AI時代の言語選択|なぜTypeScriptがトップになったのか

by nicoxz

はじめに

AI 支援によるコーディングが一般化する現在、プログラミング言語の選択基準にも変化が起きています。 2025年、GitHub の年次レポートである Octoverse 2025 において TypeScript が初めて GitHub 上で最も使われる言語となり、これまで多数を占めていた Python を抜きました。 (github.blog)

本記事では、その背景にある「AI × 型付き言語」の関係性、そして今後のソフトウェア開発における言語選択の変化について整理します。

なぜ TypeScript が急浮上したか:AIとの親和性

静的型付けが AI によるコード生成の信頼性を高める

近年、多くの開発者が AI 補助ツール(たとえば GitHub Copilot など)を使ってコードを書いたり補完するようになりました。こうしたツールは、言語の構文やライブラリ仕様だけでなく、型情報や型チェックという「構造性」がある言語に対して強みを発揮します。

たとえば静的型付きの言語では、AIが生成したコードが型チェックによりエラーを事前に検出しやすく、実行前の安全性を一定程度担保しやすくなります。言語が持つ明示的な型情報は、AIにとって「曖昧さを減らす手がかり」となり、結果としてコード生成や補完の品質が安定しやすいのです。 (eu.36kr.com)

このような言語の性質が、AIを使う開発現場での TypeScript の採用を後押ししたと考えられます。

フレームワークやエコシステムの影響 + AI の追い風

加えて、主要なフレームワーク/ライブラリ/ツールチェーンが TypeScript をデフォルトとする傾向も後押ししています。フロントエンド/フルスタックのモダン開発では、TypeScript を使うことが「当たり前」になりつつあります。 (byteiota.com)

さらに、AI支援ツールの台頭によって「AI と相性の良い言語・構造」がメインストリームになりやすくなり、「好きな言語/慣れている言語」というこれまでの価値観に加えて、「AI と機械にとって扱いやすい言語」という新たな選定軸が生まれてきました。 (github.blog)

この相乗効果が、TypeScript の急速な普及につながったと見るのが妥当です。

AI × 言語選択 ― 新たなフィードバックループ

AI が言語トレンドを制御する構造

これまでは、言語選択は開発者の経験・好み、プロジェクトの要件、既存のライブラリ/エコシステムで決まることが多かった。しかし、AI支援が普及するにつれて、「その言語が AI によってどれだけ扱いやすいか」が新たな重要ファクターとして浮上しています。

実際、Octoverse でも「AI が言語やツールの選択を変えている」と説明されており、TypeScript の台頭はその象徴です。 (github.blog)

つまり、次のようなフィードバックループが生まれています:

  • 多くの開発者やチームが AI 補助に適した言語(例:TypeScript)を選ぶ
  • AI 補助ツールがその言語に最適化され、生成や補完の精度が向上
  • より多くのプロジェクトでその言語が採用され、結果として言語の人気・リソースが増える
  • さらに AI モデルが言語を学習するデータが増え、相性が強化される

こうして AI と開発者の両方にとって “使いやすい言語” が勢いを増す──。これは、これまでの「言語進化」の流れとは異なる、新しい形の進化サイクルです。

「好き」よりも「合理性」が優先される現場

この流れのなかでは、もはや「自分が慣れている/好きな言語」で開発することよりも、「チームと機械(AI)の両方にとって効率的で安全な言語」を選ぶ合理性が重視されやすくなります。

開発者が TypeScript を学ぶ動機として、単なる好みではなく「AI を使った保守性・品質の確保」「チーム開発環境の安定」が増えてくるでしょう。

ただし、万能ではない ― Python や他の言語の強みも残る

とはいえ、すべての分野で TypeScript が最適というわけではありません。たとえば AI/機械学習、データ分析、科学計算、スクリプト用途などでは、依然として Python が根強い支持を受けています。実際、Octoverse でも Python の利用は減っておらず、AI・データ分野での強みは保持されています。 (github.blog)

また、静的型付き言語ゆえの制約や、型定義の管理コスト、柔軟性の低さを嫌う開発者にとっては、従来どおり動的型付き言語の選択も十分に理にかなっています。

つまり、「AI時代の言語選択」は“万能言語”の争いではなく、「用途や目的、チーム構成、求める品質によって最適な言語を選ぶ」という以前にも増して慎重かつ柔軟な判断が求められるようになってきた、ということです。

今後の展望:AIサポート時代の“言語設計と選定”の新スタンダード

  • 開発チームや企業にとっては、AI対応を前提とした開発言語/環境設計が標準化される可能性が高い
  • 将来的には、AI補助と型システム、静的解析などの組み合わせが「品質保証の基本スタック」になるかもしれない
  • 動的言語の柔軟性を残しつつ、型注釈や型チェックをオプションで付けられるような「ハイブリッド」言語やフレームワークが再評価される余地もある

まとめ

AIの台頭は、単にコーディングの補助を変えるだけでなく、「どの言語を選ぶか」という開発の根幹にある意思決定まで変えつつあります。

今後は「自分が好き/慣れている」だけでなく、「AIとの相性」「保守性」「チームでの安定性」といった“合理的な選択軸”が、言語選定の中心になる可能性が高いでしょう。

開発者やチームとして、次の10年を見据えた言語選択を考えるなら、AIとの相性も含めた「言語戦略」を再定義する価値があります。


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