エースが初のリュック専門店を開業へ、体形計測で最適提案
はじめに
カバン大手のエース株式会社が、リュック(バックパック)を専門に扱う新業態「エース バックパックラボ」を立ち上げました。2026年3月3日から東急百貨店吉祥寺店にて期間限定のポップアップストアを先行展開しており、年内には常設店の開業も予定しています。
この新業態の最大の特徴は、独自開発のリュック専用測定器を使った「フィッティング計測」です。ビジネスカジュアルの浸透により、通勤時にリュックを使うビジネスパーソンが急増するなか、「自分の体形に本当に合ったリュック」を科学的に提案するという新しいアプローチが注目を集めています。
ビジネスリュック市場の急成長が背景に
コロナ禍を機に需要が爆発的に拡大
ビジネスリュック市場は、コロナ禍を契機に大きく拡大しました。テレワークの浸透によりノートパソコンを持ち運ぶ必要が生じたことや、ビジネスカジュアルの広がりにより、リュックをビジネスシーンで使用することへの抵抗感が薄れたことが主な要因です。
エースのビジネスリュックの売上高は、2019年と2022年の比較で約3倍に成長しています。特に女性向けビジネスリュックは2021年時点でコロナ禍前の2019年比で7.8倍という驚異的な伸びを記録しました。事務職をはじめとする内勤の女性がパソコンを持ち運ぶ機会が増え、大容量かつ体への負担が少ないリュックへの需要が急増したのです。
「ガジェタブル」シリーズの成功
エースのビジネスリュック市場における躍進を支えているのが、主力シリーズ「ガジェタブル」です。スリムなボディに収納力を凝縮し、満員電車でも邪魔にならない「前持ちリュック」スタイルを提唱したこのシリーズは、2019年にグッドデザイン賞を受賞。累計販売数は40万個を超え、日本のビジネスバッグ市場でトップクラスの売れ筋モデルとなっています。
近年では拡張機能を搭載したモデルや、スクエア型だけでなく丸みを帯びたデザインのモデルも登場し、よりカジュアルなシーンにも対応できるラインナップが充実しています。
「バックパックラボ」の革新的なアプローチ
独自の体形計測技術で最適なリュックを提案
「エース バックパックラボ」の核となるのが、独自開発のリュック専用測定器を使ったフィッティング計測サービスです。バックパックフィッター資格を持つ専門スタッフが、顧客の体形や肩幅、背中のカーブなどを計測し、最適なリュックとショルダーハーネスの組み合わせを提案します。
特に注目されるのが、ビジネスリュック「ガジェタブルDP2 4U」に搭載された4タイプのショルダーハーネス「4Uハーネス」です。体型・体格の異なる多数の男性モニターの計測データをもとに開発されたこのハーネスは、S(スレンダー)、P(パワー)、B(バランス)、M(マックス)の4タイプに分類されています。
従来のリュック選びでは容量やデザインが重視されがちでしたが、バックパックラボでは「体形に合った背負い心地」を最優先に据えています。これはランドセルのフィッティングに近い発想であり、ビジネスリュック市場では画期的な取り組みです。
東急百貨店吉祥寺店で先行展開
先行展開の場として選ばれたのは、東急百貨店吉祥寺店3Fの約24坪のスペースです。開催期間は2026年3月3日から3月29日までで、エースが展開する複数ブランドのリュック約64品目が一堂に揃います。
フィッティング体験は3月14日〜22日および28日〜29日に実施され、事前予約制となっています。特に3月14日・15日の2日間は、「4Uハーネス」や「ユニバーサルハーネス」の開発を手がけた博士(工学)の若生然太氏が直接計測と提案を行うという特別な機会も設けられました。
リュック市場における新しい売り場モデル
「購入」から「体験」への転換
バックパックラボが目指すのは、リュック選びを単なる「購入」から「体験」へと進化させることです。従来の百貨店やバッグ専門店では、リュックはカバン売り場の一角に並べられるだけで、専門的なアドバイスを受ける機会はほとんどありませんでした。
一方、ランニングシューズの分野では、足型計測によるフィッティングサービスが広く普及しています。バックパックラボはこの成功モデルをリュック市場に持ち込み、「プロに相談して選ぶ」という新しい購買体験を提供しようとしています。
常設店開業への展望
エースは今回の期間限定店での成果を踏まえ、年内に常設店を開業する計画です。常設店では、より幅広いブランド・モデルの取り扱いに加え、フィッティングサービスの常時提供が期待されます。
カバン業界では、スーツケースの試用サービスやオーダーメイドなど、体験型の売り場づくりが進んでいますが、リュック専門のフィッティングストアは国内では前例がほとんどありません。エースがこの分野で先行することで、業界全体に新しいトレンドを生み出す可能性があります。
注意点・展望
リュック市場の成長は続いていますが、いくつかの課題もあります。まず、ビジネスシーンに適したデザインのリュックはまだ不足気味であり、カジュアル寄りの商品が市場の大半を占めている状況です。エースのようなメーカーがビジネス向けの選択肢を拡充することが求められます。
また、フィッティングサービスの普及には、バックパックフィッター資格を持つ専門人材の育成が不可欠です。常設店の拡大に向けて、この人材確保がどこまで進むかが今後の鍵となるでしょう。
さらに、リュック通勤の増加に伴い、肩こりや腰痛といった身体的な悩みを抱えるユーザーも増えています。体形に合ったリュック選びへの関心が高まるなか、フィッティングの重要性を啓発する取り組みも重要になってきます。
まとめ
エースの新業態「バックパックラボ」は、急成長するビジネスリュック市場において、科学的なフィッティングという新しい価値を提案する意欲的な取り組みです。体形計測による最適なリュック選びは、「なんとなく選ぶ」から「自分に合ったものを選ぶ」へという消費者意識の変化を後押しする可能性があります。
ビジネスカジュアルの定着とともに、リュックはもはや一時的なトレンドではなく、ビジネスパーソンの必需品としての地位を確立しつつあります。エースが年内に予定している常設店の動向に注目が集まります。
参考資料:
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