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by nicoxz

iPS細胞で糖尿病治療に光、日米で治験開始へ

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はじめに

iPS細胞を使った糖尿病治療が、実用化に向けて大きく動き出しています。バイオ新興企業のオリヅルセラピューティクス(神奈川県藤沢市)は、iPS細胞由来の膵島細胞を糖尿病患者に移植する臨床試験(治験)を2027年度にも日本と米国で本格的に開始する方針です。

海外の類似研究では、幹細胞由来の膵島細胞移植により、血糖値を下げるインスリンの投与回数を大幅に減らせた事例が報告されています。世界で5億人以上が罹患する糖尿病の治療を根本から変える可能性があり、注目が集まっています。

京都大学での治験が示した手応え

世界初のiPS膵島細胞シート移植

オリヅルセラピューティクスは、京都大学医学部附属病院で実施された医師主導治験に、iPS細胞由来膵島細胞シート「OZTx-410」を提供しています。この治験は2025年1月に開始され、重症1型糖尿病患者を対象としています。

2025年2月には第一症例目の移植が行われました。OZTx-410を臨床に応用した世界初のケースです。手術は無事に終了し、術後の経過も良好で、患者は既に退院しています。術後1カ月までの安全性に大きな問題はないと判断されました。

治験の仕組みと目標

OZTx-410は、iPS細胞から分化させた膵島細胞をシート状に加工した製品です。従来の膵島移植では、脳死ドナーから膵島を採取して肝臓の門脈に注入する方法が主流でした。しかし、ドナー不足が深刻な課題となっています。

iPS細胞由来の膵島細胞シートは、理論上は無限に製造できるため、ドナー不足の問題を根本的に解決できます。シート状の細胞を皮下に移植することで、膵島構造を再現し、血糖値の正常化を目指します。

京都大学での治験は目標症例数3例の登録が完了しており、第二症例目以降の移植準備が進められています。最終的には2030年代の実用化を目標としています。

海外で進む幹細胞による糖尿病治療

米Vertex社の画期的な成果

幹細胞を使った糖尿病治療で最も先行しているのが、米国のVertex Pharmaceuticals(バーテックス・ファーマシューティカルズ)です。同社が開発する「ジミスレセル(VX-880)」は、幹細胞由来の膵島細胞を肝門脈に注入する治療法です。

Phase 1/2/3の臨床試験(FORWARD試験)では、12人の1型糖尿病患者全員で内因性インスリン分泌の回復が確認されました。注目すべきは、12人中10人(83%)が投与から12カ月後に外因性インスリンの使用が不要になったという結果です。全患者の平均でインスリン使用量が92%削減されました。

さらに、重症低血糖イベントの消失や、HbA1c 7%未満、血糖値の目標範囲内時間70%以上という良好な血糖コントロールも達成しています。

中国での自家iPS細胞移植

中国では2024年、25歳の1型糖尿病女性に対して、患者自身のiPS細胞から作製した膵島細胞の移植が世界で初めて行われました。移植から約2.5カ月後には十分なインスリンを自力で産生できるようになり、1年以上にわたり血糖値が安定した状態を維持しています。

この症例は、患者自身の細胞を使う「自家移植」であるため、免疫拒絶のリスクが低いという大きな利点があります。ただし、患者ごとにiPS細胞を作製する必要があるため、コストと製造時間が課題です。

注意点・展望

実用化に向けた3つの課題

iPS細胞による糖尿病治療の実用化には、いくつかの重要な課題が残されています。

第一に、免疫拒絶への対応です。他家(他人由来)のiPS細胞を使う場合、免疫抑制剤の長期投与が必要になります。Vertex社のVX-880でも慢性的な免疫抑制療法が求められており、感染症リスクとのバランスが課題です。オリヅルセラピューティクスのシート型製品は皮下移植であるため、問題発生時に除去しやすいという安全面での利点があります。

第二に、長期的な有効性と安全性の確認です。現時点での臨床データは比較的短期間のものであり、移植した細胞が何年にもわたって機能を維持するかは、まだ十分に検証されていません。

第三に、製造のスケーラビリティです。数百万人規模の患者に対応するためには、高品質な膵島細胞を大量に安定して製造する体制の構築が不可欠です。

糖尿病治療のパラダイムシフト

これらの課題はあるものの、幹細胞由来の膵島細胞移植は、糖尿病治療におけるパラダイムシフトをもたらす可能性を秘めています。現在の糖尿病治療は、インスリン注射や血糖降下薬による「症状管理」が中心です。iPS細胞由来の膵島細胞移植が実用化されれば、失われた膵島機能そのものを回復させる「根本治療」が実現することになります。

まとめ

オリヅルセラピューティクスによるiPS細胞由来膵島細胞の治験は、糖尿病治療の新時代を切り拓く取り組みです。京都大学での第一症例は良好な経過を示しており、2027年度には日米での本格的な治験開始が予定されています。

海外ではVertex社の臨床試験で83%の患者がインスリン不要になるという画期的な成果も報告されています。実用化までにはまだ課題がありますが、世界中の糖尿病患者にとって大きな希望となる研究です。今後の治験の進展に注目していきましょう。

参考資料:

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