11年ぶり暫定予算へ、高校無償化は4月予定通り
はじめに
2026年度の当初予算案が年度内に成立しない可能性を受けて、政府が暫定予算案の編成を検討しています。暫定予算の編成が実現すれば、2015年度以来11年ぶりのことです。
注目すべきは、高校授業料の無償化拡充など暮らしに直結する政策が、暫定予算下でも予定通り4月から実施できる見通しであることです。また、個人や企業への影響が大きい税制改正関連法案についても、年度内に成立する公算が大きいとの見方が政府・与党内で出ています。
本記事では、暫定予算の仕組みや過去の事例を振り返りつつ、私たちの暮らしや経済活動への影響を詳しく解説します。
暫定予算とは何か
暫定予算の基本的な仕組み
暫定予算とは、新年度の本予算が年度開始の4月1日までに成立しない場合に、つなぎとして編成される一時的な予算です。財政法第30条に基づく制度で、本予算が成立するまでの間、行政運営に必要最小限の経費を計上します。
暫定予算の特徴として、新規の施策に係る経費は原則として計上しないことが挙げられます。既存の事業や義務的経費を中心に組まれるため、予算規模は本予算に比べて大幅に小さくなります。また、暫定予算で支出された経費は、本予算が成立した後にその一部として組み込まれます。
なぜ今回、暫定予算が必要になったのか
今回の暫定予算編成の背景には、2026年1月の通常国会冒頭での衆議院解散があります。高市早苗首相が通常国会の冒頭で衆院を解散し、2月に総選挙が実施されました。この間、予算審議は中断され、本予算案の国会提出が大幅にずれ込みました。
2月の衆院選で自民党が316議席を獲得する大勝を収めたものの、特別国会召集後に予算審議を一からやり直す必要があり、3月末までの予算成立は困難との見方が広がっています。
過去の暫定予算の事例
2015年度の暫定予算
直近の暫定予算は2015年度のもので、4月11日までの11日分が編成されました。この時の背景も衆院解散でした。2014年11月に安倍首相(当時)が「アベノミクス解散」を断行し、12月に総選挙が行われたことで予算案が越年編成となり、政府案の国会提出が2015年2月28日にずれ込みました。
2013年度の暫定予算
2013年度にも同様の経緯で暫定予算が編成されています。この時は5月20日までという長期間の暫定予算が組まれました。いずれのケースも、衆院解散による予算審議の中断が原因です。
長期的な歴史
日本では1972年度から1992年度まで21年連続で予算の年度内成立ができなかった時期があり、そのうち13年で暫定予算が編成されています。予算の「空白期間」が生じた事例は過去に17回あり、最長は1989年度の7日間でした。
高校無償化と暮らしへの影響
高校授業料無償化の拡充内容
2026年4月からの高校授業料無償化の拡充は、多くの家庭にとって大きな関心事です。今回の改正では、所得制限が完全に撤廃され、すべての世帯で高校の授業料支援を受けられるようになります。
支給上限額も現行の年間39万6,000円から45万7,000円に引き上げられる方針です。これにより、国公立・私立を問わず、全国すべての世帯を対象に高校授業料の実質無償化が実現します。教育無償化関連全体では約7,800億円の予算が計上されています。
暫定予算でも実施可能な理由
高校無償化の拡充は暫定予算下でも予定通り4月から実施できる見通しです。これは、制度の法的根拠となる法改正がすでに成立しているか、年度内に成立する見込みであるためです。暫定予算はあくまで予算の執行に関するつなぎ措置であり、法律に基づく制度の開始時期に直接影響するものではありません。
税制改正関連法案の見通し
企業や個人に影響が大きい2026年度の税制改正関連法案についても、年度内成立の公算が大きいとされています。政府は2月に所得税法等の一部を改正する法律案を閣議決定し、国会に提出済みです。2026年4月1日からの施行を予定しており、予算案の成立遅延とは別に審議が進められています。
注意点・今後の展望
野党の動向が焦点
予算審議の行方を左右するのが野党の対応です。立憲民主党は、暫定予算案を編成しなければ審議拒否も辞さない構えを見せています。衆院予算委員会での審査は3月4日から13日にかけて行われ、13日の採決を経て参院に送付される日程が組まれています。
参院では16日から審議入りし、3月31日が予算成立の目標日とされていますが、審議時間の積み上げが不十分との指摘もあり、高市首相の判断が焦点となっています。
暫定予算が組まれた場合の影響
仮に暫定予算が編成された場合でも、日常生活への影響は限定的です。年金や医療費などの義務的経費は暫定予算でも支出されます。ただし、新規の公共事業や補助金事業の一部で開始が遅れる可能性はあります。
過去の事例を見ても、暫定予算の期間は通常数週間から1カ月程度にとどまっており、本予算が成立すれば自動的に解消されます。
まとめ
2026年度の暫定予算は、衆院解散に伴う予算審議の遅延という、過去にも繰り返されてきたパターンで編成が検討されています。11年ぶりという時間の長さが注目を集めていますが、暫定予算は制度として確立された仕組みであり、国民生活への影響は最小限に抑えられる見通しです。
高校授業料の無償化拡充は4月から予定通り実施され、税制改正も年度内に成立する公算が大きい状況です。予算審議の今後の進展と野党の動向に注視しつつ、各家庭や企業は新年度の制度変更に向けた準備を進めておくことが重要です。
参考資料:
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