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by nicoxz

湾岸アラブ諸国、対イラン協力で結束に亀裂広がる

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はじめに

2026年2月28日に始まった米国・イスラエルによるイラン攻撃は、湾岸アラブ諸国の外交姿勢を根底から揺さぶっています。イランの報復攻撃が湾岸諸国の都市やエネルギーインフラに直撃したことで、これまで「中立」を保とうとしてきた各国が、米軍への協力を本格的に検討し始めました。

しかし、すべての国が同じ方向に動いているわけではありません。カタールがイランを「歴史上最も強い言葉」で非難する一方、オマーンはイランの新最高指導者モジタバ・ハメネイ師に祝意を表明するなど、湾岸協力会議(GCC)加盟国の足並みの乱れが鮮明になっています。戦後の地域秩序を見据え、各国の思惑が複雑に交錯しています。

イラン報復攻撃が変えた湾岸諸国の姿勢

当初の拒否から協力検討へ

米国・イスラエルによるイラン攻撃が開始される前、湾岸諸国の立場は明確でした。サウジアラビア、UAE、カタール、トルコはいずれも、自国の領土や領空を対イラン攻撃に使用することを拒否する声明を出していました。「これは自分たちの戦争ではない」という認識が共有されていたのです。

しかし、2月28日以降の状況は一変しました。イランは湾岸諸国に向けて65発以上のミサイルと12機以上のドローンを発射し、バーレーン、カタール、クウェート、UAEのアブダビなど広範囲を攻撃しました。ドバイ空港では煙が充満し乗客の避難が行われる事態となり、各国の主要なエネルギーインフラも標的となりました。

この攻撃を受け、湾岸諸国の姿勢は大きく転換しました。クウェート、バーレーン、サウジアラビアなどは敵対的な飛翔体の迎撃に参加し、UAEはイランのミサイル発射装置への爆撃を「真剣に検討中」とする当局者の発言も報じられています。

カタールの歴史的な強硬姿勢

なかでも注目されるのがカタールの対応です。カタール外務省は3月10日、「イランが攻撃を正当化しようとするいかなる説明も拒否する」と表明しました。当局者はこれを「カタール史上最も強い非難声明」と形容しています。

カタールは従来、イランとの対話チャネルを維持し、地域の仲介役を担ってきました。アル・ウデイド空軍基地に米軍の中東最大の拠点を擁しながらも、イランとの関係を完全に断つことは避けてきた国です。その国が発した強い非難は、イランの報復攻撃がいかに湾岸諸国の計算を狂わせたかを物語っています。

結束の亀裂を象徴するオマーンの独自路線

中立を貫くオマーンの立場

GCC加盟国のなかで唯一、異なるアプローチを取っているのがオマーンです。オマーンは歴史的にイランとの良好な関係を維持し、中東紛争における仲介役として独自の外交路線を歩んできました。

今回の紛争でも、オマーン外務省は「地域全体でのミサイル攻撃の即時停止」を呼びかけつつも、アラブ諸国への攻撃に対する「遺憾の意」を表明するにとどめました。他の湾岸諸国がイランを名指しで強く非難したのとは対照的な慎重な姿勢です。

新最高指導者への祝意が波紋

さらに注目されるのが、オマーンのハイサム・ビン・タリク国王が、イランの新最高指導者モジタバ・ハメネイ師の就任に祝意を伝えたことです。

モジタバ師は、米国・イスラエルの攻撃で殺害されたアリー・ハメネイ前最高指導者の次男です。3月8日にイランの聖職者で構成する「専門家会議」の投票により、第3代最高指導者に選出されました。反米強硬路線の継承が予想される人物です。

多くの湾岸諸国がイランとの対決姿勢を強めるなか、オマーンが新指導者に祝意を示したことは、GCC内の足並みの乱れを象徴しています。一部の専門家は「オマーンの姿勢は湾岸地域で孤立を招く可能性がある」と指摘しています。

注意点・展望

湾岸諸国が直面しているのは、短期的な軍事協力の問題だけではありません。戦後の地域秩序をどう構築するかという長期的な課題が、各国の判断に大きく影響しています。

米国に全面的に協力すれば、イランとの将来的な関係修復が困難になります。一方、傍観を続ければ、自国の安全保障を米国に依存しながら責任を果たさないという批判にさらされます。特にサウジアラビアやUAEにとって、エネルギーインフラの防衛は国家存立に関わる問題です。

また、イランの新指導者モジタバ師の政策方針が不透明なことも、各国の判断を難しくしています。反米路線を継承するのか、あるいは停戦に向けた交渉の余地があるのか。湾岸諸国は、この見極めを行いながら慎重にポジションを定めていく必要があります。

日本にとっても、ペルシャ湾の安定はエネルギー安全保障に直結する問題です。ホルムズ海峡の通航への影響や原油供給の不安定化は、日本経済に深刻な打撃を与えかねません。

まとめ

イランの報復攻撃は、「中立」を志向していた湾岸アラブ諸国を否応なしに紛争の当事者へと引きずり込みました。カタールの強硬姿勢とオマーンの独自路線に象徴されるように、GCC内の結束には明らかな亀裂が生じています。

各国は戦後の地域秩序を見据えながら、米国への協力の度合いを慎重に判断しています。中東情勢の行方は、エネルギー市場を通じて世界経済にも大きな影響を及ぼすため、今後の湾岸諸国の動向から目が離せません。

参考資料:

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