キオクシア株が売買代金で断トツ首位、AI需要が生む熱狂
はじめに
キオクシアホールディングス(285A)の売買代金が異例の水準に達しています。2026年は3月初旬までの累計で約24兆円を超え、わずか2カ月余りで2025年通年の実績を上回りました。東証プライム市場で売買代金トップの座を独走する同社の背景には、AI需要の爆発的な拡大があります。
2024年12月のIPO時の公開価格1,455円から、2026年2月には上場来高値24,420円を記録し、約15倍という驚異的な上昇を遂げたキオクシア。本記事では、この熱狂の理由と今後の展望を分析します。
AI需要が牽引するNAND市場の構造変化
データセンター向け需要の爆発
キオクシアの株価急騰の最大の要因は、生成AIの普及に伴うNAND型フラッシュメモリー需要の爆発的増加です。大規模言語モデル(LLM)の学習や推論には膨大なデータストレージが必要であり、AIサーバー向けのSSD(ソリッドステートドライブ)需要が急拡大しています。
EE Times Japanの報道によれば、キオクシアは「足元および2026年は需要が供給を超える状況が見込まれる」と予測しています。NAND型フラッシュメモリーの価格は2025年後半から上昇基調にあり、2026年初頭にかけてさらに急騰しました。この供給不足を背景とした価格上昇が、キオクシアの収益を大きく押し上げています。
2期連続の過去最高益へ
キオクシアは2025年度通期(2025年4月〜2026年3月)の業績見通しとして、売上高2兆1798億〜2兆2698億円を発表しました。営業利益は前年比67%増の7,545億円、純利益は4,597億〜5,197億円と、2期連続での過去最高益更新が見込まれています。
通期の業績予想がこれまで非開示だったため、2026年2月13日の決算発表でこの見通しが公表された際、株価は一時3,200円あまり急騰し上場来高値を更新しました。日経平均が約700円の大幅下落となる中での逆行高は、投資家の強い期待を象徴しています。
売買代金急増の背景
1日で1兆3000億円超の記録
2026年2月13日には、キオクシア1銘柄の売買代金が1兆3,442億円に達しました。これは2025年にソフトバンクグループが記録した1兆332億円を抜き、1銘柄の1日あたり売買代金として過去最高の記録です。
時価総額は12兆円を超え、NAND型フラッシュメモリー専業メーカーとしては世界的にも類を見ない評価を受けています。キオクシアは世界NAND市場で約14%のシェアを持ち、第3位の地位にありますが、株式市場での評価はシェア以上の期待を反映しています。
アナリストの株価引き上げが追い風
決算発表を受け、各証券会社のアナリストは相次いで目標株価を引き上げています。国内証券の一部は目標株価を従来の12,700円から16,200円に引き上げ、外資系証券の中には23,000円の目標を設定するところもあります。こうしたアナリストの強気見通しが、個人投資家の買い意欲をさらに刺激する好循環が生まれています。
売上高の51%がSSD向けであることから、AI需要の持続がそのまま業績の成長に直結する構造です。中東情勢の混乱で利益確定売りが出ても、収益拡大期待を背景にすかさず買いが入るという、値動きの強さを保っています。
注意点・展望
キオクシア株の熱狂には注意すべき点もあります。NAND型フラッシュメモリー市場は歴史的に価格の上下動が激しく、供給過剰に転じれば価格が急落するリスクがあります。また、競合のサムスン電子やSKハイニックスも増産計画を進めており、2026年後半以降は供給制約が緩和される可能性があります。
地政学的リスクも無視できません。中東情勢の緊迫化による原油価格上昇やサプライチェーンの混乱は、半導体産業全体に影響を及ぼす可能性があります。さらに、米中間の半導体規制強化が中国市場へのアクセスを制限するリスクも残ります。
一方で、AIの普及は始まったばかりであり、データセンター投資の拡大トレンドは中長期的に続くとの見方が優勢です。キオクシアが技術力と生産能力の両面で競争力を維持できるかが、今後の株価を左右する鍵となります。
まとめ
キオクシアの売買代金が東証プライムで断トツの首位に立った背景には、AI需要の爆発的拡大とNAND市場の構造変化があります。IPO価格から約15倍という急騰は、単なる投機ではなく、2期連続の過去最高益が裏付ける実態のある上昇です。ただし、メモリ市場特有の価格サイクルや地政学リスクには引き続き注意が必要です。投資家は短期的な値動きに一喜一憂せず、AI需要の持続性とNAND市場の供給動向を冷静に見極めることが重要です。
参考資料:
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