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by nicoxz

トランプ氏がスペインとの貿易断絶を威嚇、イラン攻撃協力拒否で対立激化

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はじめに

2026年3月3日(米国時間)、トランプ米大統領がスペインに対して「すべての貿易を断つ」と威嚇する異例の発言を行いました。きっかけは、米国とイスラエルによる対イラン軍事作戦「オペレーション・エピック・フューリー」において、スペインが自国内の米軍基地の使用を拒否したことです。トランプ氏はドイツのメルツ首相とのホワイトハウスでの会談中に記者団に向けてこの発言を行い、ベッセント財務長官に対し「スペインとのあらゆる取引を停止するよう指示した」と述べました。NATO加盟国間でこれほど露骨な貿易威嚇が行われるのは極めて異例であり、米欧関係に新たな亀裂を生じさせています。

スペインが基地使用を拒否した経緯

米・イスラエルによるイラン攻撃と「オペレーション・エピック・フューリー」

2026年2月28日、米国とイスラエルはイランに対する大規模な共同軍事作戦を開始しました。米国側は「オペレーション・エピック・フューリー」、イスラエル側は「オペレーション・ローリング・ライオン」というコードネームを使用し、イランの軍事施設や主要拠点への攻撃を実施しました。

この作戦に際して、米軍はスペイン南部に位置するロタ海軍基地とモロン空軍基地の使用を求めました。両基地は米西両国が共同運用しており、地中海から中東方面への米軍展開において戦略的に重要な拠点です。しかし、スペインのサンチェス首相率いる左派政権は、これらの基地使用を全面的に拒否しました。

スペイン政府の立場

スペインのロブレス国防相は記者会見で「ロタ基地およびモロン基地からは、いかなる種類の支援も全く提供されていない」と明言しました。さらにアルバレス外相も、基地の使用は二国間防衛協定および国連憲章に合致する活動に限られるべきだとの見解を示しました。

サンチェス首相自身も米国およびイスラエルによるイラン攻撃を「国際法違反」と非難し、米・イラン双方に事態の沈静化を呼びかけていました。スペイン政府の姿勢は「戦争には加担しない」という原則に基づくものであり、サンチェス首相は「世界にとって悪であり、われわれの価値観と利益に反することに、報復を恐れて加担することはしない」と宣言しています。

米軍の対応

スペインの基地使用拒否を受けて、米軍は少なくとも15機の航空機(空中給油機を含む)をロタおよびモロンの両基地からドイツのラムシュタイン基地へ移動させました。この再配置は作戦上の影響を最小限に抑えるためのものでしたが、トランプ大統領の怒りをさらに増幅させる結果となりました。

トランプ氏の貿易威嚇とその実現可能性

ホワイトハウスでの発言内容

トランプ氏はドイツのメルツ首相との会談の場で、スペインに対する強い不満を表明しました。「スペインはひどい対応をした」と述べた上で、「スペインとのすべての貿易を断つ。今日や明日にでも実行できる」と威嚇しました。さらに「スコット(ベッセント財務長官)にスペインとのすべての取引を停止するよう指示した」と具体的な指示にも言及しています。

トランプ氏はまた、NATO防衛費の問題にも触れ、「スペインはNATOでGDP比5%の防衛費に同意しなかった唯一の国だ」と批判しました。実際にスペインは2025年6月のNATO首脳会議で、他の31か国が2035年までにGDP比5%を目指すことに合意した中、唯一の例外としてGDP比約2.1%にとどめる特別措置を獲得していました。トランプ氏は「2%すら支払っていないのに」と不満をあらわにしています。

メルツ首相の反応

同席していたドイツのメルツ首相は、トランプ氏のスペイン批判に同調する姿勢を見せました。スペインの防衛費増額について「これが彼らを説得するきっかけになるべきだ」と述べ、NATO加盟国としての責任を果たすようスペインに促しました。

貿易断絶は実現可能か

しかし、トランプ氏の「スペインとの全面的な貿易断絶」という威嚇は、実現には大きな障壁があります。最大の理由は、EU加盟国であるスペインは独自の通商政策を持たないという点です。スペイン政府関係者は「スペインには自律的な貿易政策はない。スペインの貿易政策はEUの貿易政策だ」と指摘しています。

米西間の貿易額は2024年時点で約697億ドルに達し、米国がスペインにとって22番目の貿易相手国となっています。内訳は米国からの輸出が約355億ドル、輸入が約342億ドルで、米国側がわずかに貿易黒字を計上しています。スペインとの貿易を一方的に断てば、米国企業にも相応の打撃が及ぶ構造です。

スペインとEUの対応、そして今後の展望

サンチェス首相の反論

トランプ氏の威嚇に対し、サンチェス首相は毅然とした姿勢を崩しませんでした。「戦争にはノーだ」とたった3語で自国の立場を要約し、イラン情勢を「ロシアンルーレット」に例えて危機感を示しました。スペインは米国との「互恵的な」貿易関係にあることを強調し、一方的な断絶は双方にとって不利益であると訴えています。

EU全体の連帯

EUもスペインを支持する姿勢を明確にしました。サンチェス首相はフォンデアライエン欧州委員長およびコスタ欧州理事会議長と電話会談を行い、支持を取り付けました。さらにフランスのマクロン大統領もサンチェス首相に「欧州の連帯」を表明しています。

EU域内では通商政策は共通政策として運営されるため、トランプ氏が一つのEU加盟国だけを標的に貿易措置を取ることは法的にも制度的にも困難です。スペインへの貿易制裁を実行すれば、EU全体との貿易紛争に発展する恐れがあり、その経済的影響は計り知れません。

今後の注視すべきポイント

今回の対立は、単なる基地使用をめぐる二国間問題を超え、NATO同盟内の結束やEUと米国の通商関係にまで影響が波及する可能性を秘めています。特に注目すべきは、トランプ氏が実際に貿易制裁措置を発動するのか、それとも威嚇にとどまるのかという点です。加えて、イラン情勢の推移次第では他のNATO加盟国にも同様の選択が迫られる可能性があり、同盟内の亀裂がさらに広がるリスクも否定できません。

まとめ

トランプ大統領によるスペインへの貿易断絶威嚇は、対イラン軍事作戦での基地使用拒否とNATO防衛費問題が複合的に絡んだ結果です。スペインのサンチェス首相は「戦争にはノー」と明確に反論し、EUも連帯を示しています。EU共通通商政策の枠組みを考えれば、スペイン単独を対象とした貿易断絶の実現は極めて困難です。しかしこの問題は、NATOの結束やEUと米国の関係に深い影を落としており、今後の国際秩序を占う重要な試金石となりそうです。イラン情勢の展開とともに、米欧間の亀裂がどこまで広がるか、引き続き注視が必要です。

参考資料

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