26年度予算の年度内成立に暗雲、暫定予算で行政サービス継続を模索
はじめに
2026年度予算案の年度内成立が困難な情勢となっています。高市早苗首相は3月23日の自民党役員会で、暫定予算案の編成を検討する意向を表明しました。参議院で与党が過半数を持たない「少数与党」の構造的課題が、予算審議の行方に大きな影を落としています。
年度末の3月31日が迫るなか、暫定予算の編成は行政サービスの停滞を防ぐための「安全弁」として注目を集めています。本記事では、予算審議の現状と暫定予算の仕組み、そして国民生活への影響を解説します。
予算案審議の現状と暫定予算検討の背景
衆議院通過から参議院審議へ
2026年度予算案は、総額約122.3兆円で過去最大規模の予算です。衆議院では3月13日に与党の賛成多数で可決されました。しかし、衆議院での審議時間は約59時間と近年で最短となり、野党からは「スピード採決」との強い批判が上がりました。
東京新聞などの報道によると、2月の衆議院選挙の影響で審議入りが遅れたにもかかわらず、与党が「年度内成立」を最優先して採決を急いだことが、野党の反発を一層強める結果になりました。参議院では3月16日から審議が始まりましたが、野党側は十分な審議時間の確保を強く求めています。
参議院での与党少数が生むジレンマ
最大の焦点は、参議院で与党が過半数を持たないという構造的な問題です。衆議院では自民党と日本維新の会の連立で圧倒的多数を確保していますが、参議院では野党の協力なくして予算案を成立させることが困難な状況にあります。
時事通信の報道によると、3月19日時点で参議院予算委員会の審議時間は約26時間にとどまっています。野党が求める「60時間以上」の審議には大幅に不足しており、3月末までに積み上げられる見通しは約50時間程度と推計されています。
首相の方針転換と暫定予算検討
高市首相は当初、予算案の年度内成立にこだわる姿勢を示していました。2月時点では「年度内成立を諦めない」と明言しており、自民党幹部からも「困難」との声が出るなかでの発言でした。
しかし、参議院での審議状況を踏まえ、3月23日に方針を転換しました。鈴木俊一幹事長が自民党役員会後の記者会見で明らかにしたところによると、首相は「不測の事態に備え、暫定予算を編成する方向で検討したい」と述べました。これは、参議院で少数与党という現実を受け入れ、野党に対して柔軟な姿勢を示す狙いがあるとみられています。
暫定予算の仕組みと過去の事例
暫定予算とは何か
暫定予算とは、年度開始日(4月1日)までに本予算が成立しない場合に、行政の空白期間をつなぐために編成される一時的な予算です。通常10日間から2か月程度の短い期間を対象とし、必要最小限の支出に限られます。
暫定予算に計上されるのは、公務員の給与、年金や医療費の給付、生活保護をはじめとする社会保障、警察・消防・インフラ維持などの経常的経費です。一方で、新規事業の経費は原則として盛り込まれません。「行政の空白を防ぐ」ことが目的であり、政策的な判断を伴う支出は本予算の成立を待つ必要があるためです。
日本における過去の暫定予算編成
日本では暫定予算の編成は決して珍しいことではありません。参議院の調査資料によると、1972年度から1992年度の21年間は連続して予算の年度内成立ができませんでした。そのうち半数以上にあたる13年で暫定予算が実際に編成されています。
比較的最近では、1994年度、1996年度、1998年度にそれぞれ暫定予算が組まれました。また、1953年には本予算が成立しないまま衆議院が解散となり、4月1日から7月31日までの約4か月間にわたる暫定予算が編成された異例のケースもあります。
ただし、近年は予算の年度内成立が慣例化しており、暫定予算の編成は2000年代以降はまれになっていました。今回の検討は久しぶりの事態として注目されています。
国民生活への影響と野党の対応
行政サービスは継続される
暫定予算が編成された場合、日常的な行政サービスへの影響は限定的です。年金の支給、健康保険の適用、生活保護費の支払い、公立学校の運営など、国民生活に直結するサービスは継続されます。公務員の給与も支払われるため、行政機能が停止するわけではありません。
米国のような「政府閉鎖(ガバメント・シャットダウン)」とは異なり、日本の暫定予算制度は行政の継続を前提としている点が特徴です。
新規事業への影響
一方で、暫定予算では新規の政策や公共事業を実施することができません。2026年度予算案に盛り込まれた新規事業——たとえば防衛力の強化策や外国人政策の厳格化に向けた施策など——は、本予算の成立まで着手できないことになります。
経済への影響としては、新規の公共投資が遅延することで、景気刺激効果が先送りされる可能性があります。野村総合研究所の分析でも、暫定予算期間中は新しい政策を通じた景気浮揚が困難になると指摘されています。
野党の姿勢と今後の交渉
野党側は暫定予算の編成を積極的に求める立場をとっています。報道によると、政府が暫定予算に応じなければ審議拒否も辞さないとの構えを見せている野党もあります。十分な審議時間を確保したうえで予算案の内容を精査することが、参議院の役割であるとの主張です。
自民党内からは、3月24日が暫定予算の判断期限との見方が出ています。仮に暫定予算を編成する場合、閣議決定や国会提出の手続きに数日を要するため、残された時間は限られています。
注意点・展望
暫定予算の編成は行政の空白を防ぐための制度的な対応であり、政治的な「敗北」と単純に位置づけるべきではありません。むしろ、参議院での十分な審議を経て予算の質を高めるプロセスとも捉えられます。
今後の焦点は、暫定予算の期間と本予算成立の時期です。野党が求める審議時間を確保しつつ、4月中の本予算成立を目指す交渉が進むとみられます。与党が少数の参議院で野党との合意形成をどう進めるかは、高市政権の国会運営能力を測る試金石となります。
また、2025年の参議院選挙で与党が少数に転じた構造は容易に変わりません。今回の予算審議での対応は、今後の国会運営の先例となる可能性があり、与野党の力関係に長期的な影響を及ぼす点にも注目です。
まとめ
2026年度予算案の年度内成立が困難となり、政府は暫定予算の編成検討に踏み切りました。参議院で与党が少数という構造のもと、野党が十分な審議時間を求めていることが直接の要因です。
暫定予算が編成されても年金や医療など日常の行政サービスは維持されますが、新規事業は先送りとなります。今後は暫定予算の期間設定と本予算の成立時期が焦点となり、与野党の交渉の行方が注目されます。国会審議の充実と行政の空白回避をどう両立させるか、高市政権の手腕が問われる局面です。
参考資料:
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