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by nicoxz

三菱マテリアル急騰の背景にある日米レアアース戦略

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はじめに

2026年3月18日、三菱マテリアル(証券コード5711)の株価が前日比12.68%高の5,525円を付け、市場の注目を集めました。急騰の引き金となったのは、日米両政府がレアアース(希土類)やリチウム、銅の共同開発で合意するとの報道です。

3月19日にワシントンで開かれる高市早苗首相とトランプ米大統領との首脳会談で正式に合意が発表される見通しで、三菱マテリアルがこの共同開発事業に参加する方向で調整していることが明らかになりました。中国による対日輸出規制が強まるなか、日米が重要鉱物のサプライチェーン再構築に本腰を入れる動きとして、大きな意味を持つニュースです。

日米レアアース共同開発の全容

米国内での4つの事業プロジェクト

今回の合意では、米国内で日本企業が参加する4つの重要鉱物関連事業が推進される見通しです。三菱マテリアルと三井物産がそれぞれ異なるプロジェクトに参画します。

三菱マテリアルは、米中西部インディアナ州でのレアアース製錬事業に出資・参加する方向で調整を進めています。同社はインディアナ州での銅製錬計画にも携わる予定で、独自の銅製錬技術「三菱連続製銅法」を活かした事業展開が期待されます。一方、三井物産はノースカロライナ州でのリチウム鉱山開発への参加を検討していると伝えられています。

南鳥島沖のレアアース泥の共同開発

米国内の事業に加え、日本の排他的経済水域にある南鳥島沖のレアアース泥についても、日米共同開発が進められます。首脳会談では、海洋鉱物資源をめぐる開発協力の作業部会を創設する覚書が締結される方向です。

南鳥島沖では2026年初頭、地球深部探査船「ちきゅう」が水深約6,000メートルの深海底からレアアースを含む泥の引き揚げに成功しています。2027年1月には1日あたり約350トンの採鉱・揚泥試験が計画されており、商業化に向けた取り組みが着実に進んでいます。日本が持つ海底採掘・加工の技術的優位性を活かし、米国からの資金協力を得る枠組みが想定されています。

中国依存脱却という背景

2026年1月の対日輸出規制強化

今回の日米共同開発が急務とされる背景には、中国による対日輸出規制の強化があります。2026年1月6日、中国商務部は日本に対する軍民両用(デュアルユース)品目の輸出管理を強化する公告を発表し、即日施行しました。

この規制は「日本の軍事ユーザー、軍事用途、および日本の軍事力向上に寄与するその他の最終ユーザーに対し、すべての軍民両用製品の輸出を禁止する」という内容です。対象品目が明確に列挙されていない点が懸念材料で、レアアースが広範囲に含まれる可能性が指摘されています。

日本経済への潜在的リスク

日本はEV用モーターに不可欠なネオジム磁石の補助材料であるジスプロシウムやテルビウムなど、多くのレアアースをほぼ100%中国からの輸入に依存しています。みずほリサーチ&テクノロジーズの試算によると、レアアース輸出規制が3か月続いた場合の損失額は約6,600億円、1年間続けば約2.6兆円に達するとされています。

2010年の尖閣諸島問題をきっかけとした中国のレアアース輸出規制の経験もあり、調達先の多角化は日本にとって喫緊の課題です。今回の日米共同開発は、この構造的な脆弱性を解消するための具体的な一歩といえます。

三菱マテリアルが選ばれた理由

銅・非鉄金属の技術力

三菱マテリアルは非鉄金属大手として、銅精錬から銅加工品、電子材料、超硬工具まで幅広い事業を展開しています。特に独自開発の「三菱連続製銅法」は世界的に評価されている製錬技術であり、高度な操業ノウハウを保有しています。

レアアースリサイクル技術

同社はレアアース磁石の高効率回収・精製技術の開発にも取り組んでおり、資源循環分野での技術蓄積があります。廃棄物の再資源化やE-Scrap(電子機器スクラップ)からの有価金属回収においてもグローバルな集荷体制を構築しており、重要鉱物のサプライチェーン構築において重要な役割を担える企業です。

こうした技術的な裏付けが、日米の重要鉱物共同開発におけるパートナーとして選ばれた理由と考えられます。

注意点・今後の展望

投資家が注意すべき点

株価の急騰は報道ベースの期待先行である点には留意が必要です。具体的な出資額や事業規模、収益への寄与時期などはまだ明らかになっていません。首脳会談での正式合意の内容や、その後の事業化スケジュールによっては、期待と現実のギャップが生じる可能性もあります。

また、レアアースの製錬・精製は中国が長年にわたり技術と価格の両面で圧倒的な競争力を築いてきた分野です。米国内での製錬事業が商業的に成立するためには、政府からの補助金や長期的な需要の確保が不可欠です。

日米重要鉱物パートナーシップの今後

今回の合意は、2025年10月の日米首脳会談で締結された重要鉱物に関する枠組み合意の具体化です。日米欧では重要鉱物の貿易協定枠組みについても協議が進んでおり、最低価格の設定を含む中国の安値攻勢への対抗策が検討されています。

日本の精密加工技術と磁石製造のノウハウ、米国の資源基盤とスケールアップ力を組み合わせることで、レアアースのサプライチェーンを根本から再構築する構想が進んでいます。この動きは単なる資源確保にとどまらず、防衛・半導体・再生可能エネルギーといった戦略的産業の基盤強化に直結するものです。

まとめ

三菱マテリアルの株価急騰は、日米両政府によるレアアース・リチウム・銅の共同開発合意という大きな地政学的テーマを反映したものです。中国の対日輸出規制が強まるなか、重要鉱物の調達先多角化とサプライチェーンの再構築は、日本の経済安全保障にとって避けて通れない課題となっています。

三菱マテリアルは銅製錬やレアアースリサイクルの技術力を強みに、米国内のプロジェクトに参画する見通しです。3月19日の首脳会談での正式合意の内容と、その後の事業化の進捗が、同社の中長期的な成長性を占う重要なポイントとなります。

参考資料:

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