Research
Research

by nicoxz

イランがUAEフジャイラ港を攻撃、石油供給網への影響

by nicoxz
URLをコピーしました

はじめに

2026年3月14日、アラブ首長国連邦(UAE)東部フジャイラ港がイランによるドローン攻撃を受け、石油積み出し施設で火災が発生しました。この攻撃は、米軍がイランの石油輸出拠点であるカーグ島の軍事施設を空爆したことへの報復とみられています。

フジャイラ港は、ホルムズ海峡を経由せずに石油を輸出できる中東でも数少ない戦略的な港です。この拠点への攻撃は、すでに緊迫化していた中東の石油供給網にさらなる混乱をもたらしています。本記事では、攻撃の詳細と背景、石油市場への影響、そして日本を含む世界経済への波及について解説します。

フジャイラ港攻撃の詳細

ドローン攻撃の概要

フジャイラ首長国のメディア事務局によると、3月14日早朝、イランからUAEに向けて9発の弾道ミサイルと33機のドローンが発射されました。UAE防衛省はこれらの多くを迎撃しましたが、迎撃時に落下した破片がフジャイラ港の石油関連施設に被害を及ぼしました。

メナ・フジャイラ・ターミナルではナフサ貯蔵タンクが損傷を受け、操業停止に追い込まれています。またVopak Horizonターミナルでもバージ(はしけ)運航の再開許可が出ておらず、一部の施設では操業が制限されたままです。

操業再開の状況

攻撃翌日の3月15日には、フジャイラ石油タンカーターミナル(FOTT)のほとんどの貯蔵施設とバースが操業を再開しました。アブダビ国営石油会社(ADNOC)は国際パートナーに対し、3月積みのムルバン原油の一部をフジャイラから積み出せると通知しています。

ただし、すべての施設が完全に復旧したわけではなく、段階的な正常化が進められている状況です。CNBCやBloombergの報道によれば、主要バースの大半は稼働しているものの、一部ターミナルは依然として停止中です。

カーグ島攻撃とイランの報復戦略

米軍によるカーグ島空爆

フジャイラ港攻撃の直接的な引き金となったのは、3月13日に米軍が実施したイランのカーグ島への空爆です。カーグ島はイランの石油輸出の約90%を処理する極めて重要な拠点です。

トランプ大統領はこの攻撃について「中東史上で最も強力な爆撃作戦の一つ」と表現し、島内の「すべての軍事目標を完全に破壊した」と主張しました。一方で、石油インフラ自体は「良識のため」攻撃しなかったと述べています。

イランの報復宣言と拡大する標的

イランのアラグチ外相は、米国がUAE領内の「港湾、埠頭、拠点」を利用してカーグ島を攻撃したと主張しました。そのうえで「米企業が保有または出資する地域内のあらゆるエネルギーインフラを攻撃する」と報復を宣言しています。

イランはフジャイラ港を含むUAEの3つの主要港に対して攻撃目標としていると警告し、周辺住民や港湾労働者に退避を呼びかけました。これは、イランが近隣国の非米国資産を公然と脅迫した初めてのケースとして注目されています。

石油市場と世界経済への影響

原油価格の急騰

2月27日に1バレル73ドルだった北海ブレント原油価格は、米国・イスラエルによるイラン攻撃開始後に急騰し、3月8日には一時119ドル台を記録しました。約3年9カ月ぶりの高水準です。

ホルムズ海峡が事実上の封鎖状態にある中、フジャイラ港はホルムズ海峡を迂回できる貴重な代替輸出ルートでした。その拠点が攻撃されたことで、原油供給の不確実性がさらに高まっています。

フジャイラ港の戦略的価値

フジャイラ港はUAE東部のオマーン湾に面しており、アブダビの油田からパイプラインで日量150万〜180万バレルの原油を輸送できます。ホルムズ海峡を通過せずにインド洋へ直接アクセスできるため、海峡封鎖時の代替ルートとして世界的に重要な位置づけにあります。

UAEの原油輸出の50〜70%がフジャイラ経由と推定されており、この拠点の機能低下は世界の石油供給に直接影響を及ぼします。

日本への影響

日本にとってこの事態は極めて深刻です。日本の原油輸入に占める中東依存度は2025年時点で約94%に達しており、ホルムズ海峡を経由した輸入量は全体の約9割にのぼります。輸入先としてはサウジアラビアが約40〜44%、UAEが約39〜46%と、両国で大半を占めています。

ホルムズ海峡の封鎖に加えてフジャイラ港の機能が制限されることは、日本のエネルギー安全保障にとって二重の打撃となります。野村総合研究所の分析では、原油価格の上昇がガソリン価格や電気料金の高騰を通じて家計負担の増大につながると指摘されています。

注意点・展望

紛争の長期化リスク

米国・イスラエルとイランの軍事衝突は2月28日の開戦から3週間目に入っています。Al Jazeeraの報道によれば、開戦以来イランでは少なくとも1,444人が死亡、18,551人が負傷しています。イランはホルムズ海峡でのドローンや機雷を使った抵抗を続けており、事態の早期収束は見通せません。

湾岸諸国への波及

イランの報復攻撃はUAEだけでなく、サウジアラビア、カタール、クウェート、バーレーン、イラク、オマーン、ヨルダンの米国大使館や軍事施設にも及んでいます。湾岸地域全体の安全保障環境が急速に悪化しており、石油供給の安定性に対する懸念が一段と高まっています。

代替ルートの限界

サウジアラビアやUAEはホルムズ海峡を迂回するパイプラインを保有していますが、その輸送能力には制約があります。従来ホルムズ海峡を通過していた日量約1,650万バレルの原油輸送量をすべてカバーすることは困難です。フジャイラ港の完全復旧が遅れれば、代替ルートの限界がさらに露呈することになります。

まとめ

イランによるUAEフジャイラ港へのドローン攻撃は、米軍のカーグ島空爆への報復として実行されました。フジャイラ港の主要施設は操業を再開しつつありますが、一部ターミナルは依然として停止中であり、完全復旧には時間がかかる見通しです。

ホルムズ海峡の事実上の封鎖に加え、代替ルートであるフジャイラ港の機能低下は、世界の石油供給に深刻な不確実性をもたらしています。特に中東への原油依存度が極めて高い日本にとって、エネルギー安全保障の観点から注視すべき事態が続いています。今後の停戦交渉の行方と、湾岸地域全体の安定回復がカギとなります。

参考資料:

関連記事

最新ニュース