2026年衆院選:各党公約を徹底比較、争点を読む
はじめに
2026年1月27日公示・2月8日投開票の衆議院選挙に向けて、与野党が相次いで公約を発表しています。高市早苗首相は今回の解散を「未来投資解散」と命名し、各党は消費税減税や成長戦略など重要分野で政策を打ち出しています。
今回の選挙では、立憲民主党と公明党が合流して新党「中道改革連合」を結成するという異例の展開も起きています。自民党・維新の与党連合に対し、165人を擁する野党第1党が誕生しました。本記事では、各党の公約を比較し、有権者が投票先を判断する際のポイントを解説します。
自民党の公約
5つの重点施策
自民党は1月21日に公約を発表し、5つの重点施策を柱として掲げました。「強い経済で、笑顔あふれる暮らしを」「地方が日本経済のエンジンに」「わが国を守る責任」「すべての世代の安心と次世代への責任」「時代にふさわしい新しい憲法を」の5本柱です。
経済政策では「責任ある積極財政」を通じて投資と成長の好循環を生み出すとしています。高市内閣が進める17の戦略分野への集中投資や、レアアース等の重要鉱物の安定供給確保、対日外国投資委員会(日本版CFIUS)の創設に向けた法整備を進めるとしています。
消費税と手取り対策
飲食料品を2年間限定で消費税の対象外とすることについて、「国民会議」で財源やスケジュールの検討を加速すると明記しました。また、低所得・中所得層の社会保険料負担の軽減や、所得に応じて手取りが増える「給付付き税額控除」の制度設計を進めるとしています。
政治改革と安全保障
衆議院議員定数の「1割削減」を目標とし、次期国会での法案成立を目指します。政治資金については透明性と公開性を一層強化する方針です。安全保障面では、対外情報機関の設置を含むインテリジェンス機能の強化や、防衛装備品輸出の「5類型」撤廃を掲げています。
日本維新の会の公約
与党連合としての立場
維新は自民党との連立政権合意に基づき、飲食料品の消費税を2年間限定でゼロにすることを掲げています。藤田文武共同代表は「無制限な減税は論外だ。市場から信認を得られない」と指摘し、期限を設ける必要性を強調しました。
社会保障改革
維新の特徴的な政策として、高齢者の医療費窓口負担を現行の「9割引」から原則「7割引」に見直すことがあります。また、年金の抜本改革として世代間格差の生まれない積み立て方式、または最低所得保障制度の導入を提案しています。
その他の重点政策
次世代原子力発電・核融合発電の推進、義務教育に加えて幼児教育と高校での完全無償化の実現、「維新版選択的夫婦別姓制度」の創設などを掲げています。「一票の格差」解消のため、衆議院議員の定数削減や参議院の都道府県選挙区のブロック制への変更も主張しています。
中道改革連合(立憲民主・公明)の公約
新党結成の経緯
立憲民主党と公明党の衆院議員が合流し、1月16日に新党「中道改革連合」(略称「中道」)が設立されました。立民144人、公明21人の計165人が参加し、野田佳彦・斉藤鉄夫両氏が共同代表に就任しています。参議院議員と地方組織は両党がそれぞれ存続します。
綱領の5本柱
新党の綱領は、(1)持続的経済成長への政策転換 (2)新たな社会保障モデル構築 (3)包摂社会の実現 (4)現実的な外交・防衛政策と憲法改正論議の深化 (5)不断の政治改革と選挙制度改革を柱に掲げています。
「対立をあおり、分断を深める政治ではなく、対立点を見極め、合意形成を積み重ね、生活者ファーストの政策を着実に前へと進める中道政治の力が求められている」と述べ、協調と包摂の政治への転換を訴えています。
経済・物価高対策
物価高対策として、食料品にかかる消費税率を恒久的にゼロにすることを今秋から実施すると掲げています。与党の「2年限定」に対し、期間を限定しない「恒久的」な減税を打ち出している点が大きな違いです。赤字国債に頼らない財源確保を前提としています。
国民民主党の公約
第三極としての立ち位置
国民民主党は与党と中道改革連合の双方に距離を置く方針を示しています。玉木雄一郎代表は「与党も野党も政局、選挙が最優先なのか」と双方を批判し、「フリーハンド」を確保する狙いがあります。選挙後の「部分連合」継続に布石を打つ戦略とみられています。
「手取りを増やす」政策
「もっと手取りを増やす」をキャッチフレーズに、「103万円の壁」の打破を前面に掲げています。具体的には、所得税・住民税の基礎控除等を103万円から178万円へ引き上げることを目標としています。また、「社会保険料還付制度」の創設や、再エネ賦課金廃止による電気料金引き下げも主張しています。
教育投資
年5兆円程度の「教育国債」を発行し、子育て予算と教育・科学技術予算を倍増する方針を掲げています。
その他の政党の主張
参政党
参政党は「この国に生まれてきてよかった」と国民が実感できる社会を目指し、7つの分野にまとめた政策を掲げています。消費税廃止を求める立場です。
れいわ新選組・共産党
れいわ新選組の高井崇志幹事長、共産党の小池晃書記局長はそれぞれ「消費税廃止」を求めています。共産党は物価高騰から暮らしを守り、平和で希望がもてる日本を目指すとしています。
日本保守党・社民党
日本保守党の有本香代表代行は「大胆な減税」を、社民党の福島瑞穂党首は「防衛費削減」を主張しています。
争点の比較ポイント
消費税減税の違い
各党の消費税減税スタンスには違いがあります。自民・維新は「2年間限定」で食料品の消費税ゼロを検討、中道改革連合は「恒久的」にゼロを主張、国民民主は年収の壁対策を優先、参政党・れいわ・共産は「消費税廃止」を求めています。
財源論では、自民は「国民会議で検討」、中道改革連合は「赤字国債に頼らない」としていますが、いずれも具体的な財源の道筋は不透明な状況です。
成長戦略の方向性
与野党とも国内投資の後押しによる経済再生を掲げていますが、手法には違いがあります。自民は17の戦略分野への集中投資と積極財政を強調。中道改革連合は生活者ファーストの持続的成長を訴えています。国民民主は手取り増加を通じた内需拡大を主張しています。
政治改革
衆院議員定数について、自民は「1割削減」を目標に掲げ、維新も定数削減を主張しています。中道改革連合は「不断の政治改革と選挙制度改革」を綱領の柱に据えています。
注意点と有権者への示唆
公約の実現可能性
各党とも減税や給付を打ち出していますが、財源の裏付けが不十分なケースが目立ちます。「検討を加速」「実現に向けて」といった表現には注意が必要で、選挙後に実際に実施されるかどうかは別問題です。
選挙後の連立の行方
今回の選挙結果次第では、現在の自民・維新連立が継続するか、あるいは政権交代が起きるかが決まります。国民民主党がどちらの陣営と協力するかも焦点となっており、選挙後の政局にも注目が必要です。
まとめ
2026年衆院選では、消費税減税を各党が掲げる異例の展開となっています。自民・維新の与党は「2年限定」、中道改革連合は「恒久的」、その他野党は「廃止」と、減税の程度と期間に違いがあります。
有権者にとっては、公約の実現可能性と財源論を冷静に見極めることが重要です。また、成長戦略や政治改革、安全保障など消費税以外の争点にも目を向け、各党の政策を総合的に判断することをお勧めします。
参考資料:
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