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by nicoxz

マレーシアのテック人材給与が日本超え、背景と影響

by nicoxz
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はじめに

英人材サービス大手ヘイズが発表した「2026年ヘイズアジア給与ガイド」で、マレーシアの主要IT人材の給与水準が初めて日本を上回ったことが明らかになりました。アジア5カ国・地域(中国、香港、日本、シンガポール、マレーシア)の1,200超職種を対象にした調査で、トップIT人材や一部の製造業においてマレーシアが日本を逆転する結果が出ています。

この背景には、半導体やAI関連の大規模投資によるマレーシアの急速な経済成長があります。一方で、日本のIT人材の給与水準はアジア主要国の中で相対的に低迷しており、成長領域での人材確保に遅れを取るリスクが高まっています。本記事では、調査結果の詳細とその背景、日本への影響について解説します。

ヘイズ調査が示す給与逆転の実態

アジア5カ国・地域の比較結果

ヘイズの調査は、2025年12月末時点のデータに基づき、約13,000人の社会人を対象に実施されました。今年で19冊目となるこの年次調査は、アジアの人材市場における最も包括的な給与ベンチマークの一つです。

調査結果によると、CTOなどIT業界の幹部クラスの年収において、マレーシアが日本を上回るケースが確認されました。中国、香港、シンガポールではすでに多くの職種で日本を上回っていましたが、これまで日本より給与水準が低いとされてきたマレーシアにおいても逆転が起きたことは、大きな転換点です。

昇給率でもマレーシアがトップ

過去12カ月間における昇給率の比較でも、マレーシアの優位性は明確です。6%以上の昇給を受けた割合はマレーシアが30%で最も高く、中国(20%)、香港(19%)、シンガポール(18%)、日本(14%)と続きます。マレーシアの昇給率は日本の2倍以上であり、テック人材の獲得競争が給与を急速に押し上げている現状がうかがえます。

さらに、アジア5カ国・地域のうち「給与に不満」と回答した割合は日本が最も高いという結果も出ています。日本の働き手の不満が際立つ状況は、人材流出のリスクを示唆しています。

マレーシアの急成長を支える大規模投資

テック大手による巨額投資の集中

マレーシアがテック人材の給与水準を急速に引き上げている最大の要因は、グローバルテック企業による大規模なインフラ投資です。マレーシアには150億ドル(約2兆2,500億円)を超えるテック企業からの投資コミットメントが集まっています。

Microsoftは22億ドル(約3,300億円)を投じ、クアラルンプール首都圏とジョホール州にハイパースケールデータセンターを3カ所建設しています。2025年11月には、ジョホール州に第2のクラウドリージョン「Southeast Asia 3」を設立する計画も発表しました。Googleも約20億ドル(約3,000億円)規模の投資を進め、ジョホール州とセランゴール州に新たなデータセンターを建設しています。

NVIDIAもマレーシアの大手コングロマリットYTLとの提携を通じ、AI対応型の大規模キャンパスの構築を進めています。これらの投資がマレーシアを東南アジアにおけるデジタルハブとしての地位に押し上げています。

半導体・AIが生む人材需要

マレーシアのデータセンター市場は2025年の61.4億ドルから2031年には114億ドルへと成長が見込まれており、年平均成長率は10.86%に達します。政府も2026年予算でデジタル省に13.6億リンギット(約4,500億円)を配分し、AI関連の産業育成を積極的に支援しています。

アジア太平洋データセンター協会の推計では、マレーシアのAI産業は2030年までに年間30,900人の雇用を創出する見通しです。ネットワークエンジニアやデータスペシャリスト、クラウドインフラ専門家など、高付加価値人材の需要が急増しており、これが給与の上昇圧力につながっています。

日本のIT人材が直面する構造的課題

国際比較で見る給与水準の低迷

日本のIT人材の給与が相対的に低い状況は、以前から指摘されてきました。ある国際調査によると、日本のITエンジニアの平均年収は69カ国中59位と低迷しています。米国と比較すると約3分の1、中国と比較しても約6割程度にとどまるとされ、G7諸国の中でも突出して低い水準です。

日本のソフトウェアエンジニアの平均年収は約569万円ですが、AIや機械学習のエンジニアに限れば中央値が1,050万円、上位層は1,350万円に達します。専門分野による格差は広がっていますが、全体としてグローバル水準には追いついていません。

深刻化する人材不足

経済産業省の推計では、日本のIT人材不足は2030年に最大79万人に達する可能性があります。給与水準の低さは海外からの優秀な人材受け入れの障壁にもなっており、レガシーシステムの運用保守にリソースが偏重する傾向が、クラウドやAIなど成長分野での競争力を弱めています。

外資系企業に勤務する外国籍ITエンジニアの年収は、日本企業に勤務する国内人材より約60%高いというデータもあります。この格差は、日本のテック業界全体の報酬体系が国際水準から乖離していることを示しています。

注意点・展望

単純比較には注意が必要

マレーシアが日本を上回ったのは「トップIT人材」や「幹部クラス」といった一部の職種であり、IT業界全体の平均給与でマレーシアが日本を上回ったわけではありません。また、生活費や税制、福利厚生などを含めた総合的な報酬パッケージでは異なる結論になる可能性もあります。

今後の見通し

ヘイズ・ジャパンのマネージング・ディレクターは「マレーシアをはじめとする東南アジア市場の急速な台頭は目覚ましく、特定の専門職においてはこれらの市場の給与水準が日本を上回り始めている事実は、もはや見過ごすことはできません」とコメントしています。

マレーシアではGoogle、Microsoft、NVIDIAなどによる投資が今後も継続する見通しであり、AI・半導体分野を中心にテック人材の需要と給与はさらに上昇する可能性があります。日本がこの流れに対応できなければ、アジアにおけるテック人材の獲得競争で一層不利な立場に追い込まれることになります。

まとめ

2026年ヘイズアジア給与ガイドは、マレーシアのテック人材給与が日本を初めて上回ったという象徴的な結果を示しました。半導体やAIへの巨額投資がマレーシアの人材市場を急速に拡大させる一方、日本はIT人材の給与停滞と深刻な人材不足という構造的課題を抱えています。

日本の企業や政策立案者にとっては、グローバル水準の報酬体系の整備、AI・半導体など成長分野への投資加速、そして海外人材の受け入れ環境の改善が急務です。アジアの人材市場における日本の競争力回復に向けた具体的な対応が求められています。

参考資料:

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