的に支援しており、政策面での追い風は続くと見られます。ユニツリーが科創板への上場を成功させれば、中国のヒューマノイドロボット産業全体にとって重要なマイルストーンとなります。

まとめ

ユニツリー・ロボティクスの科創板IPO申請受理は、ヒューマノイドロボット産業が資本市場で本格的に認知され始めたことを示す出来事です。同社は2025年に世界最多の出荷台数を達成し、売上は前年比3倍以上に成長しました。調達予定の960億円はAIモデル開発や製造拡大に投じられ、さらなる成長を目指します。

今後はテスラなど米国勢との競争激化が予想されますが、中国のサプライチェーンと政府支援を背景にしたコスト競争力が当面の強みとなります。ヒューマノイドロボット市場の成長を見極める上で、ユニツリーのIPOの行方は重要な指標となるでしょう。

参考資料:

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