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by nicoxz

日米が重要鉱物で行動計画、脱中国へ連携加速

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はじめに

日米両政府が、重要鉱物の安定調達に向けた行動計画の締結で合意する見通しです。2026年3月19日にワシントンで予定される高市早苗首相とトランプ大統領の首脳会談において、正式に取りまとめられる方向で調整が進んでいます。

背景にあるのは、中国による経済的威圧の激化です。2026年1月、中国は対日軍民両用品の輸出規制を発動し、レアアースの供給途絶リスクが一気に現実味を帯びました。半導体、自動車、防衛装備など幅広い産業に影響が及ぶ中、日米が連携してサプライチェーンの再構築に乗り出す意義は極めて大きいです。

この記事では、行動計画の具体的な内容や国際的な枠組みの動き、日本独自の資源確保戦略までを包括的に解説します。

日米重要鉱物協力の経緯と新たな行動計画

2025年10月の枠組み合意から加速

日米の重要鉱物協力は、2025年10月28日の首脳会談で大きく動き出しました。東京で行われた会談では、高市首相とトランプ大統領が「採掘及び加工を通じた重要鉱物及びレアアースの供給確保のための日米枠組み」に署名しています。

この枠組みでは、レアアースを含む重要鉱物の採掘から精製までの全工程において、日米が協力して供給網を強化する方針が明記されました。その後、2025年末には日米重要鉱物サプライチェーン強化協定が正式に署名・発効し、法的拘束力のある二国間合意が成立しています。

2026年2月の閣僚会合が転機に

2026年2月4日、米国務省のマルコ・ルビオ長官が主催する形で、史上初の「重要鉱物閣僚会合」がワシントンで開催されました。J.D.バンス副大統領やスコット・ベッセント財務長官も出席し、日本を含む54カ国と欧州委員会が参加する大規模な会合となりました。

バンス副大統領はこの場で「重要鉱物特恵貿易圏」の創設を提案しました。生産の各段階において最低価格を設定し、関税を活用して公正な市場価値を反映した市場環境を構築するという構想です。中国が安価な鉱物供給で市場を支配し、競合する鉱山を廃業に追い込む戦略への対抗措置として位置づけられています。

行動計画の核心は「価格フロア」と多国間枠組み

3月19日の首脳会談で合意が見込まれる行動計画は、2月の閣僚会合で打ち出された方向性をさらに具体化するものです。米国、EU、日本の三者で策定する行動計画には、以下の要素が含まれるとされています。

第一に、重要鉱物の国境調整価格フロア(最低価格制度)の導入です。中国のダンピングによる市場支配を防ぎ、西側諸国の鉱山開発を経済的に成り立たせることが狙いです。

第二に、有志国による多国間貿易イニシアチブの構築です。この枠組みは、将来的に法的拘束力のある多国間協定へと発展させる計画があります。

第三に、サプライチェーンの各段階における貿易政策の協調です。採掘、精製、加工、製品製造に至るまでの全段階で、中国依存を低減する仕組みを整備します。

中国のレアアース規制と日本経済への影響

2026年1月の対日輸出規制発動

2026年1月6日、中国商務部は軍民両用品目の対日輸出を即日禁止する措置を発表しました。中国側は日本の指導者による台湾関連の発言を理由に挙げていますが、実態としては米中対立の中で日本に圧力をかける経済的威圧の一環と見られています。

この規制にはレアアースが含まれており、日本産業界に大きな衝撃を与えました。野村総合研究所の試算によれば、レアアース輸入が3カ月間停止した場合の経済損失は約6,600億円、1年間では2.6兆円に達するとされています。

特に深刻な重希土類の中国依存

日本にとって最も深刻な問題は、重希土類と呼ばれるジスプロシウムやテルビウムの中国依存度がほぼ100%であることです。これらはEV用モーターのネオジム磁石に不可欠な素材であり、自動車産業の電動化戦略の根幹に関わります。

影響を受ける主要産業は、自動車(EV用モーター、各種センサー)、電子部品(スマートフォン、パソコン)、風力発電(永久磁石発電機)、医療機器(MRI装置)、航空宇宙(精密誘導装置)と多岐にわたります。中国が世界のレアアース生産量の約7割、精製量の約9割を占めている現状は、日本の産業基盤にとって構造的な脆弱性となっています。

日本独自の資源確保戦略

南鳥島沖レアアース泥の試掘成功

日米連携と並行して、日本独自の資源確保策も進展しています。2026年2月1日、海洋研究開発機構(JAMSTEC)の地球深部探査船「ちきゅう」が、南鳥島沖の排他的経済水域(EEZ)で水深約6,000メートルの深海からレアアース泥の試掘に成功しました。

南鳥島近海のレアアース埋蔵量は約1,600万トンと推定されており、中国、ブラジルに次ぐ世界第3位の規模です。ジスプロシウムは日本の国内需要の約400〜560年分、テルビウムは約320年分に相当するとされています。

商業化への道筋と課題

試掘の成功は画期的ですが、商業化には大きな課題が残ります。本土から約2,000km離れた海域で、水深6,000mの深海底から泥を採掘するコストは膨大です。

今後のスケジュールとしては、2027年2月に1日あたり350トン規模のレアアース泥揚泥能力を実証する本格的採鉱試験が計画されています。2028年度以降の産業化・商業化を目指しており、令和7年度補正予算では実証試験に向けた設備整備に164億円が計上されました。

ただし、専門家の間では「国産レアアースだけで中国依存を解消するのは困難」との見方もあります。採掘コストの高さに加え、精製技術においても中国が圧倒的な優位性を持っているためです。だからこそ、日米を軸とした国際連携による調達先の多角化が不可欠なのです。

注意点・今後の展望

G7サミットでの議論に注目

重要鉱物の安定調達は、2026年のG7サミットでも主要議題の一つとなる見通しです。日米二国間の行動計画が、より広い多国間枠組みへと発展していく契機になる可能性があります。

中国の対抗措置リスク

日米欧の連携強化に対し、中国がさらなる輸出規制の強化や報復措置に出る可能性は否定できません。特に、価格フロア制度が実際に導入された場合、中国はWTO(世界貿易機関)への提訴や新たな輸出制限で対抗することも考えられます。短期的には鉱物価格の変動や供給の不安定化が生じるリスクがあります。

実効性の確保が課題

行動計画の策定は重要な一歩ですが、実際に代替サプライチェーンを構築するには長い時間がかかります。鉱山開発には通常10〜15年を要し、精製施設の建設にも数年が必要です。計画を「絵に描いた餅」で終わらせないためには、具体的な投資とスケジュールの管理が求められます。

まとめ

3月19日の日米首脳会談で合意が見込まれる重要鉱物の行動計画は、中国のレアアース輸出規制という現実の脅威に対する具体的な回答です。2月の重要鉱物閣僚会合で提案された価格フロア制度や多国間貿易枠組みの構築を通じて、日米欧が一体となって脱中国依存を進める体制が整いつつあります。

日本にとっては、南鳥島沖のレアアース開発という独自カードも持ちつつ、国際連携で調達先を多角化するという「二正面戦略」が重要です。今回の行動計画がその出発点となるか、首脳会談の具体的な成果に注目が集まります。

参考資料:

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