東北大発Luke、歯周病治療器が全国の歯科医院で導入拡大
はじめに
歯周病は2001年にギネスブックで「地球上を見渡しても、この病気に冒されていない人間は数えるほどしかいない」と記載された、人類史上最も感染者数の多い感染症です。日本では成人の約半数が4mm以上の歯周ポケットを持つとされ、治療を受けている患者数は1,000万人を超えています。
この世界的な健康課題に挑むのが、東北大学発スタートアップのLuke株式会社(仙台市)です。同社が開発した世界初の歯周病治療器「ブルーラジカルP-01」は、全国の歯科医院で急速に導入が進んでいます。2026年2月には内閣府の日本オープンイノベーション大賞で厚生労働大臣賞を受賞し、その技術力と社会的意義が高く評価されました。
本記事では、ブルーラジカルP-01の革新的な治療技術の仕組み、導入状況、そして海外やペット市場への展開計画について詳しく解説します。
世界初のラジカル殺菌技術とは
ブルーラジカルP-01の仕組み
ブルーラジカルP-01は、東北大学大学院歯学研究科との約17年にわたる共同研究から生まれた革新的な治療器です。その技術の核となるのが「ラジカル殺菌」と呼ばれる手法です。
具体的には、3%の過酸化水素水を歯周ポケットに注入し、405nmの青色レーザーを照射します。この組み合わせにより、活性酸素の一種であるヒドロキシラジカルが生成され、歯周病を引き起こす口腔内細菌を99.99%殺菌できます。従来の歯周病治療では、重度の場合に歯茎の切開や縫合が必要でしたが、ブルーラジカルP-01はこうした外科的処置を必要としません。
低侵襲で高い殺菌効果を実現したこの治療器は、2023年7月に厚生労働省から「歯周治療・歯周炎症・歯周ポケットの殺菌およびスケーリング」を適応とする医療機器製造販売の承認を取得しました。2024年1月から販売が開始されています。
行動変容アプリ「ペリミル」との連携
ブルーラジカルP-01の特徴は、治療器単体にとどまらない点です。IoT技術を活用し、患者行動変容アプリ「ペリミル」と連動しています。
歯周病は生活習慣病としての側面を持ち、治療後も日々の口腔ケアが再発防止に不可欠です。ペリミルは患者の口腔ケア習慣をサポートし、治療器による「原因療法」とアプリによる「対症療法」の両面からアプローチします。歯科医院での治療と自宅でのセルフケアをシームレスにつなぐことで、歯周病の根本的な改善を目指す仕組みです。
Luke株式会社と産学連携の歩み
東北大学発ベンチャーの成長
Luke株式会社は2019年10月に設立されました。東北大学大学院歯学研究科の先進フリーラジカル制御共同研究講座の研究成果を社会実装するために生まれたベンチャー企業です。代表は菅野太郎氏と杉本知久氏が務めています。
出資元には、地元企業の株式会社エーゼットと大手商社の三井物産株式会社が名を連ねています。地元の製造力と大手商社のグローバルネットワークを組み合わせた体制が、研究開発から製造、販売、そして海外展開までを見据えた事業基盤を形成しています。
日本オープンイノベーション大賞を受賞
2026年2月、Luke株式会社と東北大学の取り組みは、内閣府が主催する第8回日本オープンイノベーション大賞において厚生労働大臣賞を受賞しました。
この賞は、産学官の連携によるオープンイノベーションの優れた取り組みを表彰するものです。ブルーラジカルP-01とペリミルの社会実装が、産学官連携による健康課題解決の優れたモデルケースとして評価されました。約17年にわたる大学での基礎研究から、ベンチャー設立、医療機器承認取得、そして全国展開に至るまでの一連のプロセスが、日本のイノベーションエコシステムの成功例として注目されています。
全国への導入拡大と今後の展望
歯科医院への導入状況
ブルーラジカルP-01は、2024年1月の販売開始以降、全国各地の歯科医院で導入が進んでいます。東京、横浜、名古屋、大阪、茨城、群馬など、都市部から地方まで幅広い地域の歯科医院が採用しています。
従来の歯周病治療では、重度の患者に対して歯周外科手術が必要になるケースが多くありました。ブルーラジカルP-01は非外科的な治療を可能にするため、患者の身体的負担が大幅に軽減されます。この点が歯科医師と患者の双方から支持され、導入拡大の原動力となっています。
海外市場への挑戦
Luke株式会社は、三井物産との連携を軸に海外展開を計画しています。歯周病は日本だけでなく世界共通の健康課題であり、グローバル市場での需要は大きいと見込まれています。
海外展開にあたっては、各国の医療機器規制に対応した承認取得が必要です。カントリーリスクや規制の違いなど課題はありますが、三井物産のグローバルネットワークを活用しながら一つひとつクリアしていく方針です。
ペット・動物医療への展開
興味深い展開として、Luke株式会社は獣医療分野への進出も視野に入れています。実は、成犬の約8割が歯周病に罹患しているとされ、ペットの口腔ケアは大きな課題です。
日本には約15,000軒の動物病院がありますが、犬の歯周病を専門的に治療できる施設はわずか50軒程度とされています。この圧倒的な供給不足は、ブルーラジカル技術の応用によって大きく改善される可能性があります。ペット市場の拡大と飼い主の健康意識の高まりを背景に、動物向け歯周病治療は新たな成長領域として期待されています。
注意点・展望
歯周病治療を取り巻く環境は、ブルーラジカルP-01のような革新的技術の登場によって大きく変わりつつあります。ただし、いくつかの点に留意が必要です。
まず、ブルーラジカルP-01は歯科医院での専門的な治療器であり、セルフケアの代替にはなりません。治療後も継続的な口腔ケアと定期的な歯科受診が不可欠です。ペリミルアプリとの連携は、まさにこの点をサポートする仕組みです。
今後の見通しとして、歯周病と全身疾患の関連が科学的に明らかになるにつれ、口腔ケアの重要性はさらに高まると予想されます。歯周病は糖尿病や動脈硬化、さらにはアルツハイマー型認知症との関連も指摘されています。歯周病治療の進歩は、口腔内にとどまらず、全身の健康維持に貢献する可能性を秘めています。
海外展開やペット市場への進出が実現すれば、Luke株式会社は東北大学発のグローバルヘルスケア企業として、さらなる成長が期待されます。
まとめ
東北大学発スタートアップのLuke株式会社が開発した歯周病治療器「ブルーラジカルP-01」は、ラジカル殺菌という独自技術により、非外科的かつ高い殺菌効果を実現した画期的な医療機器です。行動変容アプリ「ペリミル」との連携で、治療とセルフケアの両面から歯周病に対処するアプローチが評価され、2026年2月には日本オープンイノベーション大賞の厚生労働大臣賞を受賞しました。
全国の歯科医院での導入拡大に加え、三井物産との連携による海外展開、さらにはペット・動物医療分野への応用も計画されています。歯周病という世界最大の感染症に挑む東北大学発の技術が、国内外でどのように広がっていくか、今後の展開に注目です。
歯周病が気になる方は、お近くの導入歯科医院でブルーラジカルP-01による治療について相談してみてはいかがでしょうか。
参考資料:
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