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by nicoxz

赤沢経産相が訪米、トランプ関税15%引き上げの回避を要請

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はじめに

2026年3月6日、訪米中の赤沢亮正経済産業大臣は、ラトニック米商務長官と米商務省で約2時間にわたる会談を行いました。会談の焦点は、トランプ政権が2月に発動した一律10%の新たな追加関税を15%に引き上げる方針から、日本を除外するよう求めることでした。

この会談は、米最高裁判所が相互関税を違憲と判断した直後にトランプ大統領が代替関税を導入するという異例の事態のなかで行われたものです。日米の通商関係がどのような方向に向かうのか、その背景と展望を解説します。

米最高裁の違憲判決と代替関税の経緯

相互関税の違憲判断

2026年2月20日、米最高裁判所は画期的な判決を下しました。国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づくトランプ大統領の相互関税について、6対3で違憲と判断したのです。憲法は関税を課す権限を議会に付与しており、大統領が一方的に関税率を設定・変更することは権限を越えていると判断されました。

この判決により、各国に異なる税率を課していた相互関税は撤廃されることとなりました。日本に対して課されていた15%の相互関税も対象となっています。

トランプ大統領の代替措置

判決に「失望」を表明したトランプ大統領は、即座に別の法的根拠を用いた代替関税を発動しました。1974年通商法第122条を根拠として、全世界に対する一律10%の関税を課す大統領令に署名し、2月24日に発効させました。

さらに翌21日、トランプ大統領はSNSで「この関税を直ちに15%に引き上げる」と表明しました。通商法122条で認められる最高税率が15%であり、これを最大限活用する構えを示したのです。ただし、この15%への引き上げは即座には実施されず、段階的な引き上げの可能性として検討が進められています。

150日間の時限措置

通商法122条に基づく関税には重要な制約があります。議会の承認がなければ150日間しか維持できないという時限措置である点です。つまり、7月下旬頃までに議会が延長を承認しなければ、この関税は自動的に失効します。この制約が今後の交渉にどう影響するかが注目されています。

赤沢・ラトニック会談の内容

15%引き上げからの除外要請

会談で赤沢経産相は、10%から15%への引き上げ対象に日本を含めないよう明確に要請しました。赤沢氏は「日本が15%引き上げの対象に含まれないよう求めた」と会談後に述べています。ただし、米国側からの明確な回答は得られていないとされます。

2025年合意の継続確認

両者は、2025年7月に締結された日米通商合意の内容を引き続き履行していくことを再確認しました。この合意では、日本からの輸入品に対する関税率を基本的に15%とする枠組みが設定されていました。新たな代替関税が10%であるため、現時点では2025年合意の15%よりも低い税率が適用されている状況です。

しかし、15%への引き上げが実施されれば、2025年合意と同水準となり、日本にとっての実質的な負担は変わらなくなります。問題は、合意で定められた例外措置やセーフガード条項がどう扱われるかという点にあります。

対米投資の進捗と新たな案件

赤沢経産相は、日本が表明している5500億ドル(約86兆円)の対米投資計画についても協議しました。2月に発表された第1弾の3つのプロジェクトについて事務的な調整が進んでいることを確認し、第2弾以降の案件についても議論が行われました。

また、エネルギー分野や重要鉱物に関する協力についても意見交換が行われ、高市早苗首相の3月19日訪米に向けた地ならしの意味合いもありました。

日本経済への影響と企業の対応

自動車・製造業への影響

日本の対米輸出の中核を占める自動車産業にとって、関税率の変動は経営に直結する問題です。10%と15%の差は年間数千億円規模の負担増につながるとされ、日本自動車工業会も状況を注視しています。

すでに多くの日本企業は米国内での生産拡大を進めていますが、完全な現地化には時間がかかります。部品のサプライチェーンも含めると、関税の影響は広範囲に及びます。

還付問題との関連

違憲判決を受けた相互関税の還付問題も並行して進んでいます。すでに徴収された約1660億ドル(約26兆円)の還付手続きは、システム改修に時間がかかるとして45日間の猶予が求められている状況です。日系企業も還付対象であり、リコーなどが具体的な影響を受けていると報じられています。

注意点・展望

高市首相訪米が焦点に

3月19日に予定されている高市首相のワシントン訪問が、日米通商関係の次の大きな節目となります。赤沢経産相の今回の訪米は、首脳会談に向けた事前調整の意味合いが強く、実質的な合意は首脳レベルに持ち越される可能性が高いです。

150日の期限がもたらす不確実性

代替関税の法的期限が7月下旬に迫るなか、トランプ政権は議会に延長を働きかけるか、あるいは新たな法的根拠を模索する必要があります。この不確実性は企業の投資判断や在庫戦略にも影響を与えており、早期の方針明確化が求められています。

今後の焦点は、15%引き上げが実施されるかどうか、その場合に日本が除外されるかどうか、そして高市首相訪米時にどのような合意が得られるかという3点に絞られます。

まとめ

赤沢経産相とラトニック商務長官の会談は、米最高裁の違憲判決後に揺れ動くトランプ関税政策のなかで、日本の立場を改めて主張する重要な機会でした。15%への引き上げ回避、2025年合意の継続、対米投資の推進という3つの柱で交渉が進められています。

米国側からの明確な回答はまだ得られていませんが、3月19日の高市首相訪米に向けて、水面下での調整が本格化していくことが見込まれます。日本企業にとっては、関税率の動向を注視しつつ、サプライチェーンの多角化やリスク管理を進めることが重要です。

参考資料:

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