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by nicoxz

イランがフーシ派に紅海攻撃準備を指示か、原油高騰リスクの背景

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はじめに

2026年3月30日、米ブルームバーグ通信は欧州当局者の話として、イランがイエメンの武装勢力フーシ派に対し、紅海航路の船舶への攻撃を準備するよう指示したと報じました。これは米国によるイラン攻撃がさらに激化した場合に備えた措置とされています。2月28日に始まった米国・イスラエルによるイラン攻撃から約1か月が経過するなか、紛争は新たな局面を迎えつつあります。紅海は世界の海上物流とエネルギー供給の要衝であり、ここでの攻撃再開は原油価格の急騰や国際物流の大混乱を引き起こす可能性があります。本記事では、この報道の背景と想定される影響について解説します。

米イラン紛争の経緯とフーシ派の参戦

2月28日の奇襲攻撃から紛争拡大へ

2026年2月28日、イスラエルと米国はイランの核施設および弾道ミサイル関連施設を標的とした大規模な軍事攻撃を開始しました。英国議会の調査報告によれば、この攻撃はイランの核開発計画を阻止することを主目的としていました。これに対しイランは、イスラエルおよびバーレーン、ヨルダン、クウェート、カタール、サウジアラビア、アラブ首長国連邦にある米軍基地に向け、数百発のドローンや弾道ミサイルを発射して報復しました。

イランはさらにペルシャ湾のホルムズ海峡を事実上封鎖する措置をとり、世界の原油輸送に深刻な影響を及ぼしています。ブルームバーグの報道によれば、ブレント原油価格は紛争開始以降約50%上昇し、1バレルあたり110ドル前後で推移しています。

フーシ派の参戦と紅海への波及

3月28日、イエメンのフーシ派は今回の紛争で初めてイスラエルに向けて弾道ミサイルを発射しました。CNBCやCNNなどの報道によれば、イスラエル南部のベエルシェバで空襲警報が発動されています。フーシ派はこれを「イランへの支援」と位置付けており、紛争の地理的範囲がさらに広がっています。

そして3月30日のブルームバーグ報道では、イランがフーシ派に対して紅海の船舶攻撃の準備を促していることが明らかになりました。NHKや共同通信など日本メディアもこの報道を伝えており、米国の対イラン攻撃がさらに激化した場合の「条件付き」の指示とされています。

紅海・バブエルマンデブ海峡の戦略的重要性と原油市場への影響

世界のエネルギー輸送を支える二つの海峡

紅海南端に位置するバブエルマンデブ海峡は、1日あたり推定480万バレルの原油が通過する世界有数の海上交通の要衝です。スエズ運河を経由して欧州とアジアを結ぶ最短ルートの入り口にあたり、この海峡が封鎖されれば、タンカーはアフリカ大陸南端の喜望峰を回る大幅な迂回を余儀なくされます。

すでにホルムズ海峡がイランによって事実上封鎖されている状況下で、サウジアラビアは東西パイプラインを活用し、紅海側のヤンブー港から原油を迂回輸出してきました。CNNの報道によれば、直近2週間でヤンブーから1日あたり460万バレルの原油が出荷されており、これは2025年の平均の3倍以上にのぼります。バブエルマンデブ海峡が攻撃対象となれば、この代替ルートも使えなくなるリスクがあります。

原油価格の高騰シナリオ

JPモルガンの分析によれば、フーシ派がヤンブー港を含むサウジアラビアの迂回輸出能力(約500万バレル/日)を脅かした場合、原油価格は1バレルあたりさらに20ドル上昇する可能性があります。ブルームバーグの報道では、紅海の暴力が再燃し中東産原油の供給が「完全に閉じ込められた」場合、ブレント原油は130〜150ドルに達するとのアナリスト予測もあります。バブエルマンデブ海峡が危険水域となれば、150ドル超えも「非常に可能性が高い」とされています。

3月28日のフーシ派参戦後、原油価格はさらに上昇し、ブレント原油は一時116ドル近くまで達しました。アクシオスの報道によれば、これは紛争拡大がエネルギー市場に直接的な影響を及ぼしていることを示しています。

日本と世界の物流への波及リスク

日本のエネルギー安全保障への脅威

日本は原油の中東依存度が約94%と極めて高く、その9割がホルムズ海峡を経由しています。ブルームバーグ日本語版の報道によれば、原油価格の急騰に伴いガソリン価格や物流コストが上昇し、日本でもインフレが加速する恐れがあります。

三井住友DSアセットマネジメントの分析では、ホルムズ海峡の通常通過量は日量約2,000万バレルに対し、代替手段がフル稼働しても通常時の20〜27%しかカバーできないとされています。紅海ルートまで遮断されれば、日本へのエネルギー供給はさらに逼迫することになります。

国際物流の混乱と長期化

ジェトロの報告によれば、2026年3月上旬時点で喜望峰ルートへの迂回が常態化しています。紅海ルートからの迂回により片道で約2週間、往復で4週間の航海日数が増加し、40フィートコンテナ1個あたりの運賃はフーシ派の攻撃が始まった2023年11月以前と比較して2.8倍に上昇していました。海上保険料も戦前比で最大4倍超に達しているとの報告もあります。紅海での攻撃が再開されれば、こうしたコスト負担はさらに膨らむことが予想されます。

注意点・展望

今回のイランによるフーシ派への指示は、米国の攻撃がさらに激化した場合の「条件付き」とされており、直ちに紅海での攻撃が始まるわけではありません。しかし、フーシ派はすでにイスラエルへの攻撃に踏み切っており、紛争のエスカレーションが続けば紅海攻撃の現実味は高まります。

フーシ派は2023年末から2025年にかけて紅海で大規模な船舶攻撃を実施した実績があり、イラン製の対艦弾道ミサイル(射程200km)や巡航ミサイル、無人攻撃機を保有しています。米海事局(MARAD)も商業船舶に対する注意喚起を発出しており、国際社会は緊張感をもって事態の推移を注視しています。

停戦交渉の行方や米国の軍事行動の今後次第では、紅海の安全が急速に悪化する可能性があり、エネルギー市場と国際物流への影響は長期化するおそれがあります。

まとめ

イランがフーシ派に紅海の船舶攻撃準備を指示したとの報道は、2月末から続く米イラン紛争がさらなる拡大局面に入る可能性を示しています。すでにホルムズ海峡が事実上封鎖され原油価格が急騰するなか、バブエルマンデブ海峡という第二の要衝まで脅かされれば、世界のエネルギー供給網は二重の危機に直面します。日本にとっても中東依存度の高さから影響は深刻であり、エネルギー安全保障の観点から今後の情勢変化を注意深く見守る必要があります。

参考資料:

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