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by nicoxz

イラン情勢泥沼化で原油急騰、ドル円160円台の現実味

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はじめに

中東情勢が急速に混迷を深め、金融市場に大きな動揺が広がっています。2026年2月末に始まった米国・イスラエルによるイラン攻撃は、ホルムズ海峡の事実上の封鎖という事態に発展しました。世界の原油輸送の約2割が通過するこの海峡の封鎖により、原油価格は急騰し、北海ブレント原油は1バレル100ドルを突破しています。

今週は日米欧の中央銀行がそれぞれ政策金利を決定する会合を開催しますが、市場の関心は金融政策よりも中東情勢の行方に集中しています。原油高の長期化はドル円相場にも影響を及ぼし、160円台への下落も視野に入ってきました。本記事では、イラン情勢の最新動向と金融市場への影響を整理します。

ホルムズ海峡封鎖とカーグ島攻撃の経緯

米・イスラエルによるイラン攻撃の開始

事態の発端は2026年2月28日にさかのぼります。トランプ大統領が「エピック・フューリー(壮絶な怒り)」と名付けた大規模爆撃作戦が実施され、米国とイスラエルがイランへの軍事攻撃を開始しました。

この攻撃に対し、イラン革命防衛隊(IRGC)はホルムズ海峡を通過する船舶への攻撃を警告しました。3月1日から2日にかけて、日本郵船や川崎汽船を含む海運各社が相次いで海峡の通航を停止し、ホルムズ海峡は事実上の封鎖状態に入りました。

カーグ島への空爆と緊張のエスカレーション

3月13日、トランプ大統領はペルシャ湾にあるイランの重要な石油輸出拠点であるカーグ島の軍事目標を米軍が空爆したと発表しました。イランの原油輸出の約9割がカーグ島を経由するとされ、この島はイラン経済の「生命線」と呼ばれています。

トランプ大統領は「礼節上の理由から、同島の石油インフラを壊滅させることはあえて選ばなかった」としつつ、イランがホルムズ海峡の船舶妨害を続ける場合は石油インフラの破壊も辞さないと警告しました。

これに対しイランは、自国のエネルギーインフラが攻撃された場合、中東にある米国関連の石油・エネルギー施設を「直ちに破壊し灰じんに帰す」と報復を示唆しています。CNNの報道によれば、イランはホルムズ海峡に数十個の機雷を設置しており、事態のさらなる悪化が懸念されています。

ホルムズ海峡の戦略的重要性

ホルムズ海峡は通常1日あたり150隻以上が通過する世界最重要の海上輸送路です。世界の原油輸送の約20%、液化天然ガス(LNG)輸送の約20%がこの海峡を経由しています。封鎖状態が続くことで、湾岸産油国は1日あたり約1,000万バレルの生産削減を余儀なくされており、世界のエネルギー供給構造に深刻な打撃を与えています。

トランプ大統領は日本・中国・韓国・英国・フランスに対して軍艦の派遣を呼びかけ、ホルムズ海峡の封鎖解除に向けた国際的な対応を求めています。

原油価格の急騰と金融市場への波及

ブレント100ドル超え、WTIも急伸

原油市場では「戦争プレミアム」が爆発的に織り込まれ、価格は歴史的な高騰を見せています。北海ブレント原油は1バレル101ドルを超え、2022年7月以来の最高水準に達しました。米国産WTI原油も95ドル台後半まで上昇しており、危機前の80〜85ドルから大幅に跳ね上がっています。

野村総合研究所の木内登英氏の分析によれば、今回の原油価格急騰は需要の拡大によるものではなく、地政学リスクによる供給懸念が主因です。ホルムズ海峡の封鎖が長期化すれば、原油価格が1バレル120ドルに迫る可能性も指摘されています。

株式市場への影響

原油高は企業のコスト増加を通じて株価の押し下げ要因となります。特にエネルギー多消費型の製造業や運輸業への影響が大きく、日本の株式市場でも輸送・化学セクターを中心に売り圧力が強まっています。一方、石油関連銘柄には買いが入る構図となっており、セクター間の明暗が分かれています。

ドル円160円台の可能性

為替市場では、原油高に伴う日本の貿易赤字拡大が円安圧力となっています。Bloombergの報道によれば、来週のドル円相場は160円台を試す展開が視野に入っています。

円安の要因は複合的です。まず原油高による貿易赤字の拡大があります。日本は原油の大部分を中東からの輸入に依存しており、原油価格の上昇は直接的に貿易収支を悪化させます。次に日米金利差の存在です。日銀は追加利上げに慎重な姿勢を維持しており、米国との金利差が円売りを促しています。さらに、財政拡張による円安圧力も加わっています。

日米欧の中央銀行会合と市場の注目点

金利据え置きが濃厚な3中銀

今週は日銀、FRB(米連邦準備理事会)、ECB(欧州中央銀行)がそれぞれ金融政策を決定する会合を予定しています。いずれも政策金利の据え置きが市場のコンセンサスです。

FRBについては、2026年前半に0.25%、後半にさらに0.25%の合計0.5%の利下げがコンセンサスとなっていますが、3月会合での据え置きはほぼ確実視されています。中東情勢の不透明感から、追加的な利下げ判断は先送りされる見通しです。

日銀は追加利上げの時期が焦点となっています。市場では2026年半ば頃の利上げが想定されていますが、円安が加速する場合は3〜4月の前倒し利上げの可能性も指摘されています。ただし、原油高による景気下押しリスクもあり、日銀は難しい判断を迫られます。

ECBは1月から4会合連続で利下げを実施し、預金ファシリティレートを2.0%まで引き下げました。利下げサイクルは終了したとみられ、当面は金利据え置きが続く見通しです。

市場の真の関心は中東情勢

金融政策が据え置きとなる中、市場参加者の最大の関心事はイラン情勢の行方です。特に以下の3点が注目されています。第一に、ホルムズ海峡の封鎖がいつ解除されるか。第二に、米国がイランの石油インフラへの攻撃に踏み切るかどうか。第三に、イランによる報復攻撃の規模と対象です。

これらの展開次第で原油価格はさらに上昇する可能性があり、金融市場の変動性は当面高い状態が続くと見込まれます。

日本経済への影響と注意点

ガソリン価格の上昇

原油価格の急騰は、すでに日本のガソリン価格に波及し始めています。3月9日時点のレギュラーガソリンの全国平均小売価格は1リットル161.8円で、4週連続の上昇です。これは政府による補助金を含んだ価格であり、補助金がなければ185〜200円水準になるとの試算があります。

野村総合研究所の分析では、楽観的なシナリオでもガソリン価格が1リットル180円を超え、実質GDPを0.09%押し下げる効果があるとされています。原油価格が120ドルに迫る展開となれば、ガソリン価格が200円を超える可能性も否定できません。

インフレ加速のリスク

Bloombergの報道によれば、ホルムズ海峡の事実上の封鎖は日本のインフレ加速リスクを高めています。原油高はガソリンだけでなく、電気料金、物流コスト、食品価格など幅広い分野に波及します。日銀が目指す2%の物価安定目標を大幅に上回るインフレが生じれば、金融政策の修正を迫られる局面も想定されます。

まとめ

イラン情勢の泥沼化により、原油市場と為替市場は不安定な状態が続いています。ホルムズ海峡の封鎖とカーグ島への攻撃は、世界のエネルギー供給構造を根本から揺るがす事態です。原油価格の高止まりが長期化すれば、日本経済への打撃は避けられません。

今週の日米欧中央銀行の会合では金利据え置きが見込まれていますが、真の焦点はイラン情勢です。事態の収束に向けた外交努力が進まなければ、ドル円160円台への突入やガソリン価格のさらなる上昇といったシナリオが現実味を帯びてきます。エネルギー価格の動向と中東の軍事情勢を注視する必要があります。

参考資料:

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