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by nicoxz

旧統一教会に東京高裁も解散命令、清算手続き開始へ

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はじめに

2026年3月4日、東京高等裁判所(三木素子裁判長)は、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に対する解散命令について、教団側の即時抗告を棄却する決定を下しました。これにより、2025年3月の東京地裁決定が支持され、教団は宗教法人格を失うこととなりました。

旧統一教会をめぐっては、2022年7月の安倍晋三元首相銃撃事件をきっかけに、長年にわたる高額献金問題が改めて社会問題として注目を集めました。文部科学省が2023年10月に宗教法人法に基づく解散命令を請求して以降、約2年半にわたる司法判断の末に、教団の解体が事実上確定した形です。本記事では、解散命令の経緯と法的意義、そして今後の清算手続きと被害者救済の見通しについて解説します。

解散命令の経緯と法的根拠

40年にわたる高額献金被害

東京高裁の決定によると、旧統一教会の信者らによる不当な献金勧誘は約40年間にわたって行われ、被害者は少なくとも506人、被害総額は約74億円に上ると認定されました。さらに広範な被害を含めると、約1,500人以上が被害を受け、総額約204億円に達するとの指摘もあります。

教団では「霊感商法」や「先祖解怨」と呼ばれる手法で、信者に恐怖心や罪悪感を植え付け、多額の献金を求める行為が組織的に行われてきました。東京高裁はこうした献金勧誘について、「不法行為を構成する」と明確に判断しました。

宗教法人法81条と民法不法行為の適用

今回の解散命令は、宗教法人法第81条第1項第1号に基づいています。同条項は「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をした」場合に解散命令を出せると規定しています。

法令違反を理由とした宗教法人の解散命令は、1996年のオウム真理教、2002年の和歌山県の明覚寺に続き、日本で3例目です。しかし、過去の2例はいずれも殺人や詐欺といった刑法違反が根拠でした。今回は「民法上の不法行為」(民法709条)を根拠とした初めてのケースであり、法的に大きな意義を持ちます。

2025年3月3日には、最高裁第一小法廷が「民法709条の不法行為を構成する行為は、宗教法人法81条1項1号にいう『法令に違反』する行為に当たる」との判断を示しており、この最高裁判断が地裁・高裁の解散命令決定を支える重要な法的基盤となりました。

東京高裁の判断理由

三木裁判長は、教団が2009年に出した「コンプライアンス宣言」以降の対応についても厳しく評価しました。宣言後も教団幹部は宣言前と同水準の献金収入予算額を設定しており、これは韓国本部総裁の韓鶴子氏らの活動資金の減少を防ぐためであったと指摘しています。

さらに裁判所は、教団の対策は「訴訟件数を減らして問題を顕在化させないことに重点を置き、不十分だった」と断じました。コンプライアンス宣言後も信者が献金目標達成のために不法行為を続け、現在もその恐れがあるとし、「防止するための実効性のある手段は解散命令以外に見当たらない」と結論づけました。つまり、教団の「自浄努力」は形式的なものにすぎず、裁判所はこれを一蹴した形です。

清算手続きと被害救済の見通し

清算人の選任と手続きの開始

東京高裁の決定を受け、東京地裁は清算人として第一東京弁護士会の伊藤尚弁護士を選任しました。伊藤弁護士は教団の代表者として、裁判所の監督のもと、債権の取り立てや債務の弁済などの清算事務を行う広範な権限を持ちます。

伊藤弁護士は就任後の記者会見で、数百人の弁護士が加わって全国約300か所の教団施設に調査に入ると説明しました。清算手続きは「年単位の期間がかかる」との見通しを示し、被害申し出の債権申出期間を1年間とすることを検討していると明らかにしました。

教団資産約1040億円の行方

高裁決定によると、教団の資産は2024年度末で約1040億円に上ります。これまで献金被害者らが申し立てた集団調停では、195人に対して解決金計約39億円の支払いが決定していますが、資産全体から見ればごく一部にとどまっています。

清算手続きでは、まず教団の全資産を把握し、被害者からの債権申し出を受け付けた上で弁済を行います。しかし、オウム真理教の事例では破産手続きの完了に約13年を要しており、旧統一教会の清算も長期化する可能性が高いと指摘されています。

関連団体への資産流出リスク

大きな懸念材料として浮上しているのが、教団関連団体への資産流出リスクです。旧統一教会は2009年に「残余財産の帰属先を北海道帯広市の天地正教とする」という内部規則を定めていたことが明らかになっています。天地正教は1970年代に設立され、現在は旧統一教会の管理下に置かれている宗教法人です。

清算後の財産が別法人へ移転されれば、被害者による債権回収は極めて困難になります。ジャーナリストの鈴木エイト氏らは、解散命令確定前に教団が資産を関連団体に移転させている可能性を指摘しており、清算人による徹底した資産調査と流出防止が求められています。

注意点・展望

特別抗告と今後の法的手続き

教団側は東京高裁の決定に対し、最高裁への特別抗告を行う方針を示しています。ただし、特別抗告には執行停止の効力がないため、清算手続きは高裁決定の時点で開始されます。仮に最高裁が解散命令を取り消した場合、清算手続きは停止しますが、その可能性は低いと見られています。

教団の堀元会長は解散命令を受けて声明を発表し、宗教法人格を失った後も「宗教活動は続ける」と表明しました。宗教法人格の喪失により税制上の優遇措置は失われますが、任意団体として宗教活動を行うこと自体は法律上禁じられていません。

被害者救済の課題

日本弁護士連合会は、解散命令確定を受けて会長談話を発表し、被害者救済の実効性を確保するための立法措置の必要性を訴えています。2023年12月に成立した法律により、法テラス(日本司法支援センター)が被害者の民事訴訟を支援する仕組みが整備されていますが、清算手続き中の被害申し出への支援継続など、さらなる制度整備が課題です。

また、国際的な動きとして、韓国でも旧統一教会に対する政治介入への法的対応が検討されるなど、教団を取り巻く環境は厳しさを増しています。

まとめ

東京高裁による解散命令決定は、40年以上にわたり高額献金被害を生み出してきた旧統一教会に対する司法の明確な判断です。民法上の不法行為を根拠とした初の解散命令という法的先例としても重要な意味を持ちます。

今後は約1040億円に上る教団財産の清算手続きが本格化しますが、全国約300か所の施設調査や被害者からの債権申し出の受付など、年単位の長期的な取り組みが必要です。関連団体への資産流出防止と被害者への実効的な弁済の実現が、清算手続きにおける最大の焦点となります。被害者の救済が確実に進むよう、清算人の活動と制度面での支援の両面から注視していく必要があるでしょう。

参考資料

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