食料品消費税2年間ゼロへ|イオンなど小売株に買い集中
はじめに
2026年1月20日の東京株式市場では、対照的な動きが見られました。日経平均株価は4日続落し、終値は前日比592円47銭(1.11%)安の5万2991円10銭。一方で、イオンなど食品スーパー株は軒並み急伸しています。
この二つの動きを結ぶのが、高市早苗首相が表明した「食料品の消費税2年間ゼロ」という政策です。衆院解散が迫る中、与野党が消費減税を掲げて選挙戦に臨む構図が鮮明になり、小売株には買いが集中しています。
本記事では、消費税ゼロ政策の詳細と市場への影響、そして投資家が注目すべきポイントを解説します。
高市首相が表明した消費税ゼロ政策
2年間限定の時限措置
高市首相は1月19日の記者会見で、2年間に限り食料品を消費税の対象としない考えを表明しました。「私自身の悲願だ」と述べ、実現への強い意欲を示しています。
自民党と日本維新の会の連立政権合意書には「飲食料品について2年間に限り消費税の対象としないことも視野に、法制化を検討する」と明記されており、衆院選に向けて具体化が進んでいます。
家計への影響
総務省の家計調査によると、2人以上世帯の食料費は月平均約8万円です。外食を除いた食料品を月7万円と仮定すると、消費税ゼロで月5600円、年間では約6万7000円の負担軽減になる計算です。
物価高に苦しむ家計にとっては、直接的な支援策となる可能性があります。
財源の課題
一方で、財源の確保が大きな課題です。食料品の消費税率をゼロにした場合、年間約5兆円の税収減が見込まれます。
高市首相は「特例公債に頼ることなく、補助金や租税特別措置、税外収入などの歳出・歳入全般の見直しが考えられる」と述べるにとどめており、具体的な財源の道筋は示されていません。
自民党内からも懸念の声
自民党内からは「そんないいかげんなことを…」と戸惑う声も上がっています。財政規律を重視する議員を中心に、巨額の財源をどう確保するのか、慎重な検討を求める意見があります。
野党も消費税減税を掲げる
中道改革連合は「恒久的にゼロ」
公明党と立憲民主党が結成した新党「中道改革連合」は、「食料品消費税は恒久的にゼロ」を掲げています。自民・維新の与党が「2年限定」としているのに対し、より踏み込んだ主張です。
衆院選では消費税減税が主要な争点となり、有権者に対する訴求合戦が繰り広げられる見通しです。
今後のスケジュール
高市首相は1月19日夕、通常国会の召集日となる23日に衆院を解散すると正式に表明しました。投開票は2月8日が見込まれています。
政府・与党は衆院選に勝利すれば、選挙後に召集される特別国会に消費税減税を盛り込んだ税制改正案の提出を検討しています。早ければ2027年1月から減税を実施する案が浮上しています。
小売株に買い集中
イオンが大幅反発
1月19日の東京株式市場で、イオン(8267)は一時前週末比6.64%高の2256円50銭まで上昇しました。衆院選を控え、食料品の消費税減税を巡る期待が高まり、総合スーパーなど小売株の一角に買いが集まっています。
ライフコーポレーションは最高値
食品スーパー各社も軒並み急伸しました。消費税減税が実現すれば、消費喚起を通じてスーパー各社の業績拡大につながるとの期待が広がっています。
ライフコーポレーションなど首都圏を地盤とするスーパーは、特に恩恵が大きいと見られています。食料品の売上比率が高い企業ほど、消費税ゼロの恩恵を受けやすい構造にあります。
軽減税率関連銘柄への注目
消費税の軽減税率が適用される食料品を扱う企業は、今回の減税議論でも恩恵を受ける可能性があります。スーパーだけでなく、食品メーカーや物流企業にも波及効果が期待されています。
一方で日経平均は続落
米欧対立への懸念
日経平均株価は4日続落し、節目の5万3000円を1週間ぶりに下回りました。デンマーク領グリーンランドを巡る米欧対立への懸念から、19日の欧州主要株価指数が下落し、日本市場にも売りが波及しました。
トランプ大統領がグリーンランド取得に反対する欧州8カ国への追加関税を表明したことで、貿易摩擦への警戒感が高まっています。
長期金利の上昇
国内債券市場での長期金利の上昇も、株式の売り材料となりました。与野党が消費減税を掲げて衆院選を争う見通しとなり、財政拡張への懸念から長期金利は2.3%台に上昇しています。
長期金利の上昇は、株式の相対的な割高感を意識させ、売りを促す要因となります。日経平均の下げ幅は一時700円を超える場面もありました。
財政悪化懸念という逆風
消費税減税は家計には恩恵となりますが、財政悪化への懸念を高める側面もあります。年間5兆円規模の税収減を、どのように穴埋めするのかが明確でない中、債券市場は財政リスクを織り込み始めています。
投資家が注目すべきポイント
消費税減税の実現可能性
現時点では消費税減税は検討段階であり、実施の有無・時期・内容は未定です。衆院選の結果次第では、政策の方向性が変わる可能性もあります。
投資判断にあたっては、選挙動向と政策の具体化プロセスを注視する必要があります。
セクター別の影響
消費税ゼロが実現した場合、食料品売上比率の高い小売企業が恩恵を受けやすい一方、高級品や嗜好品を扱う企業への効果は限定的かもしれません。また、外食は軽減税率の対象外のため、テイクアウト需要との競合関係にも注目が必要です。
金利上昇リスク
財政拡張懸念による長期金利上昇は、株式市場全体の重しとなる可能性があります。個別銘柄の恩恵と、市場全体のリスクのバランスを考慮した投資判断が求められます。
まとめ
高市首相が表明した「食料品消費税2年間ゼロ」は、衆院選の主要争点となり、小売株への買いを集めています。イオンなど食品スーパー株が急伸する一方、日経平均は米欧対立と財政悪化懸念による長期金利上昇で下落しました。
消費税減税は家計への直接的な支援となる可能性がありますが、年間5兆円規模の財源確保が課題です。投資家にとっては、政策の実現可能性と金利上昇リスクを見極めながら、セクター別の影響を精査することが重要です。
2月8日の衆院選投開票に向けて、市場は政策論争の行方を注視し続けることになります。
参考資料:
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