モペットを電動自転車と偽り販売、不正の実態と対策
はじめに
運転免許が必要なペダル付き電動バイク「モペット」を、免許不要の電動アシスト自転車と偽って販売する不正が相次いで発覚しています。2026年3月13日、警視庁交通捜査課は東京都内の輸入販売会社「レガリス」の社長ら5人を、不正競争防止法違反(誤認惹起表示)や詐欺の疑いで書類送検しました。
同社は4500台以上を販売し、売上は15億円以上に達するとみられています。外見上の区別がつきにくいことから、自転車と思い込んで購入した消費者が無免許のまま公道を走行し、交通事故を引き起こすケースも発生しています。本記事では、事件の詳細と、消費者が身を守るために知っておくべきポイントを解説します。
事件の全容:15億円規模の偽装販売スキーム
「バイク王」への詐欺と大規模流通
レガリスの社長(49)と役員らは、2021年から2025年にかけて、アメリカ製のペダル付き電動バイク「スーパー73」や「アルコン」を電動アシスト自転車と装い、中古バイク販売大手「バイク王&カンパニー」に239台を販売しました。この取引で約4800万円をだまし取った疑いがもたれています。
販売サイトでは「日本仕様で道路交通法に準ずるアシスト比率」などと記載し、国内で合法に走行できる電動アシスト自転車であるかのように見せかけていました。バイク王側はこの表示を信じて仕入れ、一般消費者に再販売していたとされています。
社内では「全員が認識」
注目すべきは、社内での認識のずれです。社長は「日本の規格に合う車両だと思っていたので、だますつもりはなかった」と容疑を否認しています。一方で、整備責任者の男性は「電動アシスト自転車として販売していた車両はすべて、日本の基準に合わないモペットだと全社員の共通認識だった」と容疑を認めています。
この食い違いは、組織的な偽装販売が行われていた可能性を強く示唆するものです。販売規模は4500台以上、売上は15億円を超えるとみられており、被害は広範囲に及んでいます。
そもそもモペットと電動アシスト自転車は何が違うのか
走行メカニズムの決定的な違い
電動アシスト自転車は、ペダルを漕いだときにモーターが補助的に力を加える仕組みです。ペダルを漕がなければモーターは動きません。また、時速24キロメートルを超えるとアシスト機能が停止するよう法律で定められています。
一方、モペットはアクセル操作だけでモーターが駆動し、ペダルを漕がなくても走行できます。この違いにより、モペットは道路交通法上「一般原動機付自転車」に分類されます。2024年11月に施行された改正道路交通法では、ペダルのみで走行する場合でも原動機付自転車の運転に該当することが明確化されました。
モペットの運転に必要な要件
モペットで公道を走るには、以下の要件をすべて満たす必要があります。
- 運転免許証(普通自動車免許または原動機付自転車免許)
- ナンバープレートの登録・表示
- 自賠責保険への加入
- ヘルメットの着用
- 保安基準への適合(ミラー、ウインカー、ブレーキランプなど)
これらを満たさずに走行した場合、無免許運転であれば3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科されます。
外見では見分けがつかない問題
モペットと電動アシスト自転車は外見が非常によく似ています。特にネット通販では現物を確認できないため、商品説明だけでは判断が困難です。この「見分けにくさ」が不正販売を可能にしている大きな要因です。
警視庁によると、2024年にはモペットが関与する交通事故が68件発生しています。自転車だと思い込んで無免許で走行し、事故を起こした場合、刑事責任や損害賠償の対象となるだけでなく、自賠責保険にも未加入のケースが多く、被害者の救済も困難になります。
購入時に確認すべきポイント
型式認定TSマークを必ずチェック
電動アシスト自転車を安全に購入するための最も確実な方法は、「型式認定TSマーク」の有無を確認することです。このマークは、道路交通法に規定された基準に適合した電動アシスト自転車として、国家公安委員会から認定を受けた製品にのみ貼付されます。
警察庁のウェブサイトでは、型式認定を受けた駆動補助機付自転車の一覧が公表されています。購入前にこのリストと照合することで、不正な製品を避けることができます。
BAAマークも判断の目安に
自転車協会が定めた安全基準に適合した製品には「BAAマーク」が付いています。型式認定TSマークとあわせて、この表示があるかどうかも確認しましょう。
ネット通販では特に注意
今回の事件でも、オンラインの販売サイトを通じた不正が行われていました。ネット通販で電動アシスト自転車を購入する際は、以下の点に注意が必要です。
- 型式認定番号が明記されているか
- メーカーや輸入元が明確か
- 「フル電動」「スロットル走行可能」などの表記がないか
- 極端に安い価格設定ではないか
- 国内正規販売店での取り扱いがあるか
注意点・今後の展望
取り締まり強化の流れ
モペットの不正流通に対し、警察の取り締まりは確実に強化されています。2024年11月の道路交通法改正により、ペダルのみの走行でも原付扱いとなることが明確になり、取り締まりの法的根拠がより明確になりました。今回のレガリスの事件は、販売段階での不正に対しても厳しく対処する姿勢を示したものです。
以前にも2025年に神奈川県警がモペットを自転車と表示して販売した会社幹部を逮捕する事例があり、全国的に販売業者への捜査が進んでいます。
消費者の自衛が不可欠
不正販売は手口が巧妙化しており、行政の取り締まりだけでは完全に防ぐことは困難です。消費者自身が「型式認定TSマーク」などを確認する習慣を持つことが、最も効果的な防衛策です。特に、価格の安さやデザインの魅力だけで判断せず、法的な適合性を第一に考えることが重要です。
まとめ
モペットを電動アシスト自転車と偽って販売する不正が、組織的かつ大規模に行われていた実態が明らかになりました。今回書類送検されたレガリスは4500台以上、15億円超を売り上げており、被害の深刻さがうかがえます。
消費者が身を守るためには、購入時に型式認定TSマークやBAAマークを確認し、信頼できる販売店を利用することが不可欠です。「免許不要」「公道走行可能」といった表示だけを鵜呑みにせず、公的な認定を受けた製品であるかどうかを自分の目で確かめましょう。
万が一、すでに購入した製品がモペットに該当する可能性がある場合は、最寄りの警察署や消費生活センターに相談することをおすすめします。
参考資料:
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