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by nicoxz

商船三井LNG船がホルムズ海峡通過 日本船で初の突破

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はじめに

2026年4月3日、商船三井はLNG運搬船「SOHAR(ソハール)LNG」がホルムズ海峡を通過したと発表しました。2月末の米国・イスラエルによるイラン攻撃以降、イランが事実上の封鎖態勢を敷いていた同海峡を日本関係船舶が通過したのは初めてとされています。

ペルシャ湾内には約1,000隻の商船が留め置かれており、日本関係船舶も45隻が滞留を余儀なくされていました。今回の通過は、日本の海運業界とエネルギー安全保障にとって大きな転機となる可能性があります。本記事では、通過の背景や経緯、イランが構築した通航管理体制、そして日本のエネルギー安保への影響を解説します。

商船三井LNG船「ソハール」の海峡通過

通過した船舶の概要

海峡を通過したのは、パナマ船籍のLNG運搬船「SOHAR LNG」です。商船三井とオマーン企業が共同で保有する船舶で、2001年に建造されました。船体のデザインはオマーンの国旗をモチーフにしており、タンクとハウスが白、船体が赤、吃水部分が緑色となっています。

商船三井は「船員と船舶の無事を確認している。今後も船員、船舶、貨物の安全確保を最優先に対応していく」とコメントしています。なお、通過時に貨物を積載していたかどうかについては明らかにされていません。

通過の経緯と条件

今回の通過にあたっての具体的な条件は公表されていません。日本政府関係者によると、船の行き先は日本ではなくオマーン方面であり、政府は交渉にも関与していないとの情報があります。

注目すべきは、同船がオマーン企業との共同保有であるという点です。オマーンはイランとの間で比較的良好な関係を維持しており、この共同保有の構造が通過を可能にした一因と考えられています。衛星データによれば、同船は通過後にオマーン沿岸に停泊しています。

ホルムズ海峡封鎖の現状とイランの通航管理

封鎖の経緯と影響

2月28日に米国・イスラエルによるイラン攻撃が開始されて以降、イスラム革命防衛隊は海峡の封鎖を通告しました。平時には1日平均約135隻が通過していた海峡の交通量は、一時1日5隻程度にまで激減しています。

ペルシャ湾内には約1,000隻の商船が滞留しており、日本関係船舶も45隻が含まれています。日本船主協会によれば、これらの船舶には日本人船員24人を含む約1,200人が乗船しています。食料や水、燃料の不足は報告されていないものの、長期化する滞留は船員の心身への負担が懸念されています。

イランの通航料徴収制度

イランは海峡封鎖を「敵国の船舶に対するもの」と位置づけ、その他の国の船舶については個別に通過を認める体制を構築しています。イランのアラグチ外相は「われわれは海峡を封鎖していない。イランを攻撃する敵の船舶に対して封鎖している」と主張しています。

通過を希望する船舶には、事前に秘密の通行コードの取得が求められ、決済は米ドルではなく人民元または暗号資産で行われます。超大型タンカーの場合、通航料は最大で200万ドル規模に達するとされています。イラン議会では通航料徴収を制度化する法案の審議も進んでおり、海峡を事実上の「料金所」とする動きが鮮明になっています。

各国は5段階に分類され、中国・ロシア・インド・イラク・パキスタンなど「友好国」の船舶には早期に通過が認められました。マレーシアやタイ、フィリピンなども交渉を通じて通航を実現しています。

日本のエネルギー安全保障への影響

LNG供給への直接的影響

日本のLNG輸入に占めるホルムズ海峡経由の割合は約6.3%とされており、原油の中東依存度(90%超)と比べると限定的です。カタールからのLNG輸入(シェア約5.3%)は現在停止中ですが、オーストラリアや米国からの代替調達が進んでいます。

一方で、世界的なLNG需給の逼迫は避けられません。アジアのスポットLNG価格(JKM)は、攻撃前の約11ドル/百万BTUから3月上旬には約25ドル/百万BTUへと急騰しました。この価格上昇は、日本の電力・ガス料金にも波及する可能性があります。

石油備蓄と中長期の課題

日本は約8カ月分の石油備蓄(国家備蓄・民間備蓄・産油国共同備蓄の合計)を保有しており、短期的な供給途絶には対応可能とされています。しかし、ホルムズ海峡を通じた原油輸入の中東依存度が90%を超える構造的な課題は、今回の危機で改めて浮き彫りになりました。

エネルギー政策の専門家からは、再生可能エネルギーの拡大や調達先の多様化、戦略備蓄の拡充など、中長期的なエネルギー安全保障の強化を求める声が上がっています。

注意点・展望

今回の通過が「前例」となるか

今回の通過は、オマーン企業との共同保有という特殊な条件下で実現したものであり、他の日本関係船舶にそのまま適用できるとは限りません。ただし、日本関係船舶がホルムズ海峡を通過した初の事例として、今後の交渉における「前例」となる可能性はあります。

オマーン側南側航路の動き

最近では、従来の北側ルート(イランのララク島とケシュム島の間)だけでなく、オマーン寄りの南側航路を通過する船舶も確認されています。北側ルートではイランからの承認や通航料の支払いが求められる一方、南側ルートの活用が広がれば、通過の選択肢が増える可能性があります。

40カ国が代替策を検討

日本を含む欧米など40カ国は、イランの通航料徴収に反対する立場を示しつつ、海峡での代替的な通航策の検討を進めています。国際的な連携による海上安全の確保が、今後の焦点となります。

まとめ

商船三井のLNG運搬船「SOHAR LNG」によるホルムズ海峡通過は、2月末のイラン攻撃開始以降、日本関係船舶として初めてとなる重要な出来事です。オマーン企業との共同保有という条件が通過を可能にしたとみられますが、ペルシャ湾内にはなお45隻の日本関係船舶が滞留しています。

イランが構築した通航料徴収制度の行方、国際社会の代替策の検討状況、そして日本のエネルギー調達先の多様化が、今後注目すべきポイントです。中東情勢の推移とともに、日本の海運・エネルギー政策の対応を引き続き注視する必要があります。

参考資料:

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