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by nicoxz

赤福が式年遷宮に向け伊勢の集客力強化へ本腰

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はじめに

三重県伊勢市に本社を置く菓子製造販売の赤福が、地元・伊勢の集客力向上に向けた取り組みを加速させています。2033年に予定されている伊勢神宮の式年遷宮を見据え、伊勢の歴史を学べる体験型施設の整備や、和洋菓子ブランドの強化を進めています。

浜田朋恵社長は「将来は東京にも店舗を構えたい」と意欲を語っており、地域密着型の老舗企業が全国展開を視野に入れた新たな成長戦略に乗り出した形です。本記事では、赤福の歴史と現在の取り組み、そして式年遷宮がもたらす経済効果について解説します。

赤福の歴史と伊勢の結びつき

300年以上続く伊勢の名物

赤福は1707年(宝永4年)に創業した老舗です。社名の由来は「赤心慶福」(せきしんけいふく)という言葉で、「純粋な心で人の幸福を喜ぶ」という意味が込められています。伊勢神宮の内宮前、五十鈴川のほとりで参拝者をもてなしてきた歴史は、3世紀以上に及びます。

赤福餅の特徴的な形は、五十鈴川の川の流れを模したものです。餡につけられた3本の筋は清流のせせらぎを、白い餅は川底の小石を表現しています。創業当初は塩味の餡が使われており、長旅で疲れた参拝者の食事代わりとなっていました。1911年に昭憲皇太后が参拝の際に赤福餅を所望したことをきっかけに、白砂糖を使った現在のスタイルに変わりました。

おかげ横丁の創設と地域貢献

赤福の地域貢献で特筆すべきは、1993年に開業した「おかげ横丁」です。江戸時代から明治時代にかけてのお伊勢参りで賑わった門前町の街並みを再現した観光施設で、赤福が当時の年商に匹敵する約14億円を投じて建設しました。補助金を一切受けずに自社負担で整備したことでも知られています。

おかげ横丁には49の店舗が軒を連ね、伊勢の名産品や郷土料理を楽しめます。2013年の式年遷宮の年には過去最高の655万人が来場し、伊勢の観光産業を支える中核施設となっています。

式年遷宮に向けた新たな取り組み

体験型施設で伊勢の魅力を発信

赤福は2033年の式年遷宮に向けて、伊勢の歴史や文化を体験できる施設の整備を計画しています。単なる土産物購入の場にとどまらず、伊勢の歴史を深く学べるコンテンツを充実させることで、訪問客の滞在時間を延ばし、地域全体の集客力を高める狙いがあります。

式年遷宮とは、伊勢神宮の社殿を20年ごとに造り替える神事です。次回は第63回目となり、2033年秋に本殿遷御の儀が予定されています。前回2013年の遷宮では年間参拝者数が過去最高の1,400万人を超え、地域経済に大きな恩恵をもたらしました。三重県の調査によると、遷宮年の観光消費額は平常時の約1.5倍に達し、1,000万人の観光客による消費支出は2,416億円と試算されています。

和洋菓子ブランド「五十鈴茶屋」の強化

赤福は主力の赤福餅に加え、1985年に立ち上げた和洋菓子ブランド「五十鈴茶屋」の強化にも力を入れています。五十鈴茶屋は伊勢の自然と文化を背景に、日本の伝統的な和菓子の価値を守りながら現代の嗜好に合わせた新しいスイーツを提供するブランドです。

2025年には阪神梅田本店に新たな店舗を開業したほか、東京駅でも期間限定の出店を複数回実施しています。赤福餅は通常、東海・関西エリアでしか購入できませんが、百貨店の催事や期間限定出店を通じて関東圏での認知度向上を図っています。

浜田朋恵社長が「将来は東京にも店舗を構えたい」と語っていることから、五十鈴茶屋ブランドを軸にした常設店舗の東京進出も視野に入っていると考えられます。

式年遷宮がもたらす経済効果と課題

前回遷宮の実績と今回の期待

2013年の第62回式年遷宮では、年間参拝者数が1,400万人を超え、宿泊施設の稼働率は20%以上上昇しました。遷宮に伴う経済効果は地元だけでなく、三重県全体に波及しています。

2033年の式年遷宮でも同様の効果が期待されますが、事業費の面では課題も指摘されています。前回の遷宮事業費は約558億円でしたが、人件費や資材の高騰により、今回は1,000億円に上る可能性も懸念されています。

インバウンド需要と新たなチャンス

前回の遷宮時と比べ、現在はインバウンド(訪日外国人)観光客が大幅に増加しています。伊勢志摩地域は2016年のG7サミット開催地としても知られ、国際的な認知度が向上しています。2033年の式年遷宮では、国内外の観光客を取り込むことで、前回を上回る経済効果が期待できるでしょう。

赤福のような地元企業が体験型コンテンツの整備やブランド強化に取り組むことは、一過性のイベントに終わらない持続的な観光基盤の構築にもつながります。

注意点・展望

赤福の全国展開には、品質管理と供給体制の整備が不可欠です。赤福餅は消費期限が短く、大量生産・広域流通には向きません。2007年には消費期限の改ざん問題が発覚し、信頼回復に長い時間を要しました。東京進出にあたっては、品質を維持しながらブランド価値を守るバランスが求められます。

五十鈴茶屋は赤福餅とは異なる商品ラインナップを持つため、流通面での柔軟性は高いと考えられます。東京での常設店舗が実現すれば、伊勢の魅力を首都圏で日常的に発信する拠点となるでしょう。

2033年の式年遷宮まであと7年。赤福が進める体験型施設の整備やブランド強化が、伊勢全体の観光力向上にどのような相乗効果を生み出すか、今後の展開に注目が集まります。

まとめ

赤福は2033年の伊勢神宮式年遷宮に向けて、体験型施設の整備と和洋菓子ブランド「五十鈴茶屋」の強化という二つの柱で成長戦略を推進しています。300年以上にわたり伊勢の観光産業を支えてきた老舗企業が、東京進出も視野に入れた新たな挑戦を始めました。

前回2013年の遷宮では1,400万人超の参拝者が訪れ、地域に大きな経済効果をもたらしました。赤福の取り組みが伊勢全体の魅力向上に貢献し、次回の遷宮をさらなる飛躍の契機とできるかが注目されます。

参考資料:

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