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by nicoxz

DRAM価格が1年で9倍に高騰、AI用シフトで汎用品が枯渇

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はじめに

半導体メモリーの一種であるDRAMの価格高騰が止まりません。指標品の2月の大口取引価格は前月比15%上昇し、1年前と比較すると約8.8倍という異常な水準に達しています。背景にあるのは、韓国サムスン電子やSKハイニックス、米マイクロン・テクノロジーといったメモリ大手が、利益率の高いAI向け高帯域幅メモリ(HBM)に生産資源を集中させていることです。

その結果、PC・スマートフォン・家電向けの汎用DRAMの供給が大幅に減少し、需要家である各メーカーは深刻な調達難に直面しています。本記事では、DRAM価格高騰の構造的な要因と、産業界への影響、そして今後の見通しを詳しく解説します。

AI向けHBMシフトがもたらす構造的供給不足

メモリ3社の生産戦略転換

世界のDRAM市場はサムスン電子、SKハイニックス、マイクロン・テクノロジーの3社で約95%のシェアを占める極度の寡占市場です。この3社がそろって生産戦略を大きく転換したことが、現在の価格高騰の根本原因となっています。

AI向けのHBM(High Bandwidth Memory)は、通常のDRAMと比較して数倍の利益率を実現できるため、各社は製造ラインをHBMに優先的に割り当てています。調査会社トレンドフォースの分析によれば、2026年にはAI関連がグローバルDRAMウェーハ生産能力の約20%を消費する見通しです。HBMやGDDR7など高付加価値メモリが生産設備を占有することで、汎用品に回せる製造能力が構造的に縮小しています。

売り切れ状態のAIメモリ

事態の深刻さを物語るのが、各社の受注状況です。マイクロンは2026年分のHBM生産能力がすでに完売していると発表しています。SKハイニックスも2026年の全RAM生産能力について需要を確保済みとしており、追加供給の余地はほとんどありません。

CNBCの報道によれば、AI向けメモリは文字通り「売り切れ」状態にあり、NVIDIAなどのAIチップメーカーが大量に確保しています。この需給ギャップは、AIインフラへの投資が続く限り容易には解消されない構造となっています。

汎用DRAM市場への深刻な影響

価格高騰の実態

汎用DRAMの価格上昇は急激です。サムスンは2026年1月から全グレード・全仕様の製品において最大80%の値上げを実施しました。DDR5メモリモジュールの契約価格は、2025年初頭のユニットあたり約7ドルから19.5ドル以上へと、100%を超える上昇を記録しています。

32GB DDR5モジュールの小売価格は、2025年9月時点の149ドルから239ドルへと60%上昇しました。トレンドフォースの予測では、2026年第1四半期の平均DRAM価格は前四半期比で50〜55%の上昇が見込まれており、値上がりの勢いは衰えていません。

家電・PCメーカーの苦境

価格高騰の影響は、最終製品を製造するメーカーに直撃しています。特に深刻なのがテレビなどの家電分野です。300ドル程度のテレビに搭載されるメモリのコストが、従来の1.5ドルから20ドルへと跳ね上がっているとの報告もあります。フラッシュメモリコントローラー大手Phison TechnologyのCEOは、2026年末までに多数の家電メーカーが倒産または事業撤退に追い込まれる可能性があると警告しています。

PC市場では、平均販売価格が2026年に6〜8%上昇する見通しで、出荷台数は前年比最大9%減少すると予測されています。IDCの分析では、メモリ不足がPC・スマートフォン市場の双方に深刻な影響を及ぼすとされています。

スマートフォンへの波及

スマートフォン市場にも大きな変化が起きています。中価格帯のスマートフォンでは、メモリがコストに占める割合が大きいため、OEMメーカーはスペックの引き下げと価格の引き上げを同時に迫られています。一部の分析では、2026年にはスマートフォンの搭載メモリ容量が縮小する「スペック後退」が始まる可能性も指摘されています。16GBメモリを搭載した端末が減少し、一部モデルでは4GBに逆戻りするシナリオさえ議論されています。

注意点・展望

DRAM価格の正常化には相当の時間を要する見通しです。新たな生産能力が本格稼働するのは2027年後半から2028年にかけてとされており、それまでは需給逼迫が続く可能性が高いと考えられています。

ただし、3社の戦略には微妙な違いがあります。SKハイニックスとマイクロンがHBMに積極的にシフトしているのに対し、サムスンは汎用メモリを含む幅広い製品ポートフォリオを維持する姿勢を見せています。このバランス戦略は、汎用DRAM市場でサムスンに強い価格決定力を与える可能性があります。

OpenAIの「スターゲート」計画をはじめとする大規模AIインフラ投資が相次ぐ中、AI向けメモリ需要の拡大は当面続く見込みです。消費者や企業にとっては、PCやサーバーの購入計画を前倒しするか、メモリ容量の見直しを検討するなど、戦略的な対応が求められる局面です。

まとめ

DRAM価格の異常な高騰は、メモリ大手3社がAI向けHBMに生産をシフトした結果、汎用品の供給が構造的に不足していることが根本原因です。価格は1年で約9倍に跳ね上がり、PC・スマートフォン・家電メーカーは調達難と収益悪化に直面しています。

正常化は2027〜2028年まで見込めず、この「メモリ争奪戦」はしばらく続く見通しです。AI時代の恩恵と引き換えに、消費者はデバイス価格の上昇という形でそのコストを負担することになりそうです。最新の市場動向を注視しながら、調達戦略や購入計画の見直しを検討することをおすすめします。

参考資料:

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