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by nicoxz

PBR1倍割れ脱却が加速、AI関連の素材銘柄が上位に

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はじめに

東京証券取引所が「PBR(株価純資産倍率)1倍割れ」企業に改善を求めてから3年目を迎えた2026年、着実に成果を上げている企業の顔ぶれが明らかになっています。直近1年間のPBR改善幅を調べると、半導体やデータセンター向けの材料を手掛ける企業が上位にランクインしました。

足元では株価が急落する場面もありましたが、AI関連銘柄は相対的に底堅く推移しています。本記事では、PBR改善が進む企業の特徴と、AI関連素材銘柄が評価される背景を解説します。

PBR1倍割れ問題と東証の改革

東証の改善要請の経緯

東京証券取引所は2023年3月、PBRが継続的に1倍を下回る企業に対し、資本コストや株価を意識した経営計画の策定・開示を求めました。PBR1倍割れとは、株式市場での評価額が会社の解散価値を下回る状態を意味し、「企業として存続するよりも解散した方が株主にとって得」と市場が判断していることを示します。

この要請は日本株市場の構造変化を促す最も強力なドライバーとなり、多くの企業が自社株買い、増配、事業ポートフォリオの見直しなどの対応策を打ち出しています。

2026年は「最終局面」

東証の改善要請から3年目にあたる2026年は、いよいよ「本気で改善しない会社は投資家から見放される」最終局面です。中期経営計画でPBR1倍超を掲げる企業が増加し、三井住友トラスト・ホールディングスや大日本印刷などが具体的な目標を設定しています。

AI関連素材銘柄の躍進

三井金属:AI銅箔で異例の高評価

PBR改善銘柄の代表格が三井金属鉱業です。同社は世界のAIデータセンターを支える極薄銅箔「MicroThin」の製造で圧倒的なシェアを持ちます。AIサーバーの高性能化に不可欠な基板材料を事実上独占しつつある状況で、2026年3月期の経常利益を1200億円(前年比55.8%増)へ上方修正し、配当も240円へ大幅に増額しています。

2026年2月時点のPBRは約4.18倍に達しており、日本の素材産業としては異例の高評価です。かつてのPBR1倍割れ企業が、AI需要の爆発的成長を取り込むことで、株式市場から全く異なる評価を受けるようになった好例です。

レゾナック:先端半導体向け材料が牽引

レゾナック・ホールディングスも注目される改善銘柄です。2025年12月期の半導体・電子材料セグメントは、売上高5063億円(前年比14%増)、営業利益1084億円(同47%増)と大幅な増益を達成しました。

特に後工程材料はAI用先端半導体向けの販売が拡大し、AI関連製品の売上比率は20%まで上昇しています。データセンター向けHDD用材料も堅調で、デバイスソリューション事業は売上高1224億円(同15%増)を記録しました。2026年12月期は半導体関連事業のさらなる成長が見込まれています。

AI関連銘柄が底堅い理由

構造的な需要成長

AI関連銘柄が株価下落局面でも底堅い動きを見せる背景には、構造的な需要成長があります。世界のAIデータセンター投資は急速に拡大しており、Microsoft、Google、Amazonなどのテック大手が巨額の設備投資を発表しています。これらの投資は短期的な景気変動に左右されにくく、半導体材料への安定した需要を生み出しています。

日本企業の競争優位性

日本の素材企業は、AIサーバーに使われる先端半導体パッケージング材料やHDD用材料などのニッチ分野で高い技術力を持ちます。三井金属の極薄銅箔やレゾナックの後工程材料は、世界的に代替が困難な製品であり、価格競争に陥りにくいという強みがあります。

この技術的な「堀(モート)」が、市場全体が不安定な局面でもAI関連素材銘柄への評価を支えています。

注意点・展望

PBR改善は必ずしもすべての企業で持続するとは限りません。一時的な自社株買いや特別配当でPBRを引き上げても、本業の収益力が伴わなければ再びPBR1倍割れに逆戻りするリスクがあります。投資家としては、PBRの数値だけでなく、改善の持続可能性を見極めることが重要です。

また、AI関連銘柄についても過度な期待は禁物です。AIサーバー投資の成長ペースが鈍化すれば、素材企業の業績にも影響が及ぶ可能性があります。足元のAI投資ブームがいつまで続くかは不透明であり、分散投資の観点も忘れてはなりません。

まとめ

東証の改善要請から3年目を迎え、PBR1倍割れからの脱却に成功する企業が増えています。特に三井金属やレゾナックのようなAI関連素材銘柄は、半導体やデータセンター向け材料の需要拡大を背景に株価が大きく見直されました。AI時代の到来は、従来「オールドエコノミー」とされていた素材企業にも変貌の機会をもたらしています。投資判断にあたっては、PBR改善の持続可能性と本業の競争力を慎重に見極めることが求められます。

参考資料:

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