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by nicoxz

インフレに強いゼネコン株、鹿島建設に再評価の機運

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はじめに

2026年3月4日、日経平均株価は前日比2,033円安(3.61%安)の5万4,245円と大幅続落しました。米国とイスラエルによるイラン関連の軍事行動をきっかけに中東情勢が緊迫化し、原油先物は約8か月ぶりの高値を記録しています。エネルギー価格の高騰は景気減速への懸念を強め、半導体や自動車など景気敏感株が大きく売られる展開となりました。

しかし、こうした「インフレ環境」が逆に追い風となるセクターがあります。それがゼネコン(総合建設業)株です。とりわけ、スーパーゼネコンの一角である鹿島建設は過去最高益の更新が見込まれ、再評価の機運が高まっています。本記事では、なぜインフレがゼネコンの強みとなるのか、鹿島建設の業績と成長戦略、そして今後の展望を詳しく解説します。

ゼネコン株がインフレに強い構造的理由

価格転嫁力の向上が利益率を押し上げる

かつてのゼネコン業界は「受注すればするほど赤字になる」と揶揄されるほど、資材高騰のコストを吸収しきれない構造にありました。しかし、2024年度以降その状況は大きく変わっています。

大手ゼネコン各社は、採算性を重視した「選別受注」を徹底し、受注時にインフレ分を織り込んだ価格設定を行うようになりました。さらに2025年12月に全面施行された改正建設業法により、価格転嫁や工期変更に関する新しい契約・協議のルールが法的に整備されたことも大きな後押しとなっています。

建設資材物価は2021年1月比で全体平均38%上昇していますが、ゼネコン各社はこのコスト増加分を施主(発注者)への価格転嫁という形で適切に反映できるようになりました。資材費が上がればその分受注単価も上がるという、インフレ環境に適応したビジネスモデルへの転換が進んでいるのです。

豊富な受注残が中長期の収益を保証

ゼネコンのもう一つの強みは、膨大な受注残高にあります。大型建設プロジェクトは契約から完工まで数年を要するため、現時点で確保している受注残が今後数年間の売上を事実上保証する仕組みになっています。

現在の受注環境は極めて旺盛です。AIデータセンターの建設ラッシュ、都市部の大規模再開発プロジェクト、製造業の国内回帰に伴う工場建設など、多様な需要が同時に発生しています。加えて、2026年度から始まる「第1次国土強靱化実施中期計画」(5か年で20兆円超)が公共事業需要をさらに底上げする見通しです。

つまり、原油高やインフレで目先の市場が動揺しても、既に確保した大量の受注残がゼネコンの収益基盤を揺るぎないものにしているわけです。

鹿島建設の業績好調と再評価の背景

第3四半期決算で示された圧倒的な収益改善

鹿島建設の2026年3月期第3四半期(2025年4月〜12月)の連結業績は、売上高2兆1,460億円(前年同期比5.9%増)、営業利益1,718億円(同81.6%増)と、売上・利益ともに大幅な伸びを記録しました。営業利益がほぼ倍増するという驚異的な改善ぶりです。

特に注目すべきは利益率の向上です。国内土木事業の売上総利益率は24.6%、建築事業は11.8%に改善しています。これは、先述の価格転嫁の進展と、過去に抱えていた不採算案件の消化が完了したことによるものです。

通期業績見通しも上方修正され、売上高3兆300億円(前回予想比1.0%増)、営業利益2,280億円(同12.9%増)を予想しています。鹿島建設は建設業として初の売上高3兆円の大台を突破する見込みで、5期連続の増収増益かつ8期ぶりの最高益更新となります。

スーパーゼネコン5社の中での優位性

スーパーゼネコン5社(鹿島建設、大林組、大成建設、清水建設、竹中工務店)を比較すると、鹿島建設の優位性が際立ちます。

売上高では鹿島建設が約3兆円で業界トップの座を堅持しています。大林組が約2兆5,600億円、大成建設が約1兆9,600億円と続きますが、鹿島との差は年々広がっている状況です。

さらに鹿島建設は、国内建設事業に加えて、北米・東南アジア・オセアニアなど6拠点の海外事業基盤を持つ点でも差別化されています。海外の開発事業で得た収益を国内の成長投資や株主還元に充当するという好循環が生まれています。

株主還元面でも、配当性向40%を目安とした積極的な方針を掲げており、2026年3月期は年間配当を28円増額する方針が発表されています。成長投資と株主還元の両立が、投資家からの再評価につながっている要因の一つです。

データセンターと国土強靱化が成長ドライバー

鹿島建設の中長期的な成長を支えるのが、データセンター建設と国土強靱化関連の需要です。

データセンター分野では、鹿島建設は国内シェアトップクラスの実績を誇ります。AIの急速な普及に伴い、大規模データセンターの建設需要は加速しており、東京都日野市の日野自動車工場跡地に延べ16万平方メートル超のデータセンターを設計するなど、大型案件を次々と獲得しています。

公共事業面では、2026年度から始動する国土強靱化実施中期計画(20兆円超)が追い風です。2026年度の概算要求額は6.66兆円に上り、うち公共工事関連が4.91兆円(70%超)を占めます。老朽化したインフラの更新や防災・減災対策は、土木に強い鹿島建設にとって大きなビジネスチャンスとなります。

注意点・展望

リスク要因も認識が必要

ゼネコン株に投資する際には、いくつかのリスクも念頭に置く必要があります。

第一に、「想定以上のインフレ」というリスクです。現在の好業績はインフレ分を適切に価格転嫁できていることが前提ですが、中東情勢のさらなる悪化により原油価格が急騰し、資材費が想定を大幅に上回る場合、再び採算悪化の可能性があります。

第二に、人手不足の深刻化です。建設業界の労働力不足は慢性的な課題であり、労務費の上昇ペースが加速すれば利益を圧迫する要因となります。2024年問題(時間外労働の上限規制)の影響も引き続き注視が必要です。

第三に、金利上昇の影響です。日銀の利上げが進む局面では、不動産開発のコストが上昇し、民間の建設投資が抑制される可能性があります。

今後の見通し

一方で、中長期的な見通しは明るいと考えられます。建設需要は「5年くらいは堅調な需要が続く」との業界見通しもあり、国土強靱化、データセンター、再開発という3つの需要の柱が同時に機能している状況は過去に例がありません。

また、2026年の日本株見通しにおいて、複数の専門家が「建設・資材」セクターを有望視している点も注目に値します。マーケット全体が中東リスクで調整する局面は、むしろ割安な水準で優良ゼネコン株を拾うチャンスとなる可能性があります。

まとめ

中東情勢の緊迫化による原油高とインフレ懸念が市場を揺るがす中、ゼネコン株は「インフレに強い」という構造的な強みを発揮しています。価格転嫁力の向上、豊富な受注残、そして国土強靱化やデータセンター建設といった中長期の成長ドライバーが、セクター全体の底堅さを支えています。

とりわけ鹿島建設は、売上高3兆円突破・営業利益倍増という圧倒的な業績改善に加え、海外事業の多角化や積極的な株主還元策が評価され、スーパーゼネコンの中でも一段の再評価が進む可能性を秘めています。

市場全体の下落局面だからこそ、ファンダメンタルズが堅固なセクター・銘柄を見極めることが重要です。ゼネコン株、特に鹿島建設の動向は今後も注目に値するでしょう。

参考資料:

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