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by nicoxz

首相がガソリン・電気代の追加対策を検討、予算組み替えは否定

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はじめに

高市早苗首相は2026年3月9日の衆院予算委員会で、中東情勢の悪化に伴うガソリンや電気・ガス料金の高騰対策を検討していると明らかにしました。「先週前半から検討に入っている。遅すぎることなく対策を打つ」と述べ、迅速な対応を約束しています。

一方で、2026年度予算案の組み替えについては否定し、予備費や基金の活用による対応を示唆しました。米国・イスラエルのイラン攻撃が引き起こした原油価格の急騰は、日本の家計に直接的な打撃を与えつつあります。本記事では、政府が検討する追加対策の内容と、エネルギー価格の現状を整理します。

原油価格急騰の背景

ホルムズ海峡の事実上の封鎖

2月28日、米国とイスラエルがイランに対する大規模な軍事攻撃を開始しました。これに対し、イラン革命防衛隊はホルムズ海峡付近を通過する船舶に対して通過禁止を通告し、タンカー3隻への攻撃も実施しました。世界の原油輸送の要衝であるホルムズ海峡は、事実上の封鎖状態に陥っています。

この影響で、WTI原油先物価格は一時1バレル113ドル台まで急騰し、3月8日には100ドルを突破した水準で推移しています。攻撃開始前の約85ドルから、わずか1週間あまりで約15%の上昇を記録しました。

日本への影響が特に深刻な理由

日本は原油輸入の約94%を中東地域に依存しており、その多くがホルムズ海峡を経由しています。日本郵船や川崎汽船など国内大手海運会社はすでに同海峡の通航を停止し、代替ルートの確保を急いでいます。しかし、迂回ルートでは輸送コストと所要時間が大幅に増加するため、原油の調達コスト上昇は避けられません。

日本総研の分析では、ホルムズ海峡封鎖が長期化した場合、原油価格は140ドルに達し、日本のGDPを約3%押し下げる可能性があると指摘されています。

政府が検討する追加対策

予備費と基金の活用が軸

高市首相は衆院予算委員会で、中道改革連合の赤羽一嘉副代表の質問に対し、「ガソリンの値段が許容範囲を超えるレベルにならないような対策」を検討していると答弁しました。具体的な対応策として、2025年度予算の予備費活用を検討しています。

政府内では、電気・ガス料金の補助延長も選択肢として浮上しています。現行の電気・ガス補助は2026年1~3月の3カ月間で1世帯あたり約7,000円の支援を実施していますが、この期間終了後も補助を継続する案が議論されています。

重要なのは、高市首相が2026年度予算案の組み替えを明確に否定している点です。予算案は国会審議中であり、組み替えは審議の遅延を招くため、既存の予備費や基金を機動的に活用する姿勢を示しています。

これまでのエネルギー価格対策の経緯

政府はこれまでもエネルギー価格対策に多額の予算を投じてきました。2025年11月に閣議決定された総合経済対策では、21.3兆円規模の対策のうち、ガソリン暫定税率の廃止(2025年12月末実施、1リットルあたり25.1円の実質減税)が柱の一つでした。

暫定税率の廃止に先立ち、2025年11月13日から2週間ごとに5円ずつガソリン補助金を拡充し、段階的に価格を抑制する措置も講じました。これにより、3月初旬時点のガソリン価格は1リットルあたり約157円で推移していましたが、原油価格の急騰により今後の上昇は避けられない情勢です。

家計と企業への影響

ガソリン価格は20~30円上昇の可能性

原油価格が100ドル水準で定着した場合、国内のガソリン価格には1リットルあたり20~30円の上昇圧力がかかると試算されています。暫定税率廃止による25.1円の減税効果が相殺されかねない規模です。

ガソリン価格の上昇は、通勤や物流コストの増加を通じて幅広い業種に波及します。特に、地方在住者や運輸業界への打撃は大きく、赤羽副代表も予算委員会で「事態が長期化する可能性を踏まえた対策」を求めました。

電気・ガス料金も上昇圧力

原油価格の高騰は、火力発電の燃料費を通じて電気料金にも波及します。LNG(液化天然ガス)の調達コストも上昇しており、電力会社の燃料費調整額が引き上げられる可能性があります。

消費者物価指数(CPI)への影響は0.6~0.7%程度の上昇要因になると予測されており、1月に1.7%まで鈍化していた物価上昇率が再び加速に転じるリスクがあります。これは、せっかくプラスに転じた実質賃金を再びマイナスに押し戻す要因にもなりかねません。

注意点・展望

政府の追加対策の規模と内容は、イラン情勢の推移に大きく左右されます。ホルムズ海峡の封鎖が短期間で解消されれば、原油価格も落ち着く可能性がありますが、軍事衝突が長期化すれば、補助金の追加拡充だけでは対応しきれない事態も想定されます。

かつてのトリガー条項(ガソリン平均小売価格が1リットル160円を3カ月連続で超えた場合に税率を自動的に引き下げる仕組み)は、暫定税率の廃止に伴い実質的な役割を終えています。今後は、原油価格の変動に対してどのような制度的な安全弁を設けるかが、中長期的な課題として残ります。

また、予備費の活用は迅速な対応を可能にする一方、国会の事後承認で済むため財政規律の観点から批判も予想されます。追加対策の財源と規模について、透明性の高い議論が求められます。

まとめ

高市首相はイラン情勢の悪化を受け、ガソリン・電気・ガス料金の追加対策を検討していると表明しました。予備費や基金の活用で迅速に対応する方針ですが、予算案の組み替えは行わない考えです。

原油価格が100ドル前後で推移するなか、暫定税率廃止の減税効果を上回る価格上昇が現実味を帯びています。政府の対応スピードと対策の規模が、家計への影響を左右する重要な局面です。中東情勢の先行きが不透明ななか、エネルギー安全保障の観点からも中長期的な戦略の議論が必要とされています。

参考資料:

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