麻生副総裁「解散は首相の専権、議席増に全力」
はじめに
2026年1月16日、韓国ソウルを訪問中の自民党・麻生太郎副総裁が、高市早苗首相による衆議院解散の意向について記者団の問いに答えました。麻生氏は「解散権は首相の専権事項で、脇役がなにか言う話ではない」と述べ、首相の判断を尊重する姿勢を示しつつ、「この解散によって自民党の議席をどれだけ増やせるかに全力をあげるのがわれわれの仕事だ」と強調しました。
高市首相は1月23日召集の通常国会冒頭で衆議院を解散する意向を固めており、自民党は総選挙に向けた準備を本格化させています。本記事では、麻生氏の発言の真意、高市首相の解散判断を巡る党内事情、そして日韓関係の文脈について詳しく解説します。
麻生氏の「脇役」発言の真意
表面的には首相支持
麻生氏は「解散権は首相の専権事項で、脇役がなにか言う話ではない」と述べました。この発言は表面的には、首相の解散権を尊重し、党として一致団結して選挙に臨む姿勢を示したものです。
「(首相が)いまのタイミングが解散時期として一番だと思われたのだろう」とも述べ、高市首相の判断を肯定的に評価しました。自民党の実力者である麻生氏が公然と首相の決定を批判すれば党内の混乱を招くため、公式には支持の立場を表明したと言えます。
滲む不満と複雑な感情
しかし、複数の報道によれば、麻生氏は高市首相の解散判断について事前の相談を受けておらず、不満を抱いていることが明らかになっています。麻生氏は高市政権の「後見人」とも目されており、重要な政治判断については事前に相談があるべきだという認識を持っていたとされます。
実際、麻生氏は1月11日に西日本新聞の取材に対して、国会冒頭での解散について「ないでしょうね」と否定的な見方を示していました。これは、その時点では解散について首相から相談を受けていなかったことを示唆しています。
東洋経済オンラインの報道では「後見人・麻生元首相も蚊帳の外」という見出しで、高市首相が麻生氏や鈴木俊一幹事長らとの事前相談なしに解散を決断したことが伝えられています。
「脇役」という言葉の含意
麻生氏が自らを「脇役」と表現したことには、複雑なニュアンスが込められています。一見謙遜の言葉ですが、自民党副総裁という党序列2位の重鎮が「脇役」を名乗ることで、逆に自身の重要性を暗に示したとも解釈できます。
また、「脇役がなにか言う話ではない」という表現には、「本来なら意見を言う立場だが、あえて言わない」というメッセージが含まれているとの見方もあります。事前相談なしへの不満を、直接的な批判ではなく、この微妙な表現で示したと考えられます。
高市首相の解散判断と党内事情
「極秘裏」の解散戦略
高市首相の解散判断は、党内の主要幹部にも事前に詳細が知らされていなかったことが明らかになっています。西日本新聞の報道では「“極秘裏”衆院解散戦略」と題し、事後報告を受けた麻生氏らが不満を抱いている状況が伝えられています。
高市首相の側近は「解散は総理の専権事項。勝てると思えるときにやるのは当然」と胸を張っており、党内調整よりも勝機を重視した判断だったことがうかがえます。実際、高市内閣の支持率は高水準を維持しており、早期解散により自民党が議席を増やせる可能性があると判断されたようです。
麻生氏の複雑な立場
興味深いのは、麻生氏自身も政権成立直後から高い内閣支持率を背景に早期の解散総選挙を望んでいたという報道があることです。東洋経済の別の記事では「麻生氏は政権成立直後から、高い内閣支持率を背景に早期の解散総選挙を望んでいた」と伝えられています。
つまり、麻生氏は解散のタイミング自体には賛成していた可能性が高いのですが、事前相談なしに決定されたプロセスに不満を抱いているということです。内容には賛成だが、手続きに問題があるという複雑な立場が、「脇役」発言の背景にあると考えられます。
ソウル訪問の文脈
日韓関係強化の使命
麻生氏が解散についてコメントしたのは、韓国ソウル訪問中のことでした。麻生氏は自身が会長を務める「中曽根平和研究所」などがソウルで開催するフォーラムに参加するため、1月16〜18日の日程で韓国を訪問していました。
16日には韓国大統領府で李在明大統領と会談し、約30分間にわたり地域情勢への対応を念頭に戦略的連携を一層強化する方針で一致しました。これは高市政権発足後では初の麻生氏と韓国大統領との面会でした。
日韓協力の重要性を強調
麻生氏は李大統領との会談で、13日に奈良市で行われた日韓首脳会談の成果を踏まえ、「日韓首脳が短期間の間に相次いで会談していることは非常に意義深い」と評価しました。また、「国際情勢が変化する中で日韓の緊密な協力は両国の国益に資する」と述べ、連携の必要性を強調しました。
具体的には「日本と韓国を取り巻く国際情勢は変化しており、ロシア、中国、北朝鮮などの動きに備えなければならない」と述べ、地域の安全保障における日韓協力の重要性を訴えました。
外交日程と解散のタイミング
麻生氏がソウルで衆議院解散について問われたことは、象徴的な意味を持ちます。日韓関係の強化という重要な外交使命を帯びて訪韓している最中に、国内の政局について質問に答えなければならない状況は、外交と内政が複雑に絡み合う現代政治の一面を示しています。
また、麻生氏が韓国という「外地」で解散について語ることで、党内の対立を表に出さずに発言できるという側面もあったかもしれません。ソウルという距離を置いた場所だからこそ、「脇役」という微妙な表現を使えたとも考えられます。
総選挙に向けた自民党の課題
議席増への道筋
麻生氏は「この解散によって自民党の議席をどれだけ増やせるかに全力をあげるのがわれわれの仕事だ」と述べました。これは、党内の不協和音はあっても、選挙では一致団結して戦うという意思表明です。
自民党は高市政権発足後、内閣支持率が高水準を維持しており、野党が立憲民主党と公明党の合流で「中道改革連合」を結成する前に選挙を実施することで、議席増を狙える可能性があると判断しています。
党内の潜在的リスク
しかし、麻生氏や鈴木幹事長といった党の重鎮が事前相談なしに解散が決定されたことへの不満は、潜在的なリスクでもあります。もし選挙で期待通りの結果が出なければ、「事前に相談していれば違う判断ができた」という批判が噴出する可能性があります。
また、菅義偉元首相が衆院選不出馬の意向を示すなど、党内の世代交代が進む中で、高市首相がどこまで党内基盤を固められるかも課題です。選挙の結果次第では、高市政権の求心力に影響が出る可能性もあります。
注意点と今後の展望
解散のタイミングの妥当性
高市首相が国会冒頭での解散を選択した背景には、高い内閣支持率を活かしたいという意図があります。しかし、予算審議が遅れるなどの懸念から、党内には慎重論もありました。
実際に解散が実施されれば、「27日公示、2月8日投開票」という日程が想定されています。この短期決戦が自民党に有利に働くか、それとも準備不足で議席を減らす結果になるかは、今後の情勢次第です。
野党の動向
立憲民主党と公明党が合流した「中道改革連合」は、衆議院で172議席の勢力となる可能性があり、自民党の196議席に迫る規模です。この新党がどこまで有権者の支持を集められるかが、選挙結果を左右する大きな要因となります。
日韓関係の今後
麻生氏の韓国訪問は、高市政権が日韓関係を重視していることを示しています。地域の安全保障環境が厳しさを増す中、日韓協力の強化は日本の外交・安全保障政策の重要な柱となっています。
選挙後の政権がどのような対韓政策を展開するかは、東アジアの安定に大きな影響を与えるでしょう。
まとめ
麻生太郎副総裁の「解散は首相の専権事項で、脇役がなにか言う話ではない」という発言は、表面的には高市首相の解散判断を支持しつつ、事前相談なしへの不満を滲ませた複雑なメッセージでした。ソウル訪問という外交日程の中でこの発言がなされたことも、内政と外交が複雑に絡み合う現代政治の一面を示しています。
高市首相の解散判断は、高い支持率を活かして議席を増やすという戦略的判断ですが、党内の主要幹部との事前調整が不十分だったことは、潜在的なリスクでもあります。選挙の結果が期待通りであれば問題ありませんが、もし議席を減らせば党内の求心力に影響が出る可能性もあります。
自民党は「議席増に全力」という麻生氏の言葉通り、党を挙げて選挙に臨む構えです。一方で、中道改革連合の誕生により野党勢力も結集しつつあり、総選挙の行方は予断を許しません。日本政治の新しい構図を占う重要な選挙として、注目が集まっています。
参考資料:
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