ゴールドウインが富山に40ha自然体験公園、旅行事業と連携
はじめに
アウトドアブランド「ザ・ノース・フェイス」や「ヘリーハンセン」で知られるゴールドウインが、創業の地・富山県南砺市で大規模な自然体験公園の開発を進めています。2027年初夏に開業予定の「Play Earth Park Naturing Forest(プレイアースパーク ネイチャーリングフォレスト)」は、約40ヘクタールという広大な敷地を持つ次世代型ネイチャーパークです。同社は2025年に買収した旅行会社との連携や、自社ブランド製品の素材テストの場としての活用も計画しており、アウトドア企業の新たなビジネスモデルとして注目されています。
Play Earth Park Naturing Forestの全貌
桜ヶ池周辺に広がる3つのエリア
この施設は、富山県南砺市の桜ヶ池周辺に位置し、敷地面積は約40ヘクタール(東京ドーム約8.5個分)に及びます。園内は大きく3つのエリアで構成されています。
1つ目の「パークエリア」は、子どもたちが好奇心のままに遊びを楽しめる遊具を中心とした空間です。2つ目の「フォレストエリア」は、森に生息する鳥や虫、草花などの生物を観察できる自然学習の場となります。3つ目の「ガーデンエリア」は、多様な植物が共生する自然の美しさに触れながら、ヴィラやキャンプサイトに滞在できる宿泊機能を備えたエリアです。
国内外8組の設計者が参画
このプロジェクトの特徴は、国内外で活躍する8組の設計者が各施設のデザインを手がけている点です。新素材研究所の榊田倫之氏によるヴィラなど、建築・デザインの面でも高い注目を集めています。2025年5月に着工し、2027年春に竣工、同年初夏の開業を目指しています。年間来場者数は100万〜150万人を見込んでおり、地域経済への貢献も期待されています。
旅行子会社との連携戦略
アルパインツアーサービスの子会社化
ゴールドウインは2025年4月、山岳・トレッキングツアーを専門とする旅行会社「アルパインツアーサービス」の株式99.5%を取得し、子会社化しました。1973年設立のアルパインツアーサービスは、国内外のハイキング、トレッキング、登山ツアーを企画・運営してきた実績を持つ企業です。
この買収により、ゴールドウインはPlay Earth Park Naturing Forestへの集客を旅行事業と一体で展開する体制を整えました。単に公園を訪れるだけでなく、山岳ツアーや自然体験プログラムと組み合わせた滞在型の提案が可能になります。
ブランド体験と商品開発の融合
渡辺貴生社長が明らかにした方針で注目すべきは、この公園をザ・ノース・フェイスなどのブランド製品に使う素材の機能を試す場としても活用する計画です。来場者が実際にアウトドア環境で製品を使用することで得られるフィードバックを、商品開発に反映させる狙いがあります。
これは、店舗での販売だけでは得られない「実体験に基づく顧客の声」を収集する仕組みです。来場者にとっては最新製品をフィールドで試せる特別な体験となり、企業にとっては貴重な市場調査の場となります。双方にメリットがある設計です。
アウトドア業界における戦略的位置づけ
「モノ」から「体験」への転換
ゴールドウインのこの取り組みは、アウトドア業界で進む「モノから体験へ」のシフトを象徴しています。ウェアや装備を販売するだけでなく、自然体験そのものを提供することで、ブランドへの愛着や顧客のライフタイムバリューを高める戦略です。
同社はすでに「PLAY EARTH ADVENTURE」という体験型事業を展開しており、今回のネイチャーパークはその取り組みをさらに大規模に発展させたものです。アルパインツアーサービスの子会社化を含め、体験価値の提供を事業の柱に据える方向性が明確になっています。
BtoB事業への展開
加えて、自然体験・環境教育をコンテンツとしたBtoB企業研修の受託事業も計画されています。企業のチームビルディングや研修プログラムの場としてネイチャーパークを活用することで、平日の集客確保にもつながります。こうした多角的な収益モデルの構築が、大規模施設の持続的な運営を支える重要な要素です。
注意点・展望
大規模自然体験施設の運営には課題も伴います。年間100万〜150万人という来場者目標を達成するには、富山県南砺市というアクセス面でのハードルを克服する必要があります。北陸新幹線の開業で首都圏からのアクセスは改善されましたが、最寄り駅からの二次交通の整備が鍵を握るでしょう。
また、自然環境を活かした施設であるがゆえに、季節による来場者数の変動は避けられません。冬季の積雪対策や、オフシーズンのコンテンツ充実が安定運営のポイントになります。
一方で、アウトドアブランドが自然体験施設を直営するというビジネスモデルは、国内では先駆的な事例です。旅行事業との連携、商品開発へのフィードバック、BtoB研修といった複数の収益源を組み合わせる戦略が成功すれば、他のアウトドア企業にも大きな影響を与える可能性があります。
まとめ
ゴールドウインが富山県南砺市に建設する「Play Earth Park Naturing Forest」は、アウトドア企業の新たなビジネスモデルを体現する大型プロジェクトです。旅行子会社アルパインツアーサービスとの連携による集客、ブランド製品の実地テスト、BtoB研修事業など、多角的な活用を見据えた戦略は、「モノの販売」から「体験の提供」への転換を明確に示しています。2027年初夏の開業に向け、アウトドア業界の注目が集まっています。
参考資料:
関連記事
スノーピークがMBO後の再上場へ、ベインと描く成長戦略
MBOで非公開化したスノーピークが2027年末の再上場を目指す。在庫半減・純利益900倍のV字回復を実現した経営改革と、創業家×PEファンドの新たな成長モデルを解説します。
源氏鶏太展が富山で開催中、室井滋館長が語る昭和文学の魅力
富山県の高志の国文学館で開催中の源氏鶏太展の見どころを解説。サラリーマン小説の開拓者の功績と、館長・室井滋が伝える富山の文学的魅力に迫ります。
アウトドア市場が映す景気動向 コロナ後も世界で根強い需要
コロンビア・スポーツウェアCEOのインタビューを踏まえ、アウトドア市場の現状と今後を分析。キャンプブーム終焉後の市場動向や、景気との関係性を解説します。
ホンダが米国でキャンプ用トレーラー発表、若者向け市場を開拓へ
ホンダが米国でSUVに連結できるトレーラー「ベースステーション」を発表。1500ポンド未満の軽量設計で、CR-Vでも牽引可能。ミレニアル・Z世代が牽引するキャンプ市場の成長トレンドと、ホンダの戦略を解説します。
最新ニュース
アクティビストの標的が変化、還元から再編へ
割安株の減少でPBR1倍超え企業も標的に。アクティビストの投資戦略が株主還元から事業再編へとシフトする背景と今後の展望を解説します。
アームが初の自社製チップ発表、AI半導体市場に本格参入
ソフトバンクグループ傘下の英アームが35年の歴史で初めて自社製チップ「AGI CPU」を発表。メタやOpenAIを顧客に迎え、5年で年間150億ドルの売上を目指す戦略転換の全容を解説します。
Armが半導体自前開発に参入、AI向けCPUで事業転換
ソフトバンク傘下の英Armが35年間のIPライセンスモデルを転換し、自社開発チップ「AGI CPU」でメタやオープンAIにAI半導体を直接供給する戦略の背景と影響を解説します。
イビデン大幅続伸の背景と半導体銘柄上昇の全貌
2026年3月25日、イビデンが特別利益491億円の計上発表で大幅続伸。半導体関連銘柄が軒並み上昇した背景には、米イラン停戦期待による原油下落と投資家心理の改善がありました。
イラン強硬派「3人組」の実権と米15項目和平案の行方
ハメネイ師亡き後のイランで実権を握る革命防衛隊出身の強硬派3人組と、トランプ政権が提示した15項目の和平案の内容・交渉の行方を詳しく解説します。