2026年度税制改正で39件の減免拡大、インフレ対応の全容
はじめに
物価上昇が続く中、政府は2026年度の税制改正で大規模な「インフレ調整」に乗り出しました。国税21件、地方税18件の合計39の税制措置において、課税を減免する基準額が引き上げられます。長年据え置かれてきた基準額のままでは、物価上昇によって実質的な税負担が増してしまうためです。
不動産取得税は53年ぶりの改定、企業の食事補助の非課税枠は42年ぶりに倍増するなど、歴史的な見直しが相次ぎます。本記事では、家計と企業に関わる主要な改正点を詳しく解説します。
物価上昇に連動した基準額の引き上げ
基礎控除と給与所得控除の拡大
2026年度税制改正の柱の一つは、所得税の基礎控除と給与所得控除の引き上げです。基礎控除は現行の58万円から62万円へ、給与所得控除の最低保証額は65万円から69万円へ、それぞれ4万円ずつ引き上げられます。
これに伴い、いわゆる「年収の壁」は178万円に引き上げられます。さらに、基礎控除の上乗せ特例の最大控除額は37万円から42万円へ拡大され、対象者も給与収入200万円相当から475万円相当まで大幅に広がります。
物価連動型の新たな仕組み
注目すべきは、物価上昇に連動して基礎控除等を自動的に引き上げる仕組みが新たに創設される点です。これにより、今後の物価上昇局面でも基準額の見直しが遅れることなく、実質的な増税を防ぐ効果が期待されます。消費者物価指数の上昇を踏まえた制度設計となっています。
不動産取得税の53年ぶり改定
免税点の引き上げ
不動産取得税の免税点が53年ぶりに改定されます。現行の免税点は土地が10万円未満、新築家屋が1戸あたり23万円未満、売買・贈与による取得家屋が1戸あたり12万円未満となっていますが、これらの基準額が物価上昇を反映して引き上げられます。
半世紀以上にわたって据え置かれてきた基準額は、不動産価格が大幅に上昇した現在の市場実態とかけ離れており、見直しの必要性が長く指摘されていました。今回の改定により、少額の不動産取得に対する税負担が軽減されます。
マンション建替えへの税制優遇
老朽化マンションの建替え・再生についても税制優遇が拡充されます。「マンション再生事業」や「マンション等売却事業」が新たに対象に追加され、除却が必要と認定されたマンションとその敷地を組合が取得する際、不動産取得税が非課税となります。老朽マンション問題の解決を後押しする措置です。
食事補助の非課税枠が42年ぶりに倍増
月額3,500円から7,500円へ
企業が従業員に提供する食事補助の非課税枠が、月額3,500円から7,500円へとほぼ倍増します。この基準額は1984年に設定されて以来、42年間にわたって据え置かれていました。当時と現在では物価水準が大きく異なっており、実態に即した見直しが実現する形です。
非課税の要件として、企業負担額が月額7,500円(税抜)以下であること、従業員が食事代の50%以上を負担することが求められます。この条件を満たせば、食事補助は給与として課税されません。
社員食堂の値下げやメニュー充実に期待
非課税枠の拡大により、企業は従業員への食事補助をより手厚くすることが可能になります。社員食堂を運営する企業では、メニューの値下げや品数の充実といった施策が打ちやすくなります。「第3の賃上げ」とも呼ばれるこの改正は、物価高に苦しむ従業員の生活を直接的に支援する効果が期待されています。
深夜勤務者への支援も拡充
深夜勤務(22:00〜翌5:00)における食事代の現金支給についても、非課税限度額が1食あたり300円から650円へと引き上げられます。深夜勤務者の食事環境の改善を後押しする措置です。
中小企業向けの減免措置
少額減価償却資産の特例拡大
物価高騰による備品等の価格上昇を踏まえ、中小企業が取得した少額資産を即時償却できる「少額減価償却資産の特例」の対象基準額が、30万円未満から40万円未満に引き上げられます。パソコンやオフィス家具など業務用備品の価格が上昇する中、中小企業の設備投資を下支えする効果があります。
配偶者控除・扶養控除の要件緩和
配偶者控除や扶養控除の対象となるための合計所得金額の要件が、58万円以下から62万円以下に引き上げられます。勤労学生控除も85万円以下から89万円以下へと拡大されます。これらの改正により、パートやアルバイトで働く配偶者や学生の「働き控え」が緩和されることが期待されます。
注意点・今後の展望
今回の39件にわたる基準額の見直しは、いずれも減税方向の改正であり、家計と企業の負担軽減につながります。ただし、改正項目ごとに施行時期が異なる点には注意が必要です。所得税関連は2026年分から、不動産取得税の免税点改正は施行時期が別途定められる予定です。
また、基準額の引き上げは物価上昇に追いつくための措置であり、新たな減税ではなく「実質増税の是正」という性格が強い点も理解しておく必要があります。物価上昇が今後も続けば、さらなる見直しが必要になる可能性があります。
物価連動型の自動調整の仕組みが導入されることで、今後はこうした「据え置きによる実質増税」が起きにくくなることが期待されます。
まとめ
2026年度の税制改正では、物価上昇に対応して国と地方合わせて39の税制措置で課税減免の基準額が引き上げられます。不動産取得税の53年ぶりの改定や食事補助の非課税枠の倍増など、長年据え置かれてきた基準額が一斉に見直される歴史的な改正です。
家計にとっては基礎控除の拡大や年収の壁の引き上げ、企業にとっては食事補助や少額資産の特例拡大など、幅広い分野で負担軽減が図られます。改正内容を正しく理解し、適用可能な措置を活用していくことが重要です。
参考資料:
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