サブカル造形の救世主「ウレヒーロー」が大ヒット中
はじめに
「ウレヒーロー」という名前の塗料をご存知でしょうか。大阪に本社を置く老舗塗料メーカー・斎藤塗料が開発したこの特殊塗料が、コスプレイヤーやフィギュア愛好家の間で大きな話題を呼んでいます。
ゴムや布など柔らかい素材にも塗装でき、曲げても伸ばしても割れないという驚異的な性能を持つこの塗料は、SNSでのバズをきっかけに爆発的な人気を獲得しました。元ゲームプロデューサーから家業を継いだ5代目アトツギの奮闘が、97年の歴史を持つ老舗企業に新たな風を吹き込んでいます。
ウレヒーローとは
驚異の伸縮性を持つ特殊塗料
「ウレヒーロー」は、柔軟性と伸縮性に特化した特殊塗料です。最大の特徴は驚異の伸縮率300%という性能です。輪ゴムのように塗膜を伸ばしても割れることがありません。
従来の塗料では、ゴムや布、レザーなどの柔らかい素材に塗装すると、素材の動きに追従できず塗膜が割れてしまうという問題がありました。ウレヒーローはこの課題を解決し、下地処理なしのプライマーレスで、さまざまな素材に直接塗装できます。
豊富なカラーラインナップ
製品ラインナップも充実しています。メッキ調のゴールドやシルバーだけでなく、通常カラー(光沢・つや消し)、メタリックカラー、クリアーなど多彩なバリエーションが揃っています。
特に注目されているのがメッキ調塗料です。コスプレ衣装の金属パーツや、フィギュアの武器など、金属風の仕上げを求める用途で重宝されています。さらに、蓄光とネオンの2つの性能を持つ発光タイプも登場しています。
塗膜の質感も優秀
一般的な柔軟性塗料は表面がベタつくという課題がありましたが、ウレヒーローは塗膜がツルツルしており、水を弾く効果もあります。布やレザーの撥水コーティングとしても使用できる汎用性の高さが特徴です。
老舗メーカーの技術力
1927年創業の斎藤塗料
ウレヒーローを開発した斎藤塗料株式会社は、1927年(昭和2年)に創業した老舗塗料メーカーです。大阪市淀川区に本社を構え、97年にわたって塗料の開発・製造を続けてきました。
主な取引先は大手家電メーカー、建材メーカー、自動車部品メーカー、ドラム缶メーカー、工作機械メーカーなどです。金属用塗料や木工用塗料の開発・製造を得意としており、2001年には国際品質規格ISO9001を取得しています。
BtoB企業としての技術蓄積
斎藤塗料は長年、BtoB(企業間取引)を主体としてきた会社です。工業用塗料の分野で培った技術力が、ウレヒーローの開発を可能にしました。
ウレヒーローの原型は2019年に工業用として開発・販売されたものです。当初はBtoB向け製品として展示会などでPRを行っていましたが、販売には苦戦していました。
SNSでバズが発生
Twitterでの動画が13万再生
転機となったのは2021年11月のことでした。斎藤塗料の公式X(旧Twitter)アカウントで、ウレヒーローの性能を紹介する動画を投稿したところ、予想外の反応が起きました。
「フィギュアにぴったりな塗料がある」「割れないメッキで衣装に使えそう」といったコメントが殺到し、動画の再生数は13万回を超えました。コスプレイヤーやフィギュア愛好家といった、当初想定していなかった層からの問い合わせが相次いだのです。
コスプレ造形の悩みを解決
コスプレイヤーにとって、塗装の割れ・剥がれは長年の悩みでした。コスプレ衣装は3次元的な造形が必要で、ソフビや布など柔らかい素材を多用します。従来の塗料では、動くたびに塗膜が割れてしまう問題がありました。
ウレヒーローの柔軟性と伸縮性は、まさにこの問題を解決するものでした。「サブカル造形の救世主」「衣装製作に欠かせない」といった声が上がり、コスプレイヤーの間で急速に広まりました。
一般販売で大成功
ハンズ新宿店で2日完売
SNSでのバズを受けて、斎藤塗料は一般販売に踏み切りました。2022年3月にハンズ新宿店で販売を開始したところ、わずか2日で完売という大盛況となりました。
現在ではハンズマンなどのホームセンターや、模型専門店、オンラインショップなど、販路を大きく拡大しています。
相次ぐ受賞
2022年にはJAPAN DIY HOMECENTER SHOW 2022の日本DIY商品コンテストにおいて、経済産業省製造産業局長賞と新商品一般人気投票部門第1位をダブル受賞しました。さらに第36回中小企業優秀新技術・新製品賞で奨励賞も受賞しています。
2024年度には大阪ものづくり優良企業賞も受賞し、技術力とビジネス展開の両面で高い評価を得ています。
5代目アトツギの挑戦
ゲームクリエイターから家業へ
このウレヒーローの成功を牽引したのが、取締役営業部長の菅彰浩氏です。菅氏は斎藤塗料の5代目アトツギにあたります。
菅氏はもともとゲームクリエイターとして活躍していました。家業である斎藤塗料に入社後は、培ったマーケティングセンスやデジタルへの理解を活かして、SNS戦略を積極的に展開しています。
アトツギアワード2023でイノベーション賞
菅氏は2023年のアトツギアワードにおいて「イノベーション賞」を受賞しました。ピッチ発表では、7歳と5歳の子供が見守る中、父としての思いと事業への情熱を語りました。
「何で斎藤塗料に帰ってきたのか」「がんばるってどういうことなのか」を子供たちに伝えたいという思いが、挑戦の原動力になっていると語っています。
使用上の注意点
塗装のコツ
ウレヒーローを使用する際にはいくつかの注意点があります。まず、薄膜仕様(10μ±5)のため、厚く塗りすぎると乾燥不良や密着性不良の原因になります。
乾燥時間は季節によって異なります。夏場は30分から1時間程度で乾燥しますが、冬場は1日かかる場合もあります。
換気と安全対策
ウレヒーロー特有の独特な臭いがあり、飛散しやすい特性があります。使用時は十分な換気を行い、必要に応じて防毒マスクを着用するなど、安全対策を講じる必要があります。
まとめ
斎藤塗料のウレヒーローは、97年の歴史を持つ老舗企業の技術力と、5代目アトツギのデジタルマーケティングセンスが融合して生まれた成功事例です。BtoB向け工業用塗料として開発された製品が、SNSでのバズをきっかけに一般消費者向けのヒット商品へと変貌を遂げました。
コスプレイヤーやフィギュア愛好家という新たな顧客層を開拓したことで、斎藤塗料は企業としても新たな成長フェーズに入っています。老舗企業の事業承継と新規事業開発の好例として、今後も注目を集めるでしょう。
参考資料:
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