Google検索経由のサイト訪問が3割減、AI要約時代のWeb戦略

by nicoxz

はじめに

2025年11月、Webサイト運営者にとって衝撃的な調査結果が明らかになりました。調査会社ヴァリューズの分析によると、国内でGoogle検索を通じたWebサイトへの訪問数が過去2年間で33%減少したことがわかったのです。

この背景にあるのが、Googleの「AI Overview(AIによる概要)」機能です。検索結果ページにAIが生成した要約文が表示されるようになり、ユーザーは外部サイトを訪問しなくても欲しい情報を得られるようになりました。いわゆる「ゼロクリック検索」の急増です。

従来のSEO対策だけでは通用しなくなりつつある今、サイト運営者はどのような戦略を取るべきなのでしょうか。本記事では、最新の調査データをもとに現状を分析し、AI検索時代に必要な対策を解説します。

ヴァリューズ調査が示す日本市場の現状

訪問数33%減、クリック率は36%に低下

ヴァリューズは国内250万人を対象にPCやスマートフォンの利用動向を分析しました。その結果、Google検索を通じたWebサイトへの訪問数が過去2年間で33%減少していることが判明しています。

さらに注目すべきは、検索結果からリンク先を訪問した確率(クリック率)です。現在は36%と、以前と比べて8ポイント低下しました。これは検索した人の約3人に2人がリンクをクリックせずに検索を終えていることを意味します。

ゼロクリック率は63.5%に到達

ヴァリューズの推計によると、2025年9月におけるGoogle上の検索セッション数は約61.8億回でした。これに対し、サイトへの流入セッション数は22.6億回で、全体の36.5%にとどまっています。

つまり、検索しても外部サイトに訪問しない「ゼロクリック」の割合は63.5%に達しているのです。約3回に2回の検索が、サイト訪問を伴わずに完結している計算になります。

検索行動自体は減っていない

興味深いのは、検索行動そのものは減少していない点です。Google、Yahoo! JAPAN、Bingのいずれかの検索エンジンにアクセスしたユーザー数は横ばいを維持しています。減っているのは「検索後のサイト訪問」であり、「検索離れ」が起きているわけではありません。

問題は検索の「後工程」にあります。AI Overviewの導入により、検索結果ページで情報が完結するケースが増加しているのです。

AI Overviewがもたらす影響の実態

AI Overviewとは何か

AI Overview(旧称:SGE、Search Generative Experience)は、Googleが2024年5月から本格導入した機能です。ユーザーの検索クエリに対し、AIがWeb上の情報を要約して検索結果の最上部に表示します。

この機能により、ユーザーは複数のWebサイトを訪問しなくても、質問への回答を素早く得られるようになりました。ユーザー体験としては向上していますが、コンテンツを提供するWebサイト側にとっては深刻なトラフィック減少を招いています。

情報収集型クエリへの影響が顕著

SEO調査ツール「Ahrefs」が2025年5月に公開した分析によると、AI Overviewが表示される検索クエリのうち、97.9%が「Knowクエリ」(情報収集型)でした。

「〇〇とは?」「〇〇の方法は?」といった情報を調べる検索では、AIが要約を提供するためサイト訪問に至りにくい状況です。一方、「〇〇 おすすめ」「〇〇 比較」といった購買検討型のクエリでは、AI Overview表示頻度は相対的に低い傾向があります。

表示率はまだ拡大途上

Pew Research Centerの調査(2025年3月時点)によると、Google検索の結果ページにAI Overviewが表示される割合は約18%です。現時点では一部の検索にとどまっていますが、今後この割合が高まれば、サイトへのトラフィック減少はさらに加速する可能性があります。

同調査では、AI Overviewが表示されたページでユーザーがそのまま検索を終了する割合は26%であるのに対し、通常のページでは16%でした。AI要約が表示されると、外部サイトへ遷移しない傾向が10ポイント高くなるのです。

グローバルで進むトラフィック減少

海外メディアへの深刻な影響

AI Overviewの影響は日本だけではありません。オンラインメディア業界団体Digital Content Next(DCN)が2025年8月に発表したレポートによると、米国メディアにおける検索流入は2025年5〜6月の期間中、前年比で10%減少しました。

特に非ニュース系のエンターテインメント情報サイトでは14%減と、ニュースブランドの7%減を大きく上回る減少率を記録しています。

70%減少した個人サイトの事例

Bloombergの2025年4月の報道では、より深刻な事例が紹介されました。DIYホームプロジェクトサイト「Charleston Crafted」は、AI Overview導入後わずか1ヶ月でサイト訪問者の約70%を失ったとされています。アクセス減少に伴い、広告収入も1年間で65%減少し、数万ドル規模の損失となりました。

この事例は、特にハウツー系コンテンツを提供するサイトがAI要約の影響を受けやすいことを示しています。AIが手順や方法を直接回答できる領域では、元のサイトを訪問する必要性が低下するためです。

Gartnerは2026年までに25%減と予測

調査会社Gartnerは2024年2月に、衝撃的な予測を発表しました。生成AIチャットボットやバーチャルエージェントの台頭により、2026年までに従来の検索エンジンの利用量が25%減少するというものです。

GartnerのアナリストであるAlan Antin氏は「生成AIツールがユーザーの質問に答える回答エンジンとなり、従来の検索クエリを置き換え始めている」と指摘しています。企業はマーケティング戦略の再考を迫られるでしょう。

AI検索時代の新戦略「AEO」とは

SEOからAEOへのパラダイムシフト

従来のSEO(Search Engine Optimization)は、検索結果で上位表示を獲得してクリックを促すことが目的でした。しかしAI検索時代には、そもそも検索結果ページからサイトへ遷移しないユーザーが増えています。

そこで注目されているのがAEO(Answer Engine Optimization、回答エンジン最適化)です。AEOは、AIや音声アシスタントによる回答エンジンに自社コンテンツを採用・引用してもらうための最適化手法です。

AEOの基本的な考え方

AEOでは「クリックされないが、表示されること自体が価値になる」という逆説的な状況に対応します。自社コンテンツがAI Overviewの情報源として採用されれば、直接のサイト訪問がなくても以下のメリットが期待できます。

ブランド認知度の向上として、検索結果の最も目立つ位置で情報が紹介されます。また、GoogleのAIに「信頼できる情報源」として選ばれることは権威性の証明になります。さらに、AI要約を読んだ上でサイトを訪れるユーザーは、より深い情報を求める「質の高い」ユーザーである可能性が高いのです。

具体的なAEO対策

AEO対策として有効な手法をいくつか紹介します。

まず、質問形式のコンテンツ設計が重要です。「〇〇とは?」「なぜ〇〇なのか?」といった疑問文ベースでコンテンツを構成し、冒頭で明確な回答を提示します。AIは質問と回答の対応関係が明確なコンテンツを好む傾向があります。

次に、構造化データ(Schema.org)の実装も効果的です。FAQスキーマやHowToスキーマを設定することで、AIがコンテンツの構造を理解しやすくなります。

E-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性)の強化も欠かせません。AIは信頼できる情報源を優先的に参照します。著者情報の明記、一次情報の提供、専門家による監修などが有効です。

最後に、簡潔で正確な回答を心がけましょう。1〜2文で明確に答えを提示した後、必要に応じて詳細説明を加える構成が、AIに引用されやすい形式です。

生成AIからの流入という新たな可能性

ChatGPT経由のトラフィックは急増

興味深いことに、Google検索からの流入が減少する一方で、生成AI経由のサイト訪問は急増しています。

海外主要ニュースサイト上位14社の合計では、ChatGPTからの月間リファラ訪問数が2024年8月の約43万5千件から、2025年1月には約350万件と、6ヶ月で8倍以上に増加しました。

また、中小規模サイト391件を対象にした調査では、オーガニック検索に占めるAI由来の流入が2024年秋の0.5%から2025年初めには1.2%超へと、倍以上に拡大しています。

現時点での割合はまだ小さい

ただし、現時点でAI経由のトラフィックが占める割合は全体の1%前後と僅かです。ChatGPTからの流入350万件という数字も、大手ニュースサイトの総訪問数の約0.1%程度にすぎません。

とはいえ、BrightEdge社の分析ではChatGPTの検索市場シェアが2025年中にも1%を超える可能性が指摘されています。AI検索の利用が拡大すれば、この経路からの流入も重要性を増していくでしょう。

Googleの見解と今後の展望

Googleは「トラフィックは安定」と主張

これらの懸念に対し、Googleは異なる見解を示しています。Google検索の副社長であるLiz Reid氏は2025年8月、「全体的に、Google検索からWebサイトへのオーガニッククリック総量は前年同期比で比較的安定している」と述べました。

さらに「平均クリック品質は向上しており、1年前よりもわずかに多くの質の高いクリックをWebサイトに送っている」とも説明しています。局所的にトラフィックが減少しているサイトがあることは認めつつも、検索エコシステム全体では大きな変化はないという立場です。

視点の違いが生む議論

Googleは毎日数十億の検索クエリを処理しており、サードパーティの調査はその一部を分析したものにすぎません。大局的に見れば安定しているという主張にも一理あります。

しかし、個々のサイト運営者にとっては、自サイトへの流入が減少すれば死活問題です。特定のジャンル(ハウツー、定義説明など)では、AI Overviewの影響が顕著に表れていることは事実です。

メディア企業は新戦略を模索

大手メディア企業は、Google検索に依存しないビジネスモデルの構築を模索し始めています。米国の有力誌Atlanticのニコラス・トンプソンCEOは「Googleからのアクセスがゼロに近づくことを想定し、ビジネスモデルを進化させる必要がある」と述べています。

具体的な取り組みとして、ライブカンファレンスなどのイベント開催、アプリの改良、紙面発行部数の拡大など、読者との直接的な関係構築に力を入れる動きが広がっています。

まとめ

ヴァリューズの調査が示すように、日本国内でもGoogle検索経由のサイト訪問は確実に減少しています。AI Overviewによるゼロクリック検索の増加は、Webサイト運営者にとって無視できない変化です。

この環境下で取るべき対策は明確です。第一に、従来のSEOに加えてAEO(回答エンジン最適化)を意識したコンテンツ設計を行うこと。第二に、E-E-A-Tを強化し、AIに「信頼できる情報源」として認識されること。第三に、検索流入だけに依存しない集客チャネルの多様化を進めることです。

「検索順位=アクセス数」という従来の常識は崩れつつあります。AI検索時代の到来を見据え、今から戦略を見直すことが、今後のWeb集客成功の鍵となるでしょう。