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by nicoxz

暫定予算の編成判断が迫る国会攻防の全貌

by nicoxz
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はじめに

2026年度予算案の年度内成立期限である3月31日まで、残り10日を切りました。衆議院を通過した予算案は現在、参議院での審議に移っていますが、与党が参院で過半数を持たない「ねじれ」に近い状況が交渉を複雑にしています。立憲民主党は暫定予算の編成方針を早期に示すよう政府・与党に求めており、高市早苗首相は近く暫定予算を編成するかどうかの判断を迫られています。

本記事では、暫定予算の仕組みと過去の事例を踏まえながら、今回の国会攻防の構図と高校無償化法案をめぐる火種について解説します。

衆院通過から参院審議へ:異例のスピード審議が残した課題

史上最短の衆院審議

2026年度予算案は3月13日に衆議院本会議で可決され、参議院に送付されました。しかし、衆院予算委員会での審議時間はわずか59時間にとどまり、過去最短を記録しています。例年の予算審議では衆院で70〜80時間が確保されるのが通例であり、今回のスピード審議には野党から「憲政史上最も乱暴な予算審議」との強い批判が上がりました。

背景には、1月の通常国会冒頭での衆院解散と2月の衆院選があります。自民党は316議席を獲得する大勝を収めましたが、選挙により予算審議の日程が大幅にずれ込みました。高市首相は年度内成立にこだわり、衆院での審議を急いだ形です。

参院で立ちはだかる「過半数の壁」

参院では3月16日から予算案の実質審議が始まりました。しかし、自民党と連立を組む日本維新の会を合わせても参院での議席は120にとどまり、過半数の124議席に4議席足りません。与党は日本保守党や無所属議員への協力要請を進めていますが、多数派形成は容易ではありません。

自民党幹部からは「1日でも想定日程がずれた時点で年度内成立は無理だ」との声が漏れており、綱渡りの日程であることがうかがえます。

暫定予算とは何か:仕組みと過去の事例

暫定予算の基本的な仕組み

暫定予算とは、会計年度の開始(4月1日)までに本予算が成立しない場合、行政活動の空白を防ぐために編成される短期間の予算です。財政法第30条に基づき、政府は必要に応じて暫定予算を国会に提出できます。

暫定予算の特徴は、経常的経費や継続中の公共事業など、必要最小限の支出に限定されることです。新規事業や政策的な経費は原則として盛り込まれません。暫定予算は通常10日間から2か月程度の期間で組まれ、本予算が成立すると自動的に吸収されます。

過去に繰り返された暫定予算

日本では暫定予算の編成は珍しいことではありません。1972年から1992年までの21年間は年度内の本予算成立ができず、そのうち13回で暫定予算が編成されました。近年では、2012年度に東日本大震災の影響で14年ぶりに暫定予算が組まれたほか、2013年度と2015年度も前年末の衆院選による予算編成の遅れから暫定予算が編成されています。

今回も衆院解散・総選挙により予算編成が遅れたケースであり、過去の事例と状況が重なります。

高校無償化法案が「火種」になる理由

4月実施を目指す教育無償化

高市内閣は施政方針演説で「教育無償化について、今年4月からの実施を目指す」と明言しています。具体的には、高校授業料の無償化拡大や小学校給食費の無償化が柱となっています。これらの施策は国民の関心が高く、与野党ともに反対しにくいテーマです。

しかし、本予算が年度内に成立しなければ、4月からの実施に影響が出る可能性があります。木原誠二官房長官は「暫定予算で対応する」との方針を示していますが、暫定予算は原則として新規事業を盛り込めないため、教育無償化の関連経費をどこまで計上できるかが論点になります。

野党の交渉カードに

立憲民主党にとって、高校無償化法案は予算審議における重要な交渉カードです。暫定予算の編成方針が明確にならなければ、参院予算委員会の審議に応じられないと圧力をかけることで、審議日程の確保や政策面での譲歩を引き出す狙いがあります。

立憲民主党の斎藤嘉隆国対委員長が自民党の磯崎仁彦参院国対委員長に対し、暫定予算の方向性を明確にするよう求めたのは、こうした戦略の一環です。与党としては、野党の要求に一定の配慮を示しつつ、審議を前に進めなければなりません。

注意点・展望

「30日ルール」という安全弁

憲法第60条第2項には、予算案が参議院に送付されてから30日以内に議決されない場合、衆議院の議決が国会の議決となるという「30日ルール」があります。予算案が3月13日に参院に送付されたため、理論上は4月12日には自然成立します。

しかし、4月1日から12日までの約2週間は予算の空白期間となるため、暫定予算の編成は避けられません。問題は、その暫定予算にどこまでの政策経費を盛り込めるかという点です。

今後のシナリオ

最も楽観的なシナリオは、与野党が審議日程で合意し、3月31日までに本予算が成立するケースです。しかし現実的には、野党が求める60時間規模の審議時間を確保しつつ月内に採決まで持ち込むのは極めて難しい状況です。暫定予算の編成がほぼ確実視されるなか、高市首相がいつ編成を指示し、どの範囲の経費を盛り込むかが今後の焦点となります。

まとめ

2026年度予算をめぐる国会攻防は、衆院解散・総選挙による日程の遅れ、参院での与党過半数割れ、高校無償化法案の扱いという複数の要因が絡み合い、複雑な様相を呈しています。暫定予算の編成はほぼ不可避とみられますが、その内容と期間をめぐる与野党の駆け引きはこれから本格化します。

国民生活に直結する教育無償化や社会保障の予算が宙に浮かないよう、建設的な議論が進むことが求められます。今後数日間の高市首相の判断と与野党交渉の行方に注目です。

参考資料:

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