Research

Research

by nicoxz

キオクシア株価が最高値更新、AI需要でNAND市場に追い風

by nicoxz
URLをコピーしました

はじめに

2026年1月21日、半導体メモリー大手キオクシアホールディングスの株価が急騰し、上場来高値を更新しました。終値は1万6000円台に突入し、2024年12月の上場時と比較して企業価値は約7倍にまで高まっています。

この日、日経平均株価は5日続落し、半導体関連株全般が売り込まれる中、キオクシアは独歩高を演じました。背景には、提携先である米サンディスク株の急騰と、AIデータセンター向けNAND需要の拡大があります。本記事では、キオクシア株価上昇の要因から、NAND市場の構造変化まで詳しく解説します。

キオクシア株価急騰の詳細

上場来高値を更新

キオクシアの株価は2026年1月21日、前日比で1000円を超える上昇を記録し、未踏の1万6000円台に到達しました。これは2024年12月の上場時と比較して、約10倍の水準です。

1月16日にも続伸し、前日比1010円(7.41%)高の1万4640円と上場来高値を更新していました。その後も上昇を続け、21日にはさらに高値を更新しています。2025年の東証プライム市場で株価上昇率トップとなり、MSCIワールドの構成銘柄約1400銘柄の中でもトップのパフォーマンスを記録しました。

サンディスク急騰の波及

株価急騰の直接的なきっかけは、前日の米国株式市場でサンディスク(SanDisk)株が約10%の大幅高となったことです。サンディスクはキオクシアと工場を共同運営しており、両社の株価には高い連動性があります。

シティグループ証券がサンディスクの目標株価を280ドルから490ドルへと大幅に引き上げたことが、株価上昇の引き金となりました。Benchmarkも目標株価を260ドルから450ドルに引き上げており、複数の証券会社がNAND市場の見通しを上方修正しています。

サンディスクの株価は最近、過去最高値となる432.99ドルを記録しており、この好調がキオクシアにも波及した形です。

日本市場全体との乖離

注目すべきは、キオクシアの独歩高が日本市場全体の軟調さとは対照的だった点です。この日、日経平均株価は5日続落し、終値は前日比216円46銭(0.41%)安の5万2774円64銭でした。

グリーンランドを巡る米欧対立で前日の米株式相場が大幅下落し、日本株にも売りが出ていました。日経平均は一時800円近く下落する場面もありましたが、キオクシアは逆行高を演じました。SOX指数(フィラデルフィア半導体株指数)が約1.7%下落する中でのこの動きは、同社への期待の高さを示しています。

AI需要とNAND市場の構造変化

AIデータセンターがけん引

キオクシア株価上昇の根本的な要因は、AIデータセンター向けストレージ需要の急拡大にあります。生成AI(人工知能)の普及により、大量のデータを高速で処理・保存するニーズが爆発的に増加しています。

キオクシアホールディングス副社長執行役員の太田裕雄氏は「AIではGPU(画像処理半導体)やHBM(広帯域メモリー)だけでなく、ストレージにしっかり投資すべきだという認識がハイパースケーラーに浸透してきた」と語っています。

NVIDIAのジェンスン・ファンCEOも、AI向けデータストレージ市場が慢性的に供給不足に陥っていることに言及しており、これがキオクシアへの追い風となっています。

NAND価格上昇の見通し

市場ではNANDフラッシュの供給不足が中期的に続くとの見方が強まっています。2024〜2025年に各社が投資を抑制した結果、供給能力が不足しており、需要増に対応できていません。

NANDフラッシュの価格は2026年第1四半期に30〜35%上昇するとの予測も出ています。年間ベースでは前年比+15〜20%の価格上昇が見込まれており、これがキオクシアの2026年収益改善の最大要因になると期待されています。

データセンター向けは2026年に市場の40%超へ拡大する見込みです。Samsung、SK hynixといった競合がHBM(高帯域幅メモリ)投資へシフトしていることも、NAND市場におけるキオクシアの相対的な優位性を高めています。

キオクシアの戦略的優位性

キオクシアは他社とは異なるアプローチでAI市場を攻略しています。SSD完成品に注力する競合他社とは異なり、自社でSSDを開発するクラウドサービスプロバイダー(CSP)にエンタープライズグレードのNANDフラッシュダイを提供するという柔軟な戦略を採用しています。

この戦略が奏功し、キオクシアは主要サプライヤの中で最も高い成長率を記録。2025年第3四半期の売上高は30%以上急伸して9億7,800万ドルとなりました。NANDフラッシュメモリ全体ではMicronを抜いて世界3位に浮上しています。

次世代技術と設備投資

第10世代NANDの量産計画

キオクシアは2026年をめどに、第10世代と呼ぶ最先端のNAND型フラッシュメモリーを量産する計画です。岩手県北上市の工場で生産を開始する予定で、高速かつ低電力のストレージ需要に応えます。

第10世代NANDは、AWS(アマゾン・ウェブ・サービス)やMicrosoftなど、ハイパースケーラー(大手クラウド事業者)向けの事業拡大を狙った製品です。AIデータセンターでは、データ量の増大に対応するため、高速で低電力かつ故障に強いSSD(ソリッドステートドライブ)の需要が高まっています。

技術革新への投資

キオクシアは独自の「CBA(CMOS Directly Bonded to Array)」技術を開発しており、これが競争力の源泉となっています。この技術により、メモリセルアレイと周辺回路を別々に製造してから接合することで、より高密度で高性能なNANDを実現できます。

NAND専業という立場を「強みに転化」する戦略も明確です。DRAMやHBMを手がける競合と異なり、経営資源をNANDに集中できることで、この分野での技術的優位性を維持しています。

証券会社の評価

相次ぐ目標株価引き上げ

キオクシアに対する証券各社の評価は軒並み強気です。SMBC日興証券は投資判断を「2(中立)」から「1(買い)」へ引き上げ、目標株価を1万4800円から1万6400円へと大幅に上方修正しました。

2025年9月には外資系証券が目標株価を3900円に増額修正したことで株価が急騰しましたが、その後も上方修正が相次いでいます。AI需要の拡大とNAND価格上昇への期待が、高い評価につながっています。

時価総額の急拡大

AI分野での成長期待から、キオクシアの時価総額は足元で6兆円近くに達しています。東証プライム市場に上場した2024年12月時点と比べ、企業価値は約7倍に高まりました。

この半年だけでも株価は5倍以上になっており、東証プライム市場の中でも際立った存在感を示しています。

注意点・今後の展望

リスク要因

キオクシアへの投資にはいくつかのリスク要因も存在します。まず、NAND市場は歴史的に価格変動が激しく、供給過剰に転じれば価格が急落する可能性があります。

また、サンディスクとの連動性の高さは、逆に言えばサンディスク株が下落すればキオクシアも影響を受けることを意味します。米中対立の深刻化や半導体規制の強化も、サプライチェーンに影響を与えるリスクがあります。

競争環境の変化

SamsungやSK hynixがHBM投資へシフトしていることは、短期的にはキオクシアに有利ですが、長期的にはこれらの企業がNAND市場に戻ってくる可能性もあります。技術競争は激しく、継続的な設備投資と研究開発が求められます。

今後の注目ポイント

2026年の注目ポイントは、第10世代NANDの量産開始とハイパースケーラー向け事業の拡大です。AWS、Microsoft、Googleなどとの取引拡大が進めば、収益基盤はさらに強固になるでしょう。

また、NAND価格の動向も重要です。予測通り30〜35%の価格上昇が実現すれば、業績は大幅に改善する見込みです。

まとめ

キオクシアの株価は、提携先サンディスクの急騰とAIデータセンター向けNAND需要の拡大を背景に、上場来高値を更新しました。日経平均が5日続落する中での独歩高は、同社への市場の期待の高さを示しています。

AI市場の拡大に伴い、NANDフラッシュメモリへの需要は今後も増加が見込まれます。キオクシアはNAND専業という立場を強みに転化し、ハイパースケーラー向け事業の拡大を図っています。2026年は第10世代NANDの量産開始という重要な節目を迎え、同社の成長戦略の真価が問われる年となりそうです。

参考資料:

関連記事

最新ニュース