トランプ氏がイラン軍事作戦の長期化を示唆、地上部隊も
はじめに
2026年2月28日に開始された米国・イスラエルによるイラン合同軍事作戦は、開戦から5日目を迎えています。トランプ米大統領は3月2日、ホワイトハウスでの演説で「4〜5週間と予測していたが、それよりはるかに長期にわたって実行する能力がある」と述べ、作戦の長期化を示唆しました。
さらに地上部隊の投入についても排除しない姿勢を見せており、中東情勢は一段と不透明感を増しています。原油価格の急騰や株式市場の下落など、世界経済への影響も拡大しています。
本記事では、「オペレーション・エピック・フューリー」と名付けられたこの軍事作戦の経緯、目的、そして今後の展望について解説します。
軍事作戦の経緯と現状
「オペレーション・エピック・フューリー」の開始
2026年2月28日午前1時(米東部時間)、米軍は艦船発射型トマホーク巡航ミサイルと、空軍・海軍の航空機からの精密誘導爆弾による大規模攻撃を開始しました。イスラエル軍も同時に作戦に参加し、史上初の米・イスラエル合同対イラン軍事作戦となりました。
この攻撃により、イランの最高指導者アリー・ハーメネイー師が死亡したとの報道もあり、イランの指導層に大きな打撃を与えたとされています。ホワイトハウスはこの作戦を「オペレーション・エピック・フューリー(壮大な怒り作戦)」と名付け、イランの核脅威の排除と政権打倒を目的に掲げました。
トランプ大統領の演説内容
3月2日のホワイトハウス演説は、攻撃開始後にトランプ氏が公の場で発言する初めての機会でした。主な発言は以下の通りです。
「4〜5週間と予測していたが、それよりはるかに長期にわたって実行する能力がある」と述べ、作戦期間に上限を設けない姿勢を明確にしました。「どれだけ時間がかかっても問題ない」とも語り、期限を設けずに継続する意志を示しています。
地上部隊の投入については、ニューヨーク・ポスト紙のインタビューで「地上部隊に関して不安はない。すべての大統領が『地上部隊は投入しない』と言うが、私は言わない」と述べ、可能性を排除しませんでした。ヘグセス国防長官も同様に地上部隊の使用を排除していません。
作戦の目的と国際社会の反応
4つの作戦目標
トランプ大統領は作戦の目的として4つの目標を掲げています。第一に、イランの核兵器開発能力の完全な排除です。第二に、イランの弾道ミサイル能力の無力化です。第三に、中東地域におけるテロ支援ネットワークの解体です。そして第四に、イラン国民が「自らの運命を自らの手で切り開く」ための条件整備、すなわち政権交代の促進です。
トランプ氏は「イランの政権交代は起こりうる最善の出来事だ」と明言し、イラン国民に対して「圧政のくびきを断ち切る」よう呼びかけました。
分かれる国際社会の評価
国際社会の反応は二分されています。オーストラリアは米国の攻撃支持を表明し、英国も作戦への協力姿勢を見せました。一方、ブラジルは攻撃を非難し国際法の遵守を求めています。フランスのマクロン大統領は国連安全保障理事会の緊急会合の招集を求めました。
日本政府は岩屋外務大臣名の談話を発表し、「イランによる核兵器開発は決して許されない」と述べつつ、事態の推移を注視する立場を表明しました。
専門家が指摘するリスク
外交問題評議会(CFR)は、空爆だけでは政権交代という目標を達成できる可能性は極めて低いと分析しています。一方で、地上部隊をイランに投入すれば甚大な犠牲を伴い、作戦失敗のリスクが飛躍的に高まると警鐘を鳴らしています。イラクやアフガニスタンでの経験が教訓として挙げられています。
世界経済への影響
原油価格と株式市場の動揺
軍事作戦の開始以降、エネルギー市場と金融市場は大きく揺れています。北海ブレント原油は7.8%上昇し1バレル約83ドルに、米国WTI原油も7.6%上昇し約76ドルに達しました。
株式市場では、ダウ工業株30種平均が一時1,000ポイント以上下落する場面がありました。欧州のStoxx600は3.08%下落、日経平均は3.06%下落、韓国KOSPIは7.24%の急落を記録しました。
ホルムズ海峡の事実上の封鎖
最大の懸念材料は、世界の原油供給の約20%が通過するホルムズ海峡が事実上の封鎖状態に陥っていることです。ペルシャ湾には3,000隻以上の船舶が海峡通過を待機しており、2025年には1日あたり約2,000万バレルの原油が通過していた要衝が機能不全に陥っています。
ゴールドマン・サックスの原油調査部門責任者は、現在の原油価格水準は市場が紛争を約4週間と見込んでいることを反映していると分析しました。原油価格が1バレル100ドルを超える事態となれば、世界経済への影響は「質的に異なる」規模になるとの警告も出ています。
注意点・今後の展望
長期化シナリオのリスク
トランプ大統領が示唆する作戦の長期化は、複数のリスクを伴います。エネルギー価格のさらなる上昇は世界的なインフレを加速させ、各国中央銀行の金融政策を困難にします。また、地上部隊投入が現実のものとなれば、米軍の人的損害が増加し、米国内の世論も変化する可能性があります。
現時点で米軍の死者は6名と報告されていますが、イラン側は787名が死亡したと報道されています。地上戦に移行すれば、双方の犠牲者数は急増すると予想されます。
出口戦略の不透明さ
Bloombergの分析は「体制転換の狙いは明確でも出口が見えない」と指摘しています。仮に現イラン政権が崩壊したとしても、その後の国家再建と安定化には長期的な関与が必要となります。イラク戦争後の混乱の教訓を踏まえれば、軍事的成功だけでは問題は解決しません。
イランの報復行動の可能性も大きなリスク要因です。カタールのLNG施設へのドローン攻撃はすでに現実のものとなっており、中東地域全体への影響拡大が懸念されています。
まとめ
トランプ大統領によるイラン軍事作戦の長期化示唆と地上部隊投入の可能性は、中東情勢をさらに不安定化させる要因です。核施設の破壊から政権交代まで野心的な目標を掲げる一方、出口戦略は不透明なままです。
ホルムズ海峡の事実上の封鎖がエネルギー価格を押し上げ、世界経済にも影を落としています。今後は作戦の期間と規模、イランの反応、そして国際社会の外交努力の行方が焦点となります。
参考資料:
- Trump says strikes on Iran could take weeks - The Washington Post
- Trump defends Iran strikes, offers objectives for military operation - NPR
- U.S. death toll in Iran war rises to 6 as Trump says campaign could last 5 weeks - CBS News
- Oil surges and stock futures sink as war in Iran threatens crude supply - CNN
- トランプ米大統領、対イラン攻撃は必要な限り継続 - Bloomberg
- 米国のイラン攻撃、体制転換の狙い明確でも出口見えず - Bloomberg
- トランプ米大統領がイラン攻撃成功を発表 - JETRO
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