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by nicoxz

災害救助法の適用が震災後5倍に急増した背景

by nicoxz
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はじめに

東日本大震災から15年を迎えた2026年3月11日、改めて浮き彫りになったのが日本の災害対応体制の変容です。大規模災害時の初動対応を国や都道府県が担う「災害救助法」の適用が、2011年以降急増しています。2011年から2025年の15年間で、適用は延べ2,138市区町村に上り、震災前の15年間と比べて約5倍に増加しました。

この数字は何を意味するのでしょうか。本記事では、災害救助法の仕組みと適用急増の背景、そして今後の災害対応の課題について解説します。

災害救助法とは何か

法律の基本的な仕組み

災害救助法は1947年に制定された法律で、災害発生時に国が地方公共団体や日本赤十字社などと協力して、被災者への応急的な救助を行うことを目的としています。具体的には、避難所の設置、応急仮設住宅の提供、食料・飲料水の供給、医療の提供、障害物の除去などが含まれます。

法律に基づく救助は都道府県知事が実施主体となり、必要に応じて市町村長に事務の一部を委任できます。救助にかかる費用は原則として都道府県が負担し、財政力に応じて国が一定割合を負担する仕組みです。

適用の基準

災害救助法が適用されるのは、一定以上の被害が生じた場合です。具体的には、市区町村の人口規模に応じた住家の滅失世帯数の基準があります。また、多数の住民が生命・身体に危険を受け、継続的な救助が必要な場合にも適用されます。

近年では、実際に住家が滅失する前の段階、つまり避難指示が発令された時点で予防的に適用されるケースも増えています。

適用件数が5倍に急増した背景

災害の激甚化・頻発化

適用急増の最大の要因は、自然災害そのものの激甚化と頻発化です。内閣府の防災白書によれば、1日の降水量が200ミリ以上の大雨を観測した日数は、過去100年間で約1.7倍に増加しています。日本の年平均気温も100年あたり1.24℃上昇しており、世界平均を上回るペースで温暖化が進行しています。

2018年の西日本豪雨、2019年の台風19号(東日本台風)、2020年の令和2年7月豪雨など、広範囲にわたる水害が相次ぎ、そのたびに多数の自治体に災害救助法が適用されてきました。

地震災害の連続

水害だけではありません。2016年の熊本地震、2018年の北海道胆振東部地震、そして2024年1月の能登半島地震と、大規模な地震災害も頻発しています。能登半島地震では直接死228人、災害関連死397人、全半壊住家約3万棟という甚大な被害が発生しました。

これらの災害が短い間隔で発生し、そのたびに多くの市区町村が災害救助法の適用を受けるという状況が続いています。

市区町村の対応力の限界

もう一つの重要な要因は、市区町村の自力での応急対応能力の低下です。地方自治体では人口減少と財政難が進み、防災担当職員の確保が困難になっています。特に中山間地域や過疎地域では、職員数の減少が著しく、大規模災害時に自力で避難所運営や物資調達を行うことが物理的に難しくなっています。

能登半島地震でも、極度の高齢化が進む被災地域において、介護機能の確保や要支援者の情報共有に深刻な課題が生じました。市区町村だけでは対応しきれず、国や都道府県の支援が不可欠な状況が常態化しています。

制度改革の動き

2025年の法改正

こうした課題を受け、2025年5月には災害救助法の大幅な改正が行われました。能登半島地震での経験を教訓に、避難生活における「災害関連死」のリスク低減を主な目的として、避難所の環境改善や福祉的支援の強化が盛り込まれています。

従来の災害救助法には福祉サービスに関する規定が十分に含まれておらず、高齢者や障がい者への支援が後手に回る問題がありました。改正法では、福祉の視点を災害対応に組み込む方向性が明確に打ち出されています。

防災庁の設置に向けた議論

さらに、政府は平時から復興政策を統括する「防災庁」の設置に向けた検討を進めています。三菱総合研究所の提言では、防災庁には「平時からの復興政策」の推進が求められるとされ、災害発生前の段階から自治体の対応力を底上げする仕組みの構築が重要だと指摘されています。

注意点・展望

「適用増加=災害増加」だけではない

災害救助法の適用件数が5倍に増えた背景には、災害そのものの激甚化に加え、適用基準の運用変化も影響しています。近年は予防的な適用が増えているため、単純に「災害が5倍になった」と解釈するのは正確ではありません。適用のハードルを下げることで、早期の支援体制構築につなげる狙いもあります。

南海トラフ地震への備え

今後30年以内に70〜80%の確率で発生するとされる南海トラフ地震では、被害は東日本大震災をはるかに上回る規模になると想定されています。その際、災害救助法の適用対象となる自治体数は過去に例のない規模に達する可能性があります。国と自治体の連携体制のさらなる強化が急務です。

まとめ

東日本大震災後、災害救助法の適用が5倍に急増した事実は、日本の災害リスクが構造的に高まっていることを示しています。気候変動による水害の激甚化、大規模地震の頻発、そして自治体の対応力低下という三重の課題が重なり、国や都道府県による広域支援の重要性はますます高まっています。

一人ひとりができることとして、自治体のハザードマップの確認や避難経路の把握、非常用持ち出し袋の準備など、日頃からの防災対策を改めて見直すことが大切です。

参考資料:

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