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by nicoxz

日米がレアアース・リチウム共同開発へ、首脳合意

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はじめに

日米両政府が重要鉱物の確保に向けた大きな一歩を踏み出そうとしています。3月19日にワシントンで開催される高市早苗首相とトランプ米大統領の首脳会談で、レアアース(希土類)、リチウム、銅の共同開発について合意する見通しです。

この合意では、米国内で三菱マテリアルや三井物産が参加する4つの事業が推進される予定です。中国への調達依存を減らし、日米で重要鉱物のサプライチェーンを強化するという経済安全保障の核心に迫る取り組みとなります。

本記事では、日米の重要鉱物共同開発の具体的な内容と、その背景にある中国依存問題、今後の展望について解説します。

日米共同開発の具体的内容

4つの事業プロジェクト

今回の首脳合意では、米国内で進める4つの重要鉱物関連事業が柱となります。三菱マテリアルが参加するインディアナ州でのレアアース精製事業や、三井物産が関与するノースカロライナ州でのリチウム鉱山開発などが含まれています。

これらのプロジェクトは、採掘から精製・加工まで一貫した供給体制を米国内に構築することを目指しています。重要鉱物は防衛技術、半導体、再生可能エネルギー機器の製造に不可欠であり、安定供給の確保が日米共通の課題となっています。

南鳥島レアアース泥の共同開発

首脳会談ではさらに、南鳥島(東京都小笠原村)沖の深海に存在するレアアース泥の共同開発も確認される方向です。2026年2月、海洋研究開発機構(JAMSTEC)の地球深部探査船「ちきゅう」が水深5,600メートルからレアアース泥の回収に世界で初めて成功しました。

この成果を受け、高市首相は「米国にも参加してもらい、開発を加速させたい」と表明。海洋鉱物資源の開発協力に関する作業部会の設置について覚書を締結する方向で調整が進められています。

行動計画と制度的枠組み

今回の合意は、2025年10月の日米首脳会談で締結された「重要鉱物の供給確保のための日米枠組み」を具体化するものです。行動計画の策定や作業部会の設置を通じて、共同投資や政策調整の仕組みを制度化します。

2026年3月14日には、赤澤経済産業大臣と米国のバーガム内務長官らが東京で初の閣僚会合を開催し、重要鉱物の供給網を「中国一極依存」から多角化する方針を確認しています。

中国依存からの脱却が急務に

中国の輸出規制がもたらした衝撃

日米が重要鉱物の共同開発を急ぐ背景には、中国による輸出規制の脅威があります。2026年1月6日、中国商務部は軍民両用(デュアルユース)品目の対日輸出を即日禁止する措置を発表しました。この規制には多くのレアアース関連品目が含まれており、日本の製造業に深刻な影響を及ぼしています。

みずほリサーチ&テクノロジーズの試算によれば、レアアース輸入の3カ月間停止による経済損失は約6,600億円、1年間では2.6兆円に達するとされています。自動車の納期遅延や家電・電子機器の供給制約など、消費者への影響も顕在化しています。

サプライチェーンの構造的脆弱性

問題の本質は、採掘地点の多様化だけでは解決しない点にあります。現在、レアアースの精製・加工段階では中国を経由せざるを得ない構造が根強く残っています。世界のレアアース精製能力の約9割が中国に集中しており、代替国での精製施設整備が急務となっています。

今回の共同開発で米国内にレアアース精製拠点を構築することは、この構造的脆弱性を克服するための重要な一歩です。三菱マテリアルは金属事業の中期戦略としてレアアースやレアメタルのリサイクル事業にも注力しており、資源循環の観点からも供給網の強靭化が進められています。

国際的な資源確保の動き

日本はオーストラリアの鉱山会社ライナスとの連携も強化しています。2026年3月には年間5,000トンのネオジム・プラセオジム(磁石の主要原料)を日本向けに供給する新たな契約が成立しました。米国、オーストラリアなど複数の調達先を確保することで、特定国への依存リスクを分散する戦略が着実に進んでいます。

注意点・展望

日米の重要鉱物共同開発には大きな期待がかかる一方、実現に向けた課題も存在します。深海からのレアアース泥の商業的採掘は技術的に未確立の部分が多く、コスト面での実用性はまだ見通しが立っていません。南鳥島沖の開発は「2026年を元年に」との掛け声がありますが、実用化には相当の時間を要する可能性があります。

また、精製・加工技術の確立にも時間がかかります。中国が数十年かけて構築した精製インフラを短期間で代替することは容易ではなく、段階的な能力構築が求められます。

一方、ポジティブな見通しもあります。米国議会では「重要鉱物協定」に関する法案審議が進んでおり、日米間の鉱物取引に関する関税面での優遇措置が制度化される見込みです。コロンビア大学のエネルギー政策センターも、この日米パートナーシップを「サプライチェーン安全保障に向けた待望の一歩」と評価しています。

まとめ

日米首脳会談でのレアアース・リチウム・銅の共同開発合意は、中国依存からの脱却に向けた経済安全保障戦略の具体化です。三菱マテリアルや三井物産など日本企業が米国内の4つのプロジェクトに参加し、採掘から精製までの一貫した供給体制の構築を目指します。

南鳥島沖のレアアース泥の共同開発や、作業部会の設置による制度的な枠組みの整備など、日米の協力は単なる宣言にとどまらない実効性のある取り組みとなっています。中国の輸出規制による危機感が追い風となり、重要鉱物のサプライチェーン再構築が加速しています。日本の産業競争力と安全保障にとって、今後の動向から目が離せません。

参考資料:

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