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by nicoxz

高市首相の衆院解散、問われる「大義」と予算審議への影響

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はじめに

2026年1月19日、高市早苗首相は23日召集の通常国会冒頭で衆議院を解散すると正式に表明しました。27日公示、2月8日投開票という日程は、解散から投開票まで戦後最短の16日間となります。

通常国会での冒頭解散は1966年の佐藤内閣以来60年ぶりという異例の判断に対し、野党からは「大義なき解散」「国民不在の党利党略」との批判が相次いでいます。また、2026年度予算案の審議が大幅に遅れ、11年ぶりの暫定予算編成が確実となったことで、国民生活への影響も懸念されています。

本記事では、高市首相が掲げる解散の「大義」と、それに対する批判の論点を整理し、暫定予算が国民生活に与える具体的な影響について解説します。

高市首相が掲げる解散の「大義」

連立の枠組み変更を問う

高市首相は解散表明の記者会見で、「連立の枠組みも変わった。国民の意思に正面から問い掛ける」と解散の理由を説明しました。2025年10月に公明党が連立を離脱し、代わって日本維新の会との連立政権が発足したことを受け、この新しい政権枠組みについて有権者の審判を仰ぐ必要があるという論理です。

首相側近も「国際情勢も不安定さを増し、連立政権の枠組みも変わった。国民に信を問うことは解散の大義になる」と説明しています。

自維連立の政策推進

自民党と維新の連立合意で掲げた政策を着実に進めるためには、選挙によって民意の後押しを得る必要があるというのが首相の主張です。高市首相は「高市早苗が首相で良いのか、国民に決めていただく」と強調し、与党で過半数確保を目標に「進退を懸ける」と明言しました。

経済運営への配慮

予算成立の遅れへの批判に対しては、2025年度補正予算に盛り込んだ物価高対策に言及し、「経済運営に空白をつくらない万全の態勢を整えた上での解散だ」と反論しています。

「大義なき解散」批判の論点

予算審議の軽視

最も強い批判は、国民生活に直結する予算審議を後回しにするという点です。通常国会では毎年、当初予算案や税制改正関連法案を優先して審議し、3月末までに成立させるのが慣例となっています。

冒頭解散により、2026年度予算案の国会提出は大きく遅れ、年度内成立は困難となりました。野党は「国民生活を政局の犠牲にしている」「経済後回し解散」と厳しく批判しています。

短すぎる衆院議員の在職期間

前回の衆院選は2024年10月に実施されており、今回の解散までわずか1年4カ月しか経過していません。衆院議員の任期4年の折り返し前という異例の短さです。

今回の解散が実行されると、現在の衆院議員の在職日数は454日となり、現行憲法下で3番目に短い記録となります。不信任決議がない中で首相自らの判断で踏み切った解散としては、今回が最短です。

「自己都合解散」との指摘

野党や一部メディアからは、解散の真の動機は高い内閣支持率を活かした議席増加にあるとの指摘が出ています。共産党は「何のために選挙をやるのか、何一つ大義を語れない」「まさに究極の”自己都合解散”」と批判しています。

立憲民主党の野田佳彦代表も「大義のない解散だ」と断じており、SNS上でも「大義なき解散」という批判が広がっています。

自民党内からも懸念

興味深いのは、与党内からも懸念の声が上がっていることです。自民党の重鎮は「独断で走るのだから、単独過半数は獲得できないと責任論が噴出する」と指摘しています。党内調整を経ずに首相が独断で解散を決めたことへの不満がくすぶっています。

暫定予算と国民生活への影響

11年ぶりの暫定予算編成

通常国会冒頭での解散により、2026年度当初予算案の年度内成立は困難となりました。政府は社会保障費や公務員の人件費など最低限の支出を賄う暫定予算を11年ぶりに編成することになります。

暫定予算とは、当初予算が成立するまでの「つなぎ」として編成されるもので、「行政の空白を防ぐ」ことが目的です。そのため、新しい政策や事業は盛り込まれず、以下の4点が主な内容となります。

  1. 経常的経費:人件費、事務費など政府機関の通常運営に必要な費用
  2. 継続事業費:既に進行中の公共事業や契約に関する支出
  3. 最低限の社会保障費:年金、医療、福祉など国民生活に不可欠な支出
  4. 国債費:国債の利払いなど債務履行に関する費用

新政策の実施遅延

暫定予算では新規の政策は実行できません。これにより、注目されていた「年収178万円の壁」対策は選挙により大幅に遅れることになります。また、高校授業料の無償化拡大なども4月の新年度開始に間に合わない可能性が出てきました。

物価高対策についても、衆院解散による政治的空白が生まれることで対応が遅れることが懸念されています。

過去の事例が示すリスク

1990年の海部俊樹内閣の事例は、今回の解散がもたらすリスクを示唆しています。当時は1月24日に衆院が解散され、政府は10兆円規模の暫定予算を編成しました。しかし、暫定期間中に当初予算成立に至らず、さらに「暫定補正予算」まで編成する異例の事態となり、当初予算成立は6月上旬までずれ込みました。

今回も同様の長期化リスクがあり、国民生活への影響が懸念されます。

株価・為替への影響

市場の反応

1月13日と14日、日経平均株価は連日で史上最高値を更新し、13日には史上初の53,000円台をつけました。「選挙は買い」というアノマリーが意識され、高市政権の高支持率が追い風となっています。

しかし、もし衆院選後に政局が不安定化すれば、この好調な相場に冷や水となる可能性も指摘されています。

暫定予算による不確実性

暫定予算の編成は、財政政策の先行きに不確実性をもたらします。予算成立の遅れは、景気対策や投資計画にも影響を与える可能性があり、市場参加者は選挙結果とその後の政局を注視しています。

今後の展望

選挙結果と政局

2月8日の投開票結果次第で、政局は大きく動く可能性があります。与党が大勝すれば高市首相の「賭け」は成功となり、政権基盤は強化されます。しかし、与党過半数割れとなれば、責任論が噴出し政権は窮地に立たされます。

予算成立の見通し

選挙後の新しい衆議院で予算審議が再開されますが、政局の混乱が長引けば、当初予算の成立は大幅に遅れる可能性があります。暫定予算から当初予算への移行がスムーズに進むかどうかが、国民生活の安定にとって重要なポイントとなります。

まとめ

高市首相の通常国会冒頭での衆院解散は、60年ぶりという異例の判断です。首相は「連立の枠組み変更を問う」ことを大義として掲げていますが、野党からは「自己都合解散」「経済後回し解散」との批判が相次いでいます。

11年ぶりの暫定予算編成が確実となり、「年収の壁」対策や物価高対策など、国民生活に直結する政策の実施が遅れることが懸念されます。有権者は、解散の是非も含めて、2月8日の投票で審判を下すことになります。

高い内閣支持率を背景にした首相の「賭け」が吉と出るか凶と出るか、日本政治の行方を占う重要な選挙となりそうです。

参考資料:

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