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by nicoxz

アンソロピックAIが米軍イラン作戦で使用された背景

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はじめに

2026年2月末、米国とイスラエルはイランに対する大規模軍事作戦「オペレーション・エピック・フューリー」を開始しました。この作戦では、AI技術が情報分析や標的特定に本格的に活用され、「最初のAI戦争」とも呼ばれています。

特に注目を集めたのが、AI開発企業アンソロピック(Anthropic)のClaude AIが米軍の作戦に使用されたという事実です。トランプ大統領が同社の技術を連邦機関から排除する命令を出した直後のことであり、ペンタゴンとアンソロピックの確執が浮き彫りになりました。

本記事では、AI技術の軍事利用をめぐる最新動向と、自爆型ドローンの初実戦投入を含む米軍装備の近代化について解説します。

アンソロピックClaude AIの軍事利用

作戦での具体的な活用方法

米中央軍(CENTCOM)は、アンソロピックのClaude AIモデルを複数の軍事目的に使用しました。具体的には、情報評価、標的の特定、戦闘シナリオのシミュレーションの3つの分野で活用されています。

衛星画像、通信傍受、シグナルインテリジェンスなど膨大なデータの処理・分析にClaude AIが用いられました。これにより、従来よりも大幅に短い時間で作戦計画の立案が可能になったとされています。

パランティアのMaven Smart System

Claude AIと並んで重要な役割を果たしたのが、データ分析企業パランティア・テクノロジーズが構築した「Maven Smart System」です。このシステムは機密データから洞察を生成し、リアルタイムでの標的特定と優先順位付けを行います。

Maven Smart Systemは機械学習を用いて標的の識別・優先順位付けを行うだけでなく、使用する兵器の推奨も行います。備蓄状況や過去の類似標的に対する性能を考慮した上で、攻撃の法的根拠を自動推論で評価する機能も備えています。

ペンタゴンとアンソロピックの確執

対立の核心:AIの安全性ガードレール

アンソロピックとペンタゴンの対立の根本には、AI技術の利用範囲に関する根本的な見解の相違があります。ペンタゴンは「すべての合法的な目的」にClaude AIを使用できることを求めました。

一方、アンソロピックは2つの「レッドライン」を提示しました。第一に、完全自律型兵器へのClaude AIの使用禁止。第二に、米国市民に対する大規模監視への使用禁止です。

この交渉が決裂し、事態は急速にエスカレートしました。

トランプ政権による排除命令

2026年2月27日、トランプ大統領はアンソロピックの技術を連邦機関から排除する大統領令を発出しました。ヘグセス国防長官はアンソロピックを「国家安全保障上のサプライチェーンリスク」と認定し、6か月以内にすべての連邦機関が同社との取引を停止するよう命じました。

CNNの報道によると、アンソロピックは圧力を受けて自社の安全性ポリシーの一部を変更したとされています。また、OpenAIがペンタゴンとの新たな契約を獲得するなど、競合他社が空白を埋める動きも報じられています。

禁止令後も続く使用

注目すべきは、ペンタゴンがアンソロピックを「サプライチェーンリスク」と宣言したわずか1日後に、イラン攻撃作戦でClaude AIが使用されたという矛盾です。

これは、Claude AIが米軍の機密ネットワークに深く組み込まれており、代替技術への移行には数か月を要するという現実を示しています。防衛テック企業10社以上がClaude AIの使用を中止する動きを見せている一方、実際の軍事作戦では依然として活用されている状況です。

自爆型ドローンの初実戦投入

タスクフォース・スコーピオン・ストライク

イラン攻撃作戦では、AI技術に加えて米軍初の自爆型ドローン部隊も投入されました。「タスクフォース・スコーピオン・ストライク(TFSS)」と呼ばれるこの部隊は、米特殊作戦軍中央軍の指揮下に置かれています。

2026年2月28日、TFSSは「LUCAS(Low-cost Uncrewed Combat Attack System)」と呼ばれるドローンの初めての実戦使用を実施しました。

LUCASドローンの特徴

LUCASは、イランの自爆ドローン「シャヘド136」をリバースエンジニアリングして開発された一方向攻撃型ドローンです。アリゾナ州のスペクトレワークスが開発し、1機あたり約3万5,000ドル(約530万円)と低コストなのが特徴です。

搭載ペイロードは18キログラムで、地上から発射されます。イラン革命防衛隊の指揮拠点、防空システム、ミサイル・ドローン発射施設などの固定目標に対して使用されました。

「イラン型」ドローンの模倣戦略

皮肉なことに、米軍はイランが開発した安価な自爆ドローンの戦術を逆に模倣しています。イランのシャヘドドローンは1機数万ドルと安価ですが、これを迎撃するための米軍のミサイルは1発数百万ドルかかります。

ブルームバーグの報道によると、2万ドルのドローンを400万ドルかけて迎撃するという非対称なコスト構造が米軍にとって大きな課題となっていました。LUCASの投入は、この「安価なドローン戦術」を米軍側も採用することで、コスト面での不均衡を是正する狙いがあります。

注意点・展望

AI軍事利用の倫理的課題

研究者たちは、AI技術が複雑な攻撃の計画時間を大幅に短縮する「意思決定の圧縮(decision compression)」現象を懸念しています。人間の軍事・法律の専門家がAIの攻撃計画を形式的に承認するだけの「ラバースタンプ」になる危険性が指摘されています。

GoogleやOpenAIの社員からは、雇用主がどのように軍と協力するかについて明確な制限を求める書簡が回覧されるなど、テック業界内部からの反発も広がっています。

今後の見通し

アンソロピックの排除命令は、AI企業が軍事利用に倫理的な制限を設けることの難しさを浮き彫りにしました。安全性を主張する企業は政府から排除され、制限なく協力する企業が契約を獲得するという構図が明確になりつつあります。

一方で、AI技術が軍事作戦に不可欠なインフラとなった以上、特定企業の排除は国家安全保障上のリスクにもなり得ます。今後は、AI軍事利用の国際的なルール整備を含め、技術と倫理のバランスをどう取るかが重要な課題となるでしょう。

まとめ

米軍によるイラン攻撃作戦は、AI技術と低コストドローンが本格的に実戦投入された転換点となりました。アンソロピックのClaude AIは標的特定や情報分析に活用され、パランティアのMaven Smart Systemとともに作戦の中核を担いました。

同時に、アンソロピックとペンタゴンの確執は、AI企業が軍事利用の倫理的境界をどう設定するかという根本的な問いを突きつけています。自爆型ドローンLUCASの初実戦投入も含め、軍事技術の急速な進化は今後も注視が必要です。

参考資料:

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