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by nicoxz

千鳥屋本家が民事再生法申請、老舗和菓子店の再建

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はじめに

銘菓「千鳥饅頭」や「ヨーデルン」(旧チロリアン)で知られる千鳥屋本家(福岡県飯塚市)など関連4社が、2026年2月27日付で福岡地方裁判所に民事再生法の適用を申請しました。4社の負債総額は22億6,800万円(グループ内取引を除くと約13億円)にのぼります。

1630年創業にルーツを持つ約400年の歴史ある老舗和菓子企業が、なぜ経営破綻に至ったのか。今後のスポンサー支援による再建の見通しとあわせて詳しく解説します。

民事再生の詳細

申請4社の内訳

民事再生法の適用を申請したのは以下の4社です。

  • 株式会社千鳥屋本家(福岡県飯塚市):菓子の小売販売を担当。負債額は約22億6,800万円(4社合計)
  • 株式会社千鳥屋本家(福岡市中央区):同名の別法人で菓子小売を展開。負債約7億3,800万円
  • 株式会社チロリアン(福岡市):菓子の製造部門を担当。負債約4億1,800万円
  • 有限会社一実:負債約6,240万円

4社は一体的に経営されており、連動して民事再生手続きに入りました。なお、営業は継続されており、店舗での販売は引き続き行われています。

スポンサーによる再建計画

今後は親族企業である千鳥屋宗家(兵庫県西宮市)がスポンサーに就き、経営再建を支援する方針です。千鳥屋宗家は同じ千鳥屋のルーツを持つ企業で、関西圏を中心に安定した経営基盤を持っています。

親族企業がスポンサーに就くことで、ブランドや製造ノウハウの継続性が保たれやすいという利点があります。

約400年の歴史と「千鳥屋4社」の系譜

松月堂から千鳥屋へ

千鳥屋のルーツは1630年(寛永7年)に佐賀県で「松月堂」として創業した和菓子店にさかのぼります。その後、1927年に福岡県飯塚市に「千鳥屋」を開店し、炭鉱で栄えた筑豊地域を中心に事業を拡大しました。

戦後の高度成長期には、創業者夫妻である原田政雄・ツユの息子たちがそれぞれ独立し、のれん分けによって4つの千鳥屋が誕生しました。

4社の系譜

千鳥屋は親族によって以下の4社に分かれています。

  • 千鳥屋総本家(東京都豊島区):長男が創業。2016年に事業を停止
  • 千鳥饅頭総本舗(福岡市):次男が創業。九州を中心に展開
  • 千鳥屋宗家(兵庫県西宮市):三男が創業。関西圏で展開
  • 千鳥屋本家(福岡県飯塚市):五男が創業。今回の民事再生申請

「千鳥屋」の名称は4社共通の商標として使用されていましたが、各社はそれぞれ独立した経営を行ってきました。2016年には東京の千鳥屋総本家が事業を停止しており、今回の千鳥屋本家の経営破綻で、4社のうち2社が経営に行き詰まったことになります。

チロリアンの商標権争い

千鳥屋の代表的銘菓「チロリアン」は、創業者夫妻の息子4人の連名で商標登録されていました。しかし2010年代後半から千鳥饅頭総本舗が他2社に対して「チロリアン」の名称使用停止を求める訴訟を起こしました。

千鳥屋本家は2022年12月に和解が成立し、和解金を支払うとともに2023年4月から商品名を「ヨーデルン」に変更しています。こうした商標紛争に伴うコストも、経営を圧迫する一因となった可能性があります。

経営悪化の要因

コロナ禍と消費行動の変化

千鳥屋本家は2020年8月期に年売上高約11億円を計上していましたが、新型コロナウイルスの影響で来店客数が大幅に減少しました。お土産需要や贈答品需要に支えられていたビジネスモデルは、人の移動が制限されたコロナ禍で大きな打撃を受けています。

最盛期には66店舗を展開していましたが、直近では42店舗にまで縮小し、赤字決算が続いていました。

主力商品への依存

千鳥饅頭やチロリアン(現ヨーデルン)といった定番商品への依存度が高く、商品ラインナップの多角化が十分に進んでいなかったことも課題でした。消費者の嗜好が多様化するなかで、伝統的な和菓子だけでは新規顧客の獲得が難しくなっています。

さらに、原材料費や人件費の上昇が収益を圧迫し、店舗維持のための固定費負担も重くのしかかりました。

注意点・展望

老舗企業の事業承継問題

千鳥屋本家の事例は、日本全国の老舗企業が直面する共通の課題を浮き彫りにしています。長い歴史とブランド力を持ちながらも、時代の変化に対応しきれず経営が行き詰まるケースは少なくありません。

特に地方の伝統的な菓子メーカーにとって、ECへの対応やブランドの刷新、新たな販路の開拓は喫緊の課題です。

民事再生の見通し

千鳥屋宗家がスポンサーとして支援することで、事業の継続性は確保される見通しです。民事再生法は破産とは異なり、事業を継続しながら再建を目指す手続きです。店舗営業やブランドが維持される可能性は高いと考えられます。

ただし、再生計画の策定と債権者の同意取得にはまだ時間がかかります。従業員の雇用維持や店舗の存続範囲など、具体的な再建策の内容が今後の焦点です。

まとめ

千鳥屋本家など4社の民事再生法申請は、約400年の歴史を持つ老舗和菓子企業の経営破綻として大きな注目を集めています。コロナ禍による来店客数の減少、主力商品への依存、商標紛争のコストなど、複数の要因が重なった結果です。

今後は親族企業の千鳥屋宗家がスポンサーとなり再建を目指す方針で、営業は継続されています。銘菓「千鳥饅頭」のブランドが守られ、新たな経営体制のもとで再生できるかが注目されます。

参考資料:

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