レーザーテック急伸14%高、GS目標株価5万円に
はじめに
半導体検査装置大手のレーザーテック(6920)の株価が3月10日、前日比14.42%高の3万4740円まで急伸しました。この大幅反発の主因は、ゴールドマン・サックス証券が投資判断を「中立」から「買い」に格上げし、目標株価を2万8000円から5万円へ大幅に引き上げたことです。
9日の米国市場でハイテク株が上昇した流れも追い風となりました。本記事では、格上げの根拠となった新製品戦略や、レーザーテックの事業展望について解説します。
ゴールドマン・サックスの格上げ詳細
投資判断と目標株価の変更
ゴールドマン・サックス証券は3月9日付のレポートで、レーザーテックの投資判断を「ニュートラル(中立)」から「バイ(買い)」に引き上げました。同時に目標株価を2万8000円から5万円へと、約79%の大幅な引き上げを行っています。
3月10日時点の株価3万4740円に対し、目標株価5万円は約44%の上昇余地を示唆しています。米系大手証券によるこの強気な見方が、市場に大きなインパクトを与えました。
格上げの根拠:新製品A200HiTへの期待
格上げの核心にあるのが、レーザーテックの新型EUVマスク欠陥検査装置「ACTIS A200HiT」への高い期待です。ゴールドマン・サックスは、2027年6月期以降、A200HiTが先端ロジックおよびファウンドリのウェハファブ(半導体製造工場)で本格的に採用される可能性を評価しました。
A200HiTは2025年10月に発表された最新モデルで、従来機A150と比較して検査速度が約3倍に向上しています。光学系の最適化と検査システムの刷新により、ウェハファブで発生する全ての転写性欠陥を検出する高い感度を実現しています。
レーザーテックの事業構造と強み
EUVマスク検査装置で独占的地位
レーザーテックの最大の強みは、EUV(極端紫外線)露光向けマスク欠陥検査装置において、世界で独占的なシェアを持っていることです。半導体の微細化が進む中、EUV露光装置を使った生産ラインでは、フォトマスク上の微細な欠陥を検出する検査工程が不可欠です。
現在、EUV露光装置を使う全ての生産ラインのマスクショップで、レーザーテックの「ACTIS A150」が使用されています。この独占的な立場は、同社の収益基盤を支える最大の要因です。
半導体微細化の恩恵を受けるビジネスモデル
半導体の回路線幅が微細になるほど、マスク上の欠陥が製品歩留まりに与える影響は大きくなります。AIチップの需要拡大に伴い、TSMCやSamsungなどの先端ファウンドリはEUV露光工程をさらに拡大しています。
レーザーテックは、この半導体微細化のトレンドから構造的な恩恵を受ける立場にあります。新製品A200HiTの投入は、検査の高速化とコスト低減を実現し、顧客であるウェハファブの生産性向上に直結します。
業績動向と市場環境
2026年6月期の業績見通し
レーザーテックの2026年6月期中間決算は、売上高1282億円(前年同期比0.6%減)、営業利益630億円(同1.1%減)と、ほぼ横ばいの結果でした。ただし経常利益は651億円(同4.3%増)、純利益は457億円(同5.6%増)と増益を達成しています。
通期では売上高2200億円(前期比12.5%減)、営業利益1000億円(同18.6%減)と減収減益の見通しを据え置いています。装置ビジネス特有の受注サイクルにより、一時的な踊り場にある状況です。
米ハイテク株高の追い風
3月10日の急伸には、前週末の米国市場でハイテク株が全般的に上昇した流れも寄与しています。NVIDIAをはじめとする半導体関連銘柄が買われたことで、日本の半導体関連株にも見直し買いが広がりました。
レーザーテックは年初来で株価が低迷していたこともあり、ゴールドマン・サックスの格上げが割安感の修正を促すきっかけとなった形です。
注意点・展望
受注動向が鍵を握る
レーザーテックの株価にとって最も重要な指標は、受注動向です。A200HiTの本格的な受注は2027年6月期以降と見込まれており、実際の採用状況を確認するまでには時間がかかります。ゴールドマン・サックスの強気見通しは、あくまで「将来の期待」に基づいたものであり、受注が計画通りに進まない場合のリスクも認識しておく必要があります。
装置ビジネスは大型案件の受注タイミングにより業績が大きく変動するため、四半期ごとの受注額の推移を注意深く見守ることが重要です。
競合リスクと技術革新
現在、EUVマスク検査装置ではレーザーテックが独占的な地位を占めていますが、半導体業界の技術革新のスピードは速く、新たな競合の参入可能性は常に存在します。KLAテンコールなどの大手半導体装置メーカーが同分野に本格参入する可能性にも留意が必要です。
一方で、次世代のHigh-NA EUV露光への移行に伴い、マスク検査の重要性はさらに高まるとみられ、レーザーテックの技術優位性が維持される可能性も高いです。
まとめ
レーザーテックの株価急伸は、ゴールドマン・サックスによる投資判断の格上げと目標株価5万円への引き上げが直接的な要因です。新製品A200HiTへの期待が格上げの根拠であり、半導体の微細化とAI需要の拡大という長期トレンドが同社の成長を支えています。
短期的には受注動向と業績の回復が注目ポイントとなります。EUVマスク検査装置という独占市場でのポジションを持つレーザーテックが、新製品投入で次の成長フェーズに入れるか、今後の四半期決算と受注実績に注目です。
参考資料:
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