パソナグループ、淡路島観光を本格化へ営業4倍増
はじめに
パソナグループが淡路島の観光事業を大きく転換しようとしています。子会社を「パソナツーリズム」に改称し、営業人員を従来の4倍に拡大。旅行商品の企画から運営までを自社グループ内で一貫して行う体制を構築し、地方創生・観光事業の黒字化を目指します。
同社は2020年に本社機能の一部を淡路島に移転して以来、島の活性化に積極的に取り組んできました。しかし、地方創生・観光事業は営業赤字が続いており、本格的な収益化が課題となっています。2026年はリゾートホテルの開業や万博パビリオンの移設など、大きな転機を迎える年です。
パソナツーリズムの始動と営業体制の強化
社名変更と事業の再定義
パソナグループは2025年12月1日付で、子会社の「All Japan Tourism Alliance」を「パソナツーリズム」に社名変更しました。この社名変更は単なる看板の掛け替えではありません。淡路島を拠点に、農業・食、文化芸術、健康・ウェルビーイングといった地域資源を活かした観光コンテンツを、国内外の旅行市場へ本格展開する体制への移行を意味しています。
パソナグループの中期ビジョンでは、地方創生・観光ソリューションを成長分野として位置づけており、パソナツーリズムはその中核を担う存在です。
営業人員4倍の狙い
営業人員を従来の4倍に引き上げる方針は、これまでの課題を反映しています。淡路島には多様な観光コンテンツがあるものの、それを国内外の旅行会社や団体旅行の企画者に効果的に訴求できていなかった面があります。
営業体制を強化することで、旅行会社との連携を深め、法人向けの団体旅行やインバウンド需要の取り込みを加速させる狙いです。2026年2月からは事業を本格始動しており、3月13日には旅行会社や旅行関連事業者を対象とした第1回「AWAJIファムトリップ」を開催する予定です。
ファムトリップで旅行会社にアピール
ファムトリップ(視察旅行)は、旅行業界では一般的なマーケティング手法です。旅行会社の担当者に実際に現地を体験してもらうことで、商品化を促進します。
パソナツーリズムが企画する「AWAJIファムトリップ」では、淡路島西海岸エリアを中心に、アニメ・カルチャー、禅・ウェルビーイング、滞在型農体験など、多様な観光コンテンツを1日で体感できる視察ツアーを提供します。地域資源事業者・自治体・民間企業との連携により、受入体制まで含めた観光モデルの構築を目指しています。
2026年の大型投資が集中する淡路島
リゾートホテルの開業
2026年6月には、明石海峡大橋のふもとに位置する淡路市岩屋エリアに、パソナグループ初のリゾートホテルがオープンします。敷地面積は東京ドーム約4.5個分と広大で、全室に源泉100%の温泉を楽しめる檜風呂を完備。客室からは明石海峡大橋と神戸の絶景を一望できます。
ホテルのコンセプトは「Well-being(ウェルビーイング)」で、淡路島の自然を活かした健康志向の滞在体験を提供します。国内外の富裕層やウェルネスツーリズムの需要を取り込む戦略です。
万博パビリオンの移設
2025年に開催された大阪・関西万博で人気を博したパソナグループのパビリオン「PASONA NATUREVERSE(ネイチャーバース)」が、2026年春ごろに淡路島に移設されます。さらに、万博で展示されたオランダパビリオンも淡路島への移転が予定されています。
万博のレガシーを淡路島に集約することで、「万博の続きを淡路島で体験できる」という新たな観光動線を生み出す狙いです。万博来場者のリピート訪問を促す効果が期待されます。
日本旅行との連携
パソナグループは大手旅行会社の日本旅行とも連携しています。日本旅行はパソナが設立した「All Japan Tourism Alliance」(現パソナツーリズム)に出資しており、両社の強みを活かした観光分野での新産業創出を目指しています。旅行商品の造成力を持つ日本旅行と、淡路島の観光資源を保有するパソナグループの協業は、事業黒字化に向けた重要な一手です。
黒字化への道筋と課題
赤字からの脱却が急務
パソナグループの地方創生・観光ソリューション部門は、営業赤字が続いてきました。2026年5月期第1四半期(6-8月期)では、同部門の売上高は前年同期比21.5%増の20億8,500万円となり、セグメント損失は3億3,600万円と赤字幅は改善傾向にあります。
しかし、万博出展関連費用として5億2,000万円が計上されたほか、前期末には約48億3,000万円の特別損失も公表されており、投資の回収には時間がかかる見通しです。
成功のカギは集客力
リゾートホテル、万博パビリオン、既存のテーマパーク「ニジゲンノモリ」など、淡路島内のコンテンツは充実しつつあります。課題は、これらの施設に十分な集客を実現できるかどうかです。
営業人員の4倍増とパソナツーリズムの本格始動は、まさにこの集客力の強化を狙った施策です。企画・運営を内製化することで、旅行商品の質と機動性を高め、リピーターの獲得につなげたい考えです。
注意点・展望
パソナグループの淡路島戦略は、リゾートホテル開業や万博パビリオン移設という大型投資と、パソナツーリズムによる営業体制の強化が同時に進む、勝負の年を迎えています。
ただし、淡路島はアクセスの面で課題が残ります。京阪神からは比較的近いものの、首都圏や海外からの誘客には交通手段の整備が不可欠です。インバウンド需要の取り込みに向けては、多言語対応やデジタルマーケティングの強化も求められます。
また、人材派遣を主力とするパソナグループが観光事業で収益を上げるには、異業種参入ならではのノウハウの蓄積も必要です。日本旅行との連携を含め、パートナーシップの活用が黒字化の成否を左右するでしょう。
まとめ
パソナグループは、パソナツーリズムへの社名変更と営業人員の4倍増により、淡路島観光事業の収益化に本腰を入れています。2026年にはリゾートホテルの開業、万博パビリオンの移設、旅行会社向けファムトリップの開催など、大型施策が相次ぎます。
地方創生の先進モデルとして注目される淡路島で、人材サービス大手のパソナグループがどのように観光ビジネスを軌道に乗せるか。営業赤字の解消と持続可能な観光モデルの構築に向けた取り組みの行方に注目です。
参考資料:
関連記事
パソナが健康経営支援に本格参入、3兆円市場へ挑む
パソナグループが企業の健康経営を支援する新サービスを開始。従業員の心身の不調による損失額を可視化し、人材派遣からウェルビーイング事業への転換を加速させています。
大学発クマ対策テクノロジーが拓く共生の道
秋田県立大学が開催した「Bear-Tech Solutionコンテスト」を起点に、AI・ドローン・センサーなど最新テクノロジーによるクマ対策の現在地と今後の展望を解説します。
IR誘致レース再開へ、残り2枠の行方と各地の課題
統合型リゾート(IR)の追加公募が2027年に実施される見通しです。愛知や北海道が申請を検討する中、大阪IRの建設費膨張やギャンブル依存症対策など、残り2枠をめぐる課題と展望を解説します。
東日本大震災15年、産業復興の現在地と課題
東日本大震災から15年。設備復旧は進んだものの、販路喪失や人口減少により被災地の産業自立は道半ばです。公的支援から民間主導への転換の必要性を解説します。
JALとJR東日本が東北で異例の協業、陸空連携の全貌
かつてのライバルであるJALとJR東日本が東北地方の人流創出に向けた連携協定を締結。新幹線と航空機を組み合わせた「立体型観光」やチケット一体化構想など、異例の協業の背景と展望を解説します。
最新ニュース
アクティビストの標的が変化、還元から再編へ
割安株の減少でPBR1倍超え企業も標的に。アクティビストの投資戦略が株主還元から事業再編へとシフトする背景と今後の展望を解説します。
アームが初の自社製チップ発表、AI半導体市場に本格参入
ソフトバンクグループ傘下の英アームが35年の歴史で初めて自社製チップ「AGI CPU」を発表。メタやOpenAIを顧客に迎え、5年で年間150億ドルの売上を目指す戦略転換の全容を解説します。
Armが半導体自前開発に参入、AI向けCPUで事業転換
ソフトバンク傘下の英Armが35年間のIPライセンスモデルを転換し、自社開発チップ「AGI CPU」でメタやオープンAIにAI半導体を直接供給する戦略の背景と影響を解説します。
イビデン大幅続伸の背景と半導体銘柄上昇の全貌
2026年3月25日、イビデンが特別利益491億円の計上発表で大幅続伸。半導体関連銘柄が軒並み上昇した背景には、米イラン停戦期待による原油下落と投資家心理の改善がありました。
イラン強硬派「3人組」の実権と米15項目和平案の行方
ハメネイ師亡き後のイランで実権を握る革命防衛隊出身の強硬派3人組と、トランプ政権が提示した15項目の和平案の内容・交渉の行方を詳しく解説します。