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by nicoxz

鹿島建設の新社長に桐生雅文氏、現場35年の手腕

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はじめに

スーパーゼネコンの一角である鹿島建設が、新たなトップ人事を発表しました。桐生雅文常務執行役員(64)が6月下旬に社長に昇格し、現在社長を兼務している押味至一会長(76)は会長職に専念します。

この人事の背景には、天野裕正前社長が2026年1月に急逝するという異例の事態がありました。建設業界が深刻な人手不足に直面し、工事の遅延が相次ぐ中、42年の会社人生のうち35年を現場で過ごした桐生氏がどのように鹿島建設を率いていくのか、注目が集まっています。

異例の社長交代の経緯

天野裕正前社長の急逝

鹿島建設の天野裕正前社長は2026年1月23日、心不全のため東京都内の病院で亡くなりました。74歳でした。天野氏は鹿島建設の「稼ぎ頭」であった建築事業を長年率い、社長就任後は積極的な事業拡大路線を推進していました。

天野氏の突然の死去を受け、すでに会長職にあった押味至一氏が一時的に社長を兼務する異例の体制が敷かれていました。今回の桐生氏の社長昇格は、この暫定体制を解消し、新たな経営体制を確立するためのものです。

押味至一氏の役割

押味至一氏は76歳で、長年にわたり鹿島建設の経営を担ってきたベテラン経営者です。今回の人事で会長職に専念することになりますが、桐生新社長の後見役としての役割も期待されています。社長と会長の役割分担を明確にすることで、意思決定のスピードを高める狙いがあると見られます。

新社長・桐生雅文氏の人物像

現場畑一筋のキャリア

桐生雅文氏は1984年に早稲田大学理工学部建築学科を卒業し、鹿島建設に入社しました。42年の会社人生のうち、実に35年を工事現場で過ごしてきた「現場の人」です。

キャリアの中で特に注目されるのが、2018年に開業した大型複合施設「東京ミッドタウン日比谷」の建設プロジェクトです。桐生氏はこのプロジェクトで現場所長を務め、複雑な都心部での大規模工事を成功に導きました。

主要な経歴

桐生氏の直近の経歴は以下の通りです。

  • 2018年: 東京建築支店建築部長
  • 2021年: 執行役員東京建築支店副支店長
  • 現職: 常務執行役員・横浜支店長

建築部門の要職を歴任し、大規模プロジェクトの管理と地方拠点の運営の両方を経験しています。現場で培った対話力と統率力が、社長としてのリーダーシップの基盤となると期待されています。

「対話で人を動かす」リーダーシップ

桐生氏は、現場での長年の経験から「対話で人を動かす」タイプのリーダーとして知られています。建設現場では、自社の社員だけでなく協力会社の職人や設計者、発注者など、多様な関係者との調整が不可欠です。35年の現場経験で培われたコミュニケーション能力は、全社の経営においても重要な武器となるでしょう。

建設業界が直面する課題

深刻化する人手不足

建設業界は現在、かつてないほどの人手不足に直面しています。2024年4月に「働き方改革関連法」による時間外労働の上限規制が建設業にも適用されたことで、人手不足の問題はさらに顕在化しました。

業界調査によると、全体の87%の企業が事業活動にマイナスの影響があると回答し、93%が「以前にも増して人手不足を感じている」と述べています。人手不足を原因とする建設業の倒産件数も増加傾向にあり、業界全体の構造的な課題となっています。

大型工事の受注困難

人手不足の影響は、大型案件の受注にも及んでいます。大手・中堅の建設会社の約7割が「2026年度内は大型工事を新規受注できない」と回答し、4割弱は契約済みの工事で工期が遅れる可能性があるとしています。

建設需要自体は堅調であるにもかかわらず、それに対応できる人材が不足しているという需給ギャップが、業界の成長を阻む最大の要因となっています。

DX推進の遅れ

人手不足への対策として、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進が叫ばれていますが、その浸透は遅れています。人手不足対策として「採用活動」を挙げる企業が78%に達する一方、「DX推進による生産性向上」を挙げた企業は14.9%にとどまっています。

BIM/CIM(建築・土木分野の3次元モデル活用)の導入やICT建機の活用など、具体的なDX施策は存在するものの、業界全体への普及にはまだ時間がかかる状況です。現場経験の長い桐生新社長が、デジタル技術の活用と現場力のバランスをどう取っていくかが注目されます。

注意点・展望

桐生新社長の就任は6月下旬の予定であり、それまでの間は押味氏の兼務体制が継続します。新社長就任後の経営方針の具体的な発表は、6月以降になると見られます。

鹿島建設は、大林組、大成建設、清水建設、竹中工務店と並ぶスーパーゼネコン5社の一角を占めています。競合他社との差別化を図りながら、人手不足やDX推進といった業界共通の課題にどう取り組むかが、桐生新体制の最初の試金石となるでしょう。

また、前社長の急逝という異例の事態を経ての社長交代であるため、経営の安定性を示すことも重要な課題です。押味会長との連携による安定感と、現場出身者ならではの実行力のバランスが求められます。

まとめ

鹿島建設の新社長に昇格する桐生雅文氏は、35年にわたる現場経験と東京ミッドタウン日比谷の建設を成功させた実績を持つ人物です。天野前社長の急逝という困難な状況の中での登板となりますが、「対話で人を動かす」リーダーシップへの期待は大きいものがあります。

建設業界は人手不足の深刻化、働き方改革への対応、DX推進の遅れなど、多くの課題を抱えています。現場を知り尽くした新社長が、これらの構造的な課題にどう向き合い、鹿島建設の新たな成長戦略を描くのか。6月の正式就任以降の舵取りに注目が集まります。

参考資料:

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