トランプ氏、欧州にホルムズ協力を継続要求
はじめに
レビット米大統領報道官は3月18日、トランプ大統領がホルムズ海峡の安全確保を巡って欧州の同盟国に協力を引き続き要求していく方針を明らかにしました。トランプ氏は前日の17日に、NATOや日本の支援は「必要ない」と不満を表明したばかりであり、発言の揺れが注目を集めています。
この問題の背景には、2月末の米国・イスラエルによるイラン攻撃後に発生したホルムズ海峡の事実上の封鎖があります。世界の炭化水素需要の約5分の1が通過する海峡の閉鎖は、国際エネルギー市場に深刻な混乱をもたらしています。
欧州同盟国の拒否と米国の対応
NATO各国が相次ぎ拒否
トランプ大統領は3月14日以降、NATO加盟国や中国、日本、韓国に対し、ホルムズ海峡の安全確保のため軍艦を派遣するよう求めてきました。しかし、欧州主要国からは相次いで拒否の回答が返ってきています。
ドイツのピストリウス国防相は「これは我々の戦争ではない。我々が始めたものではない」と明言しました。スペインのロブレス国防相も「スペインは一切の暫定的措置を受け入れない」と完全拒否の立場を示しています。英国のスターマー首相は「実行可能な計画」を検討中としながらも、NATO任務としての参加は否定しました。ポーランドも大統領が軍の参加を否定するなど、欧州全体で拒否ムードが広がりました。
EU加盟国は、紅海で活動中の欧州海軍部隊の管轄をホルムズ海峡にまで拡大する提案も退けています。
トランプ氏の矛盾する発言
3月17日、各国からの拒否を受けたトランプ氏は「もう彼らの助けは必要ない」と発言し、単独行動を示唆しました。フィナンシャル・タイムズ紙とのインタビューでは、NATOの将来は「非常に暗い」と警告する一方、自力で海峡を確保する姿勢も見せていました。
しかし翌18日、レビット報道官はホワイトハウスで記者団に対し「欧州そしてアラブ地域の同盟国と引き続き協議する予定だ」と発言を修正。トランプ氏自身も同盟国に対して協力を求め続けるとの方針が示されました。
レビット報道官は、これらの国々が「米国のイラン脅威排除という軍事行動から大きな恩恵を受けている」と指摘し、協力は当然の義務であるとの認識を示しています。
背景にあるエネルギー危機の深刻化
原油価格の高騰
ホルムズ海峡の封鎖により、ブレント原油は1バレル約105ドルまで上昇し、紛争開始前から40%以上の値上がりとなっています。1970年代の石油危機以来、最大規模のエネルギー供給途絶と形容される事態です。
欧州にとっても中東産原油・天然ガスの供給途絶は深刻な問題です。にもかかわらず軍事的関与を拒否する背景には、イラン紛争への参加がさらなるエスカレーションを招きかねないとの懸念があります。
同盟国間の溝
トランプ大統領はウクライナ支援へのNATOの関与とホルムズ海峡問題を関連付け、圧力を強化しています。「小さな取り組み、つまり海峡を開いておくだけのことだ」と協力のハードルの低さを強調しましたが、欧州各国はこれを「米国が自ら始めた戦争への巻き込み」と捉えています。
この対立は、米国と欧州の安全保障認識の根本的な相違を浮き彫りにしています。
注意点・今後の展望
協力の枠組みが焦点に
レビット報道官の発言は、トランプ氏の「不要」発言を事実上撤回し、外交ルートでの協力協議を続ける姿勢を明確にしたものです。今後は、軍事的な直接参加ではなく、資金拠出、情報共有、人道支援といった代替的な協力の枠組みが議論の中心になる可能性があります。
NATOの結束への影響
ホルムズ海峡問題を巡る対立がNATOの結束に長期的な影響を与えるリスクがあります。トランプ氏がNATOへの関与を条件付きにする姿勢を強めれば、欧州の安全保障体制そのものが揺らぐ事態も想定されます。エネルギー安全保障と軍事同盟のバランスが問われる局面が続きます。
まとめ
トランプ大統領のホルムズ海峡協力要請は、欧州各国の拒否にもかかわらず継続される方針です。レビット報道官の発言は、17日の「不要」発言を軌道修正し、外交的な協力要請を続ける意思を示したものといえます。
エネルギー危機の長期化が避けられない中、米国と欧州の間でどのような協力の枠組みが形成されるかが、国際秩序とエネルギー市場の安定を左右する重要なポイントとなります。
参考資料:
- Rebuffed by allies, Trump now says U.S. doesn’t need help defending the Strait of Hormuz
- European leaders rebuff Trump’s call to open Strait of Hormuz
- European allies tell Trump ‘nein,’ ‘non’ and ‘no’ on help to force open Hormuz Strait
- Trump demands NATO and China police the Strait of Hormuz
- NATO allies refuse Trump’s Strait of Hormuz warship request as oil soars
関連記事
ホルムズ海峡護衛に欧州が慎重論を示す背景
トランプ大統領がホルムズ海峡への艦船派遣を同盟国に要請する中、英独仏やEUが慎重姿勢を崩さない理由と、原油価格高騰が世界経済に与える影響を解説します。
トランプ氏がNATO・日本の支援「不要」と表明した背景
トランプ大統領がイラン軍事作戦でNATOや日本の支援は不要と宣言。ホルムズ海峡への艦船派遣要請を拒否した同盟国への不満と、米国単独行動主義の行方を解説します。
トランプ訪中延期示唆、ホルムズ海峡で中国と欧州に圧力
トランプ大統領が3月末の訪中延期を示唆。ホルムズ海峡の安全確保をめぐり中国や欧州に艦船派遣を要求し、NATO同盟関係にも警告を発しました。背景と各国の対応を解説します。
イラン強硬派「3人組」の実権と米15項目和平案の行方
ハメネイ師亡き後のイランで実権を握る革命防衛隊出身の強硬派3人組と、トランプ政権が提示した15項目の和平案の内容・交渉の行方を詳しく解説します。
イランが米停戦案を拒否し5条件を逆提案した背景
トランプ政権の15項目停戦計画をイランが拒否。ホルムズ海峡の主権や戦争賠償など5条件を逆提案した経緯と、中東情勢・原油市場への影響を解説します。
最新ニュース
アクティビストの標的が変化、還元から再編へ
割安株の減少でPBR1倍超え企業も標的に。アクティビストの投資戦略が株主還元から事業再編へとシフトする背景と今後の展望を解説します。
アームが初の自社製チップ発表、AI半導体市場に本格参入
ソフトバンクグループ傘下の英アームが35年の歴史で初めて自社製チップ「AGI CPU」を発表。メタやOpenAIを顧客に迎え、5年で年間150億ドルの売上を目指す戦略転換の全容を解説します。
Armが半導体自前開発に参入、AI向けCPUで事業転換
ソフトバンク傘下の英Armが35年間のIPライセンスモデルを転換し、自社開発チップ「AGI CPU」でメタやオープンAIにAI半導体を直接供給する戦略の背景と影響を解説します。
イビデン大幅続伸の背景と半導体銘柄上昇の全貌
2026年3月25日、イビデンが特別利益491億円の計上発表で大幅続伸。半導体関連銘柄が軒並み上昇した背景には、米イラン停戦期待による原油下落と投資家心理の改善がありました。
イラン強硬派「3人組」の実権と米15項目和平案の行方
ハメネイ師亡き後のイランで実権を握る革命防衛隊出身の強硬派3人組と、トランプ政権が提示した15項目の和平案の内容・交渉の行方を詳しく解説します。